SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(179L)
RE:612
ミヤコ・テレビ編成局。
先程のプロデューサーが足早に入って来る。
つかつかと編成局長のデスクに行く。

デスク脇のパーソナル・ターミナルで、刻々と入ってくる番組視聴率情報をチェックしている局長。苦戦する視聴率に渋い顔の局長。

局長
「…いかん、いかんなあ…他局の視聴率はと…(ターミナルを操作する)…う〜む、やはり今日もトーキョーTVがトップか…平均視聴率が10%も違うとはどういう事だ…これじゃ、スポンサーも離れる一方だなあ…」

やって来るプロデューサー。

プロデューサー
「局長、ちょっとお話が…」

ターミナルから顔をあげる局長。プロデューサーを見る。

局長
「おお、君か…(再びターミナルの画面に目をやる)…これを見てみたまえ。我がミヤコ・テレビの視聴率は今やジリ貧、最近では教育放送よりも視聴率が低いと、世間じゃ評判だそうだ…」

プロデューサー
「その事なんですが、局長。今応接室に変な人物が来ているんですよ。自分の制作する番組を放送して欲しい、しかも自分でスポンサーもするっていうんですが…」

局長
「…バカ言ってんじゃないぞ、こっちはこれからどうしようかって言うんで頭が一杯なんだ。オマエのくだらない冗談に付き合ってるヒマはないんだぞ!」

全く取り合わない局長に、不満顔のプロデューサー。

プロデューサー
「冗談だと思うんなら、一緒に来てくださいよ!カネはあるみたいですから、冗談じゃないと思いますよ。」

局長
「…本当なのか?…まさか、秘密結社の意見放送みたいな、キワドイ思想番組じゃないだろうな?」

プロデューサー
「それが…コレなんですよ。」

企画書を見せる。

局長
「…無敵超人…子供番組だな?…トクサツか…」

企画書をめくる局長。

プロデューサー
「どうです?特に問題なさそうでしょ?それに、この番組の放送枠に通常の時間枠料金の3倍出すって言うんです。」

企画書から目をあげる局長。

局長
「…3倍だと?…金持ちの道楽なのか、世間にはもの好きな奴もいるもんだな。どうも胡散臭いが、内容は放送前にこちらでチェックすれば、何とかなるか…(しばし考える)…応接室で待ってるのか?」

立上り、部屋を出て行く局長。その後に続くプロデューサー。

タナカ鉄工所。
工場ではショウイチが、ジャッキーを操って大型クレーンの鉄骨を組み立てている。

事務所。
電話番をしながら、居間のテレビで午後のワイドショーを見ているユキコ。
その前には湯のみとせんべいが。

テレビ
「…それにしても、映像保存センターに現われた謎のロボットと、その恐怖から我々を救ってくれた、腕の付いた飛行機。一体彼等はどこから現われ、そしてどこへ消えたのでしょうか?彼等の正体は未だ謎に包まれています。…以上、現場からショージがお送りしました…」

ユキコ
「…それはもちろん、私達に決ってるじゃない。…バッカねえ…」

大きな音を立ててせんべいを食べるユキコ。
と、突然テレビの映像が消えてしまう。シューッという音と共にテレビから煙が出る。

ユキコ
「あらら?…遂に壊れたかオンボロテレビ。」

スイッチをあちこちいじるユキコ。しかしテレビは消えたままだ。
しばらくいじったり叩いたりした後、事務所から出て、大声でジャッキーに乗ったショウイチを呼ぶ。

ユキコ
「ねえ〜っ!あなたあ〜っ!!」

ジャッキーのエンジンを停めるショウイチ。運転席からユキコを見下ろす。

ショウイチ
「…え〜っ?どうしたんだ?」

ユキコ
「居間のテレビ、壊れちゃったみたいなの。映らなくなっちゃって。」

ショウイチ
「遂にあのテレビも壊れたか。…電気屋のシラハタさんトコにテレコしとけよ。修理してもらわなきゃ。」

ユキコ
「ええ、分かったわ。」

事務所に入るユキコ。
壁にかかった家庭用のテレ・コミュニケーション・システムで近所のシラハタ電気店を呼ぶ。

画面に現われるシラハタ電気店主。

シラハタ
「毎度ありがとうございます、シラハタ電気です…ああ、こりゃーどうも、タナカさんの奥さん。」

ユキコ
「いつもどうも。あの〜、家のテレビが壊れちゃったんで、ちょっと診て頂きたいんですけど?」

シラハタ
「ちょっとカメラで写してもらえます?」

ユキコ、コミュニケーション・システムのカメラ部分をはずして壊れたテレビを写す。

シラハタ
「奥さん、コレまだお使いだったんですか…いや〜この型のはもう30年以上も前に製造中止で、とってもじゃないけど修理できませんよ。…どうです、この際新しいのをお買いになったら?」

ユキコ
「そうねえ…テレビがないと電話番も退屈だし…思い切って買っちゃおうかしら?」

シラハタ
「こんなのはいかがです?半月程前に出たばっかりの最新モデルで、29型で奥行わずか10センチ!おまけにバーチャル・リアリティ機能搭載で、映像が立体的に見えるっていうスグレもの!!…今ならカツオさん一家のマスコット人形プレゼント中です。」

コミュニケーション・システムのディスプレイに新型テレビのカタログが表示される。それに心動かされるユキコ。

シラハタ
「お値段もお買得ですよ。本来ならこの位はするんですが、他ならぬタナカさんの奥さんですから…これでいかがです?」

ディスプレイ上の価格表示に赤で斜線が引かれ、手書きの数字が出る。

ユキコ
「あら、こんなにお安く?…もう、シラハタさんったらご商売がお上手なんだから!わかりました、お願いするわ。…早速届けて頂きたいんですけど?」

シラハタ
「ありがとうございます。…じゃあ早速お届けにあがります。」

ユキコ
「お願いします…」

テレコを切るユキコ。事務所にショウイチが入ってくる。

ショウイチ
「どうだった?直りそう?」

ユキコ
「古すぎて修理出来ないんですって。…新しいの買っちゃった。」

ショウイチ
「え〜っ!!…いくら?」

ユキコ
「…8万9千800円…」

ショウイチ
「う〜ん…」

ユキコ
「…だってお買得だったんだもん!最新型でバーチャンナントカって…もう凄いのよ!」

ショウイチ
「婆チャン?…バーチャル・リアリティ機能だろソレ?…そっか、バーチャル・リアリティ付きかあ…」

ユキコ
「ね?……お買得でしょ?」

ショウイチ
「う〜む……」

ミヤコ・テレビ応接室。
編成局長がプロデューサーと共に、ジャンク達と話をしている。

編成局長
「…お話は承りました。本来ならば、一度決定した編成を変更する事は余程の事がない限り難しいのですが、御存知の通り、我が局は今、視聴率的にもコマーシャル収入の上からも大変な苦境に立たされております。ぜひ我が局で貴方の制作なさった番組を放送させて頂きたいと思います。」

その言葉に満足気なジャンク。

編成局長
「…放送時間ですが、日曜日の午後7時からの時間枠を用意させて頂きます。現在はクイズ番組を放送していますが、これは別の時間帯に移します。で、番組の準備はいつごろ整われるのですか?」

ジャンク
「いつでも。制作は既に完了している。」

編成局長
「それはそれは。では?一度お見せ頂けますか?」

ジャンク
「分かった。編成局長、我々は良いパートナーになれそうですな…(握手を求める)…よろしく。」

編成局長
「…こちらこそ。」

握手するジャンクと編成局長。

〜 つづく 〜

~ 初出:1994.04.14 Nifty Serve 特撮フォーラム ~


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