SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(145L)
RE:788
トーキョー・タワー近くのグラウンド。
ラピッド・スターが着陸している。

入口からタナカ鉄工所のトラックがゆっくりと、グラウンドの中に入ってくる。
ラピッド・スターコクピット。ケンタがトラックを見つける。

ケンタ
「姉ちゃん、来たぞ!」

リエ
「うん。」

コクピットのモニター、ゲンザブロウが映る。

ゲンザブロウ
「よし、始めるぞ。…まず、方法を説明する。(モニターにトーキョー・タワーのグラフィックが出る)…余り時間がないから手短に説明するぞ。I.M.O.はタワーの先端にある集積アンテナ・システムのすぐ下、アンテナの基礎部分に取り付けるんじゃ。I.M.O.ユニットを設置する場所に近付けると、ユニットのセンサーが働いて、ロッキング・システムが作動する(モニター上にC.G.でその様子が表示される)。固定はユニット側で自動的に行ってくれる。こうやって、それぞれのユニットを4面に取り付ければ完了じゃ。」

リエ
「分かったわ、お爺ちゃん。」

ゲンザブロウ
「それから、タワーの先端部分は、かなり複雑な気流が渦巻いておる。操縦にはくれぐれも注意するんじゃぞ。」

リエ
「うん!」

グラウンド。
トラックを降りるショウイチとゲンザブロウ。
トラック荷台の幌を開き、I.M.O.を固定しているロープを外す。

垂直上昇するラピッド・スター。
マニピュレート・アームを出し、ゆっくりとトラックの上に降りてくる。
ユニットの一つを慎重に掴むと、タワーに向って上昇を開始する。

舞い上がる土ぼこりに顔をしかめる、ショウイチとゲンザブロウ。

ショウイチがゆっくりと上昇を始めたラピッド・スターをみつめ、つぶやく。

ショウイチ
「頑張るんだぞ…お前達……」

上昇するラピッド・スター。コクピット。

リエ
「ケンタ、大丈夫?力を入れ過ぎて握り潰さないでよ。」

真剣な表情のケンタ。マニピュレート・アームの操作に神経を集中する。

ケンタ
「…分かってるよ!…分かってるけど…力の入れ具合が…」

上昇するラピッド・スター。
タワーの先端に着く。気流に翻弄され、機体の安定が保てない。

ケンタ
「姉ちゃん、もっと機体を安定させてよ!これじゃ、ユニットを付けられないよ!!」

必死に操縦するリエ。そのケンタの言葉にイライラする。

リエ
「分かってるわよ!こっちだって一生懸命やってるんだからね!!」

必死に安定させようとするリエ。

ケンタがゆっくりと腕を伸ばす。
それに合わせてマニピュレート・アームが伸び、掴んだユニットをタワーに近付
ける。ユニットの爪が開き、タワーの鉄骨を掴む。

タワーに固定されるユニット。

ケンタ
「よおし、取り付けたぞ!!」

公園の時計塔。
時計の針が午後6時35分を示している。

時間は経過し、針はやがて午後6時55分を指す…

グラウンド。
トラックの荷台は既に空になっている。
不安気な表情で上空を見上げるショウイチとゲンザブロウ。

ショウイチ、腕時計を見る。

ショウイチ
「6時55分か…あと5分…(ゲンザブロウを見る)…お父さん、もう時間がありません。」

ゲンザブロウ
「信じるんじゃ、あの子達を……あと、たった1つじゃぞ。」

上空のラピッド・スターを見上げる2人。

最後のユニットを掴んで上昇して来るラピッド・スター。
ユニットを固定しようとする。

と、その時、突風で機体が煽られる!

大きく揺れる機体、タワーの鉄骨にユニットの脚が触れ、3本の脚の内、1本が弾け飛んでしまう!!

ケンタ
「姉ちゃん、脚がっ!!(半泣きの表情になる)…どうしよう…」

リエ
「もう時間が…(時計を見る。6時57分。)…ケンタ、そのままユニットをタワーに近付けて!!」

ケンタ
「でも…」

リエ
「いいから、あたしの言う通りにしてッ!!」

ユニットを近付けるケンタ。
ユニットの残った脚が開き、2本脚でタワーに取り付くユニット。
しかし、グラグラと不安定。

ケンタ
「やっぱりダメだよ、これじゃあ落っこっちゃうよ…」

泣きべそをかくケンタ。

リエ
「じゃあ…コレならどうッ!?」

機首のレーザーキャノンから出力を落したビームを発射!
弾け飛んだ脚の部分を、タワーの鉄骨に溶接してしまう!
しっかりと固定されるユニット。

半泣きだったケンタ、リエの機転に目を丸くする。

ケンタ
「エッ!?……凄いや…姉ちゃん…」

リエ
「(自慢気に)頭はこうやって使うのよ!…、どう?ちょっとはアネキの偉大さを見直したか?」

ニャンコを抱き上げ、にっこりと後部操縦席のリエを振り返るケンタ。

ケンタ
「うん!!」

タワーを離れるラピッド・スター。

グラウンド。
公園の時計塔が午後7時を指す。
グラウンドのショウイチとゲンザブロウ。

ショウイチ
「7時だ…」

タワー。
鉄骨に取り付けられたI.M.O.ユニット。
その球形の本体が電波を受け、一斉に花弁の様に4つに開く!
反作用波を発射するI.M.O.ユニット!!

モニターを見ているゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「成功じゃ!!ユニットは順調に反作用波を放出しておる!!」

日比谷公園、ジャンクのバンの中。
センサーシステムのコンソールを前にしたジャンク。
しかし、午後7時を過ぎてもスクリーンには1つの反応も現われない。

ジャンク
「…どうした?何故反応が現われん!!…もしや!!(タバタを見る)…タバタ、電波解析グラフを!!」

タバタ
「かしこまりました…」

コンソールを操作するタバタ。
ディスプレーにミヤコ・テレビの放送電波解析グラフが出る。
それを見つめるジャンク。

ジャンク
「…やりおったのゲンザブロウ!奴め、トーキョー・タワーに細工しおったな!!…タバタ、こうなれば最後の手段だ!合体ロボ、ドグーを出せっ!!タワーもろとも、ゲンザブロウのメカを叩き潰してやるっ!!」

タバタ
「かしこまりました…」

スイッチを入れるタバタ。

日比谷公園地下駐車場。
駐車場の片隅に停められていた、大型トラックの荷台がうごめく!!


〜 つづく 〜



~ 初出:1994.04.24 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018