SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(204L)
RE:177
タナカ鉄工所…

鉄工所事務所。
開けられた窓からかすかに風が吹き込み、窓のカーテンを揺らしている…

カーテンが揺れる度に、事務所の内部は反射する日差しが揺らめき、その明るさを小刻みに変化させる…

鴨居に掛けられた時計が、静かに時を刻んでいる…

片隅のコンソール。
メインモニターに映し出されるラピッド・スターからの映像の録画。
それを見つめるトシヒコ…

映像をじっと見つめる。

まるで、気付いた何かのかけらを、映像の中から見付だそうとするかの様な、その真剣な眼差し…

ゲンザブロウはそのトシヒコの様子に、何事かを感じ取った様子。

ゲンザブロウ
「(トシヒコを見る。つぶやく)…気付いたんじゃな?何か…」

真剣な表情でモニターの映像を見つめているトシヒコ…

空。
ラピッド・スターに対して、全砲門を一斉に開き、集中攻撃をかけるデイダロス!

全力で空をよぎるラピッド・スター!

そのラピッド・スターを追尾する様に、デイダロスの粒子ビームが光の尾を曳きながら次々に空を走る!ラピッド・スターの機体の直後で次々に炸裂する!

ラピッド・スターの飛行跡をなぞる様に、炸裂するビーム!!

ラピッド・スターコクピット。
轟音が轟くコクピット。

機体の至近距離で一瞬凄まじい閃光がきらめく!
思わず眼を閉じる前部操縦席のケンタ!

ケンタ
「ウワッ!!」

キャノピーガラスには幾つものアラーム・ディスプレイが点滅を繰り返している。

リエの操縦席。
右脇のサブコンソール。

アラーム・メッセージがあちこちで点滅し、機体のダメージ箇所がグラフィック表示されている…

メインモニター主飛行表示計(PFD)。
デジタルスピードメーターの速度表示。

円形のメーター表示の赤の部分を、小刻みに変動しながら動いている…
円形の中央に表示されているデジタル表示が、5,800km/hを示す…

メーターを見るリエ。
悔しげな表情を見せる…

リエ
「…こんなに超音速飛行を続けたら、エネルギーが…」

燃料表示を見る。既にエネルギー残量は35%を示している…
困惑した表情を浮かべるリエ…

リエ
「(つぶやく様に)…このままじゃ…」

航法表示計(ND)。
ラピッド・スターを着実に追い詰めるデイダロスの反応…
短い電子音をたて、その表示がまた接近する…

鉄工所事務所。
モニター映像を見つめているトシヒコ…

トシヒコ
「(映像を見つめながら)…あの傷…」

ゲンザブロウ
「傷?」

モニターを見るゲンザブロウ。
モニターにはグラン・マキシマイザーの直撃を受けた、デイダロス機体胸部の小さな焦げ跡が映し出されている。

映像を注視するゲンザブロウ…

ゲンザブロウ
「ウム。グラン・マキシマイザーの命中した部分じゃな…(トシヒコを見て)…しかし、あの傷が一体?」

トシヒコ
「…オレ、良く解らないんですけど…(ゲンザブロウを見て)…ロボットの機体って、表面になんか塗ってあるんですか?」

ゲンザブロウ
「ん?…(怪訝そうに)…それはまぁ、用途によって様々じゃが…あの機体ならば、考え様によっては空気との摩擦抵抗を減少させる物質が、表面に塗られておるかも知れんの…(トシヒコを見て)…じゃが、何故そんな事を?」

トシヒコ
「ロボットの傷のトコ、なんか表面の物質が剥がれてるみたいに見えるんです。」

ゲンザブロウ
「ん?何じゃと?…」

トシヒコの言葉にコンソールパネルを操作するゲンザブロウ。

録画映像のデジタルビデオ映像がリバースし、再びデイダロスの胸の傷が映し出される。
モニターに『STILL』のディスプレイが表示され、画像が静止する。

更にコンソールパネルを操作し、映像を拡大する。
その映像を見つめるゲンザブロウ…

確かに機体表面にはかなり厚く何かの物質が塗られており、それがグラン・マキシマイザーの直撃を受けた周囲で変質し、剥落している。

僅かに物質の下から金属製の外装が覗いている…
映像を見つめるゲンザブロウ…

と、何か思い付いた様子。

ゲンザブロウ
「…複合緩衝構造体…成る程、そうじゃったのか。」

トシヒコ
「え、何ですかソレ?」

ゲンザブロウ
「それぞれ性質の異なる衝撃吸収物質を、何種類も組み合わせて作られる緩衝材でな、物質の組み合わせによっては、物理的な衝撃の他に、超高熱や電磁波に対する耐性を持たせる事もできる。…恐らくアレは、グラン・マキシマイザーに耐える様に、特にチューニングされたものじゃろうて…」

と、説明していたゲンザブロウ、自分の言葉に何か思い当たった様子。
ハッとする。

顎に手を当てて視線を落し、しばし考える…

やがて再び顔をあげ、モニターに映し出されたデイダロスの傷を見つめる…

ゲンザブロウ
「…チューニング?…(表情が明るくなり)…成る程…」

一分の迷いもなく、コミュニケーションシステムのスイッチを入れる!

ゲンザブロウ
「リエ、リエッ!」

ラピッド・スターコクピット。
不意にコミュニケーションシステムが鳴り出す。
スイッチを入れるリエ。
モニターにゲンザブロウが映る。

リエ
「お爺ちゃんッ!」

ゲンザブロウ
「リエ!良いか、良く聞きなさい!奴の装甲は特殊な緩衝材で被われておる。まずそれを除去するんじゃ!」

リエ
「だけどどうやって!?グラン・マキシマイザーも効果がないのよッ!!」

ゲンザブロウ
「どうやら奴の緩衝材は、グラン・マキシマイザーへの耐性を最優先にチューニングされておる様じゃ。ならば…ならば、その他の衝撃に対する耐性はどうじゃな?…」

自信ありげな表情を浮かべるモニターのゲンザブロウ…
モニターを見つめるリエ…

と、リエの表情がパッと明るくなる。

リエ
「解ったッ!!そっか!そうだよネッ!…ありがとうお爺ちゃんッ!!」

ゲンザブロウ
「礼なら、ワシではなく、彼に言うコトじゃ…」

モニターの中で、トシヒコを振り返るゲンザブロウ。
ハッとするリエ。

リエ
「エッ!?…ヤマグチ、君が?…」

うなずくゲンザブロウ。

タナカ鉄工所。
モニターに映るリエ。
そのリエの姿を見つめるトシヒコ…

照れた様に微笑み、うなずく…

モニターの中のリエもうなずく…
微笑むリエ。

リエ
「ありがとう、ヤマグチ君!…」

その横ではゲンザブロウがアース・ムーバーを呼び出す。

ゲンザブロウ
「ショウイチ、あとどの位じゃッ!!」

海上。
東京湾上をフルスピードで飛行するアース・ムーバー!
大型タンカーの上を猛スピードで通過する!

操縦席。

ショウイチ
「(レーダー・コンソールを見ながら)あと約2分20秒で到着できます!」

モニターに映るゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「ヤツを倒すには是非ともアース・ムーバーの協力が必要じゃ!急ぐんじゃッ!!」

ショウイチ
「解りました!(ユキコを見て)…行くぞッ!フルスピードだッ!」

ユキコ
「(ショウイチを見て)まかせなさいって!!…(正面を見て)…行くわよッ!!」

マルチ・スロットルを一杯に押し込む!

メインドライブ。
サブドライブ全基に一斉に点火する!!

操縦席。
グイと座席に押し付けられる様な反動!
正面、窓の外を流れる海面の波が、また一段とその早さを増す。
海上を走る船が、矢の様な速さで後ろへ飛び去って行く…

正面を見つめるショウイチ…

ショウイチ
「待ってろリエ、ケンタ…」


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.12.24 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2009