SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(228L)
RE:184
ブラウザス メインブリッジ。
優雅な彫刻の施された木製の重厚な椅子。
深々としたその椅子に腰を降ろしたドクター・ジャンク…

目の前の大型モニターには、デイダロスのメインカメラが捉えた映像が映し出されている。
モニターにはアース・ムーバーから加えられる、ミサイル攻撃の爆煙と閃光が絶え間なく映ってはいるが、音声はカットされている。

冷静な表情でモニターの映像を見つめるジャンク…
その表情を、モニターの閃光が時折明るく照らし出している…

モニター映像。
音のない世界に飛び散る爆煙!

不思議な静寂に包まれているメインブリッジ…
微かにメインドライブの発する規則的な駆動音が、低く響いている…

ジャンクの背後に控え、一緒にこの様子を見つめていたタバタ、さすがに不安気な表情でジャンクの様子を伺う。

タバタ
「…あの、旦那様。」

ジャンク
「(モニターを見つめたまま)…心配する必要はない。この程度の邪魔は誤差の範囲内だ…」

タバタ
「しかし、でございますが…」

ジャンク
「(タバタの方を向き)…所詮、あの大型メカニックは輸送機に過ぎん。搭載している武器の威力など、たかが知れている。」

タバタ
「はぁ…」

ジャンク
「…良いか?デイダロスの攻撃は、あの小型飛行メカに確実にダメージを与えている。それに彼奴はジェットヘリの救助と、長時間の超音速飛行で既にエネルギーの大部分を消費している筈だ。」

再びモニターを見るジャンク。

急旋回するモニターの映像。
やがて、視点が定まる。アース・ムーバーの攻撃をすり抜けた様子。
スクリーンに青空が広がる…

映像を見つめるジャンク。

ジャンク
「…更に奴はあの強力なビームを、既に二度も発射している。(チラと脇に置かれた携帯端末のディスプレイを見る)…収集されたデータからシミュレートされるエネルギー残量からみて、奴のエネルギーに余力はないはずだ。」

その言葉にジャンクを見るタバタ。
ジャンクは相変わらずモニターを見つめている。
余裕の表情を浮かべるジャンク。

ジャンク
「(ニヤリとして)…もはや、奴に三度目はない。」

海上。
アース・ムーバーの一斉攻撃を遂にすり抜けるデイダロス。
最後の巨大な爆煙を突き破り、煙の尾を曳きながら大空へ飛び出す!

アース・ムーバー操縦席。
コンソールパネル。
ミサイルの残弾カウンターがゼロを示して電子音と共に点滅する。
それを見るショウイチ。
視線をレーダーコンソールに映し出されているラピッド・スターの反応に転ずる。

ショウイチ
「(つぶやく様に)…時間を稼げたか、果たして…」

モニターに映るラピッド・スターの反応…

空。
空中に静止しているラピッド・スター。
機体各部から全装備を露出させている…

コクピット。
前部操縦席のケンタ。
真剣な表情でコンソールパネルを操作し、全火器一斉射の準備をしている。

キャノピーガラス上に展開されたモニター一杯に、次々にコントロール・ウィンドーが開き、各装備のセットアップ情報が表示されている。

次々にパラメータがセットされ、発射準備に入る装備群。
セットされたウィンドーには、次々にセルフチェック・インフォメーションが流れ始める…

リエ
「(ケンタを見て)準備は?」

ケンタ
「(ディスプレイを見つめたまま)…もうちょっと。(コンソールパネルを操作して)…メイン・サイトに全装備をリンクして…っと…」

準備を続けるケンタ。

その様子に、リエは視線をコミュニケーションシステムのディスプレイに移す。
モニターに映っているゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「…良いか、奴が射程距離に入ったら、全通常装備で一斉射、奴の表面緩衝材を剥離させる。グラン・マキシマイザー用にチューニングされた緩衝材は、恐らく通常火器による衝撃には大して耐性がないじゃろう。その隙にお前達は、グラン・マキシマイザーで剥離した部分を一撃で打ち抜くんじゃ。」

リエ
「(うなずき)…ウン!」

ゲンザブロウ
「(心配そうに)…しかし、ラピッド・スターは既に2度もグラン・マキシマイザーを使っておる。…エネルギーの残量は?」

エネルギーゲージを見るリエ。
残量が既に20%を切っている…
小刻みに変動しているゲージ…

リエ
「(つぶやく様に)20%切ってる…もうギリギリだわ。(ゲンザブロウを見て)チャージに入ったら飛行関連以外の全回路をカットして、チャージを優先させます。うまくいけば、それでもう一度…」

ゲンザブロウ
「リエ…」

リエ
「(明るく)大丈夫、まかせといて!」

うなずくゲンザブロウ。
その隣、心配そうなトシヒコ。
トシヒコを見るリエ。

リエ
「(微笑み)…ありがとう。」

トシヒコ
「(驚いた様にリエを見る)エッ?…」

リエ
「ヤマグチ君が気付いてくれなかったら、今頃あたし達…」

トシヒコの表情に、一瞬パッと光が射す。微笑むトシヒコ。

トシヒコ
「(照れて)…そう言えばさ…あの時もらった林檎…」

リエ
「(とまどい)…林檎?…(思い付き)…ああ、あの時の…」

うなずくトシヒコ。

トシヒコ
「…あの時の林檎さ……うまかったゼ…とっても。(微笑む)…また一緒に食おうな。…な?」

リエもモニターのトシヒコを見て微笑む…

リエ
「(うなずき)ウン。」

コミュニケーションシステムを切る。

前部操縦席。
準備を続けているケンタ。
キャノピーガラスに投影されたセルフチェック・ウィンドー…

と、一つのセルフチェック・ウィンドーがオレンジに点滅する。
慌ててウィンドーを全面表示するケンタ。

グラン・マキシマイザーのセルフチェック・ウィンドー。
エネルギーコンデンス・システムの異常を示すアラームが表示されている。

ケンタ
「(慌ててリエを振り返り)大変だ!」

リエ
「なにッ!?」

ケンタ
「グラン・マキシマイザーが…」

リエ
「何よ、どうしたのよッ!」

ケンタ
「(不安気に)…コンデンス・システムにエラーが…」

リエ
「エラー?…詳しく言って!」

ケンタ
「ちょ…ちょっと待って…」

再びディスプレイを見る。
ディスプレイに点滅するエラーコード…
コードを見つめるケンタ。

ケンタ
「…このコード…(気付いて)…メイン・フロー制御回路のエラーだゾ、コレ!」

ハッとするリエ。

リエ
「(慌てて)じゃぁ、フルチャージ状態のままでいられないってコト!?」

ケンタ
「(困って)…まずいなぁ、チャージアップと同時に発射しないと、オーバーフローで爆発するかもしれない…(困ってリエを見る)…どうしよう…」

その言葉に、考え込むリエ…
しばし、視線を落し考えている…

決断した様子、顔を上げる。

リエ
「…仕方ない…一斉射と同時にチャージを始めるわ。ケンタはチャージアップしたら、タイミングはいいから、その瞬間に発射を…」

ケンタ
「(遮る様に)…待ってよ!一斉射するってコトは、アイツだって射程距離内にいるってコトだろ!…(不安気に)…もしチャージしてる途中に攻撃されたら!」

リエ
「…でも、他に方法があって?」

リエの言葉にうつむくケンタ…

と、コクピット内にアラームが鳴る。
レーダーコンソールを見るリエ。
デイダロスの座標が射程距離に接近する…

リエ
「(つぶやく様に)…来る…(顔をあげ、ケンタを見る)ケンタ、照準セット!来るわよッ!」

うつむいているケンタ…

リエ
「ケンタ!」

うつむいていたケンタ、その表情に決意の色が浮かぶ。
前を向く。

ケンタ
「(つぶやく)…そうさ…他に方法なんてない。…やるしか…ないんだ…」

照準システムのレバーをしっかりと握り締める。

ケンタ
「…分かった!!」

ケンタの前、キャノピーガラスにターゲットスコープが浮び上がる。

正面に広がる青空。その遥か彼方で、何かが一瞬きらめきを発する…
そのきらめきに、ケンタの表情が厳しさを増す。

照準システムのレバーを握り締めるケンタの手…

同時にキャノピーガラスの片隅に、グラン・マキシマイザーのチャージタイム・カウンターが表示される…

『45:00:00』


〜 つづく 〜

~ 初出:1996.01.14 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009