SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(211L)
RE:175
海中。
薄暗い深海を、大きな影がゆっくりと進んで行く…
規則的にソナーを発している…
海中を悠然と進むドクター・ジャンクの大型潜水母艦、ブラウザスの姿。

メインブリッジ。
大型モニターに、デイダロスからの映像が映し出されている。
と、映像全体が一瞬閃光に包まれ、次の瞬間大きく乱れる。
画面全体がノイズに包まれる。

モニターを見上げていたギャリソン・タバタ、この様子に慌てて振り返る。

タバタ
「(慌てて)だ、旦那様、デイダロスがッ!!」

深々とした椅子に腰を降ろしたジャンク、しかし、一向に動じる様子もなく、至って冷静な様子。

ジャンク
「(つぶやく様に)…フッ、思ったとおりだ。ゲンザブロウのメカめ、追い詰められて遂にあのビームを使って来たか…(タバタを見て)…各部チェック!問題なければ一気に攻撃だ!!」

タバタ
「(とまどい)…エッ!?…で、ですが!」

ジャンク
「(いらつき)…何してる!早くチェックしろッ!!」

タバタ
「は、ハイ!」

訳も分からぬままコンソールパネルを操作し、デイダロスの機体をチェックするタバタ。

…と、ディスプレイの反応を見るタバタの顔に、驚きの表情が浮かんでくる。
モニターにデイダロスの機体チェック結果が次々とディスプレイされ始める。

『Daydalus airframe checking process: TERMINATED
  Depression: VERY SLIGHT』

の結果メッセージが点滅する。
ハッとした様にジャンクを見るタバタ。

タバタ
「…各部機能…正常でございます…旦那様…これは?…」

ジャンク
「(満足気な表情を浮かべ)言った筈だぞタバタ、このデイダロスは今迄のロボットとは違うとな…」

再び顔を上げ、モニターを見つめるジャンク。
その映像に口元を緩ませる…

ジャンク
「見ておれ…」

空。
空中に静止しているラピッド・スター。

その前方では、グラン・マキシマイザーの直撃を受けたデイダロスの機体が、まだ光に包まれている…

コクピット。
前部操縦席のケンタ。

キャノピーガラスにセンサーの情報をディスプレイし、デイダロスからの反応をモニタリングしている。

ディスプレイ。
エネルギーレベル分布グラフ。デイダロスの機体を中心に、まだ高エネルギーのフィールドが円形に形成されている…

ディスプレイを切り替えるケンタ。

ディスプレイ。
光のスキャニング映像。

と、光の中心に小さな影が浮び上がる。
電子音と共に

『Unknown object exists』

のアラームが点滅する。

ケンタ
「これは?…」

倍率を上げるケンタ。
スキャニング・グラフィックの中に浮び上がるデイダロスのシルエット!

ケンタ
「(ハッとして)…姉ちゃん!アイツ無事だゾッ!!」

リエ
「何ですって!?」

その瞬間、コクピットが衝撃に襲われる!
キャノピーガラスの外が一瞬、閃光に包まれ、白熱した粒子ビームが雨の様に降り注ぐ!

ラピッド・スターの主翼にビームが次々に命中、あちこちで装甲が吹き飛ぶ!!

ケンタ
「ウワーッ!!」

凄まじい振動の中、リエは瞬間的にスロットルレバーを押し、操縦捍を思いきり倒す。

リエ
「チッ!!」

一気に噴射するメインドライブ!
機体を翻し、降下するラピッド・スター!
主翼から薄い煙を引きながら全力で飛行する…

空。
太陽が輝いている。
と、その太陽をよぎって一つの影が飛ぶ…

空中を悠然と飛ぶデイダロス。
機体のあちこちから薄い煙の尾を引いてはいるが、機能は衰えていない様子。
不気味な余裕を漂わせながら、ラピッド・スターを追尾している…

胸部にグラン・マキシマイザーの直撃を受けた小さな焦げ跡があるが、それ以外は全く無傷に近い状態。

全力で飛行するラピッド・スター。
コクピット。

レーダーモニターでデイダロスの反応をチェックしているケンタ。
見る見る接近してくるデイダロスの反応…

ケンタ
「(リエを振り返り)…姉ちゃん…どうしよう?…アイツ、すぐ追い付くゾ!」

リエ
「そんなコト…」

と、再び機体に衝撃が走る!

リエ
「キャッ!!」

ケンタ
「(ディスプレイを見ながら)…サブドライブBに被弾ッ!」

リエ
「(コンソールパネルを操作し)…ドライブ緊急閉鎖!…(ケンタを見て)…スピードはッ!?」

ケンタ
「閉鎖で10%減速!」

リエ
「(悔し気に)…今は少しでもスピードが欲しいのに…」

次々にラピッド・スターを襲う粒子ビーム!

リエ
「(コミュニケーションシステムをのスイッチを入れ)…お爺ちゃん、お爺ちゃんッ!」

タナカ鉄工所。
コミュニケーションシステムのスイッチを入れるゲンザブロウ。
モニターに映るリエ。表情がこわばっている…

ゲンザブロウ
「どうした!?…(リエの様子に気付き)…リエ…」

リエ
「お爺ちゃん、アイツ強いわ…グラン・マキシマイザーの直撃も効果がないの…(悔しそうに)…やっぱり、これまでのロボットはアイツのデータを取るために…」

そのリエの言葉に一瞬目を伏せるゲンザブロウ…
再び顔を上げ、こわばった表情のリエを見る。

ゲンザブロウ
「…とにかく、一旦引きなさい!そのままでは勝ち目はない!」

リエ
「…でも、今のスピードじゃアイツを振り切れないわ!」

映像が切り替わり、後部カメラの捉えたデイダロスの超望遠映像。
ラピッド・スターに向って一斉攻撃を加えている…
冷徹な表情さえ見えるデイダロスの機体…

その機体が超望遠レンズで画面一杯に映し出される…
食い入るようにモニターを見つめていたトシヒコ、その映像にハッとする。

トシヒコ
「アレは?…」

が、次の瞬間、映像が再びコクピットのカメラに切り替わる。
追い詰められたリエを見るゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「しかし、このままでは…」

困惑するゲンザブロウ…

ゲンザブロウ(心の声)
「…確かに、あの状況では仕方がないとは言え…それにしても見事に…罠にかかったと言う訳か…」

ゲンザブロウ
「(モニターを見上げ)とにかく、今は全速で飛行を続けるんじゃ!すぐにアース・ムーバーを呼び戻す!」

リエ
「分かった、やってみる!」

モニター切れる。
回線を切り替え、アース・ムーバーを呼び出すゲンザブロウ…

ずっとモニターを見つめていたトシヒコ。
今度は頻りに何事か考え込んでいる…
と、何か思い浮かんだ様子。
アース・ムーバーと交信しているゲンザブロウに声をかける。

トシヒコ
「…アノ?…」

しかし、夢中になっているゲンザブロウ、トシヒコの声に気がつかない。

トシヒコ
「(ヤケになって)あのッ、お爺さん!」

その声にようやく振り返るゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「(怪訝そうに)どうしたんじゃ、ヤマグチ君?…小便かの?」

トシヒコ
「(ふくれて)ヤ、そうじゃなくって!もう一度、タナカ…いやリエさんを呼び出せます?」

ゲンザブロウ
「ん?それは出来るが?…じゃが、今リエ達はじゃな…」

トシヒコ
「(遮り)…どうしても、確かめたいコトがあるんですッ!お願いしますッ!!」

トシヒコの真剣な様子に、一瞬考えるゲンザブロウ。トシヒコを見つめる…

真剣な表情のトシヒコ…

…判断する。

ゲンザブロウ
「分かった…」


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.12.10 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018