SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー
RE:650
それから数日後の夕方…。
タナカ家の台所ではユキコが夕飯の支度に忙しい…

工場。
ショウイチがジャッキーのボディを磨いている…
ゲンザブロウは大型装甲車ランド・チャレンジャーの操縦席に乗り込み、センサー・システムの最終チェックに余念がない…

居間。
古色蒼然としたタナカ家の居間に、ひとつ場違いな様に最新型のテレビが置かれている…

ナレーション
「…旧型テレビの故障発生から数時間。夫婦間の交渉は、そのまま家庭内における双方の力関係を反映し、遂にタナカ家に待望の新型テレビが導入されたのであった…そしてテレビ購入から数日が過ぎた、ある日曜日の事である…」

リエとケンタが帰ってくる。
どうやらリエは、ケンタのサッカーの試合の応援に行っていた様である。
楽しそうに話しながら、事務所の扉を開けて入ってくる二人。

ケンタ
「ただいま〜っ!ああ、ハラへったあ!!」

台所のユキコ、振り向く。

ユキコ
「ああ、おかえり!もうすぐご飯だからね。…試合、どうだったの?」

リエ
「お母さんそれがね、ケンタったら、肝心なところでミスばっかり!あたし、姉として恥ずかしくなっちゃったわよ!!」

ケンタ
「あ、ヒデ〜!ミスしたの1回だけだろ!姉ちゃん何言ってんだよ!!最後はオレがシュートキメて勝ったんだぜ!!母ちゃん、コイツ(リエを指さし)の言う事、ぜ〜んぶウソだからなっ!!」

リエ
「何だと?このヘタッピイが!(ケンタをつかまえ、ゲンコツでケンタの頭をグリグリする)…ウリウリウリ!」

ケンタ
「あっ!何すんだよ…イテッ!イテ〜よ姉ちゃん!」

ふざける2人。あきれ顔でその様子を見ているユキコ。

ユキコ
「ホラ、二人して漫才やってんじゃないわよ!(ケンタを見て)…早く手を洗って着替えて来なさい、スグご飯だから。」

ケンタ
「は〜い。」

自分の部屋へ歩きかけたケンタ、ふと居間のテレビが目に入る。
鴨居の上の掛時計に目をやる。

午後6時59分。

ケンタ
「あ、『満点・ザ・ワールド!』が始まっちゃう!…テレビ、テレビっと」

いそいそとテレビのスイッチを入れ、ミヤコ・テレビにチャンネルを合わせる。

しかし、時報と共に始まったのは、ケンタの大好きなクイズ番組ではなく、見なれない特撮番組、『無敵超人ドクター・ジャンク』である。

ケンタ
「アレッ?なんだコレ?」

思わず画面に見入るケンタ。
その耳に一瞬、不思議な感覚が伝わる……と、その時、ユキコの声が!

ユキコ
「ホラッ!早く着替えてくるっ!!」

その声にハッと我に戻るケンタ。あわてて自分の部屋に向う。
その後ろ姿を呆れて見送るユキコ。

ユキコ
「…全くしょうがないんだから…」

テレビのスイッチを切ってしまうユキコ。

一方、ランド・チャレンジャーの操縦席では、ゲンザブロウがセンサー・システムのチェックを行っていた。開けられた窓から外の音が聴こえてくる。

どうやら近所の犬達の鳴き声の様だ…

ゲンザブロウ
「…よおし、大分調子が出てきた様じゃ。(窓の外の犬の鳴き声が気になる)…それにしても、一体どうしたんじゃ?さっきから近所の犬がヤケにうるさいぞ…犬か(考える)……ひょっとして超音波か?…どれ、超音波センサーのモニタリング・テストでもしてみるかの。」

システムを起動し、超音波センサーのスイッチを入れる。

ランド・チャレンジャーの外装。
操縦席屋根上のハッチが開き、アンテナ状のセンサーが出る。

操縦席内部。
ゲンザブロウがモニターに向っている。

モニター。
付近に幾つもの反応が出る。その内の何箇所かの点が赤く明滅する。

ゲンザブロウ
「ん?…この反応は何じゃ?…微弱だが、機械やある種の電気製品が発する超音波とは、まるで波形が異なるものの様じゃ。」

反応の一つを選ぶ。モニター上にウインドウが開き、その波形が出る。
異様に変動する波形。

ゲンザブロウ
「…何じゃ、この妙な波形は?」

モニターを注視するゲンザブロウ。と、また一つ新たな反応がモニターに出る。

ゲンザブロウ
「また一つ反応が……これは発信座標からすると我が家じゃぞ!」

その発信地点を拡大する。画面上に座標が表示される。

ゲンザブロウ
「…これは…居間じゃな?……(ハッとする)テレビかっ!!」

と、その時、インターホンが鳴り、ユキコの声が聴こえてくる。

ユキコ
「お父さん、ご飯が出来ましたよ。切りの良い処で食事にして下さい。」

ゲンザブロウ
「ユキコさん、今、テレビをつけたかの?」

ユキコ
「テレビ?…ええ、ケンタが観てますけど?」

ゲンザブロウ
「すぐにテレビを切るんじゃ、妙な超音波が出ておる!!」

台所。
インターホンの前のユキコ。ゲンザブロウの言葉に半信半疑の様子。

ユキコ
「テレビから?…(居間の方を見る)…ケンタ!!」

テレビの前のケンタ、様子がおかしい。呆然と画面を凝視している。

あわてて駆け込んでくるユキコ。テレビのスイッチを切る!
ケンタの肩を揺さぶる。

ユキコ
「ケンタ!ケンタ!!どうしたの、しっかりなさい!!」

なおもケンタの肩を揺さぶる。と、意識を取戻し我に帰るケンタ。

ケンタ
「…母ちゃん…どうしたの?…」

不思議そうな顔でユキコを見るケンタ。

ユキコ
「…あんた、何にも覚えてないの?…」

駆け込んでくるゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「ユキコさん、ケンタは!?…(呆然としているケンタを見る)大丈夫か、ケンタ?」

ユキコ
「ええ、幸いすぐ気が付いたんで…一体、なんでこんな事に?」

ゲンザブロウ
「…もしや…」

窓の外、どこか遠くを眺める様な目付きをするゲンザブロウ。

同じ頃…

夜の日比谷公園。
日曜日という事もあり、辺りのビル街も人影は疎らである。
公園の古風な門の前に、一台のバンが停まっている。
何やらアンテナが長く伸びている。

バンの内部。
内部には様々な電子機器が、狭い車内に窮屈なほど詰め込まれている。
コンソールパネルを凝視しているギャリソン・タバタとドクター・ジャンク。

ジャンク
「遂に始まったな…ワシからの素晴らしいプレゼント、喜んで貰えると良いのだがな…」

モニター映像。
関東の地図に無数の赤い反応が明滅している…

 〜 つづく 〜



~ 初出:1994.04.17 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018