SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(239L)
RE:192
空。
デイダロス目がけて急降下するラピッド・スター!

機体冷却システムが破壊された為に、極超音速の空気摩擦がその機体を焼く!!
翼端が赤熱し、煙を噴き上げる!!

陽電子砲の攻撃に破壊された機体表面から、装甲が剥離し、バラバラと飛び散る!
破片が周囲に飛び散る度に、空中で燃え上がり、一瞬炎がきらめいている…

コクピット。
絶え間無い振動!
メインドライブの発する悲鳴の様な轟音が、コクピットを包む!

キャノピーガラス。
チャージタイム・カウンターが今だ減算を続けている!
目まぐるしく表示を変化させるカウンター。

そのカウンター越し、デイダロスの陽電子砲がラピッド・スター目がけ、巨大な光芒となって押し寄せる!!

しかし、チャージの為に殆どの回路を閉塞しているラピッド・スター、
警報システムは沈黙している…

ターゲットスコープを見つめ、照準システムのレバーを握り締めたケンタ、その表情が厳しさを増す!

ケンタ
「姉ちゃんッ!!」

後部操縦席のリエ、その声に瞬間、操縦捍を左に倒す!

リエ
「やられるッ、もんですかッ!!」

思いきり機体を翻すラピッド・スター!
その機体から瞬間、白煙が噴き上がる!!
周囲に飛び散る破片が次々に小さな炎を噴き上げ、星の様に瞬く…

次の瞬間、そのラピッド・スターを霞める様に、陽電子の奔流が空を貫く!!
続けて襲う衝撃波!!

リエ/ケンタ
「ウワーッツ!!」

コクピットを襲う激しい振動!!
メインドライブが悲鳴の様な咆哮をあげる!!
大きくコースが外れ、急降下を始めるラピッド・スター!

急激な加速が、重圧となってリエ達の身体にのしかかる!
必死に操縦捍を引き、体勢を立て直そうとするリエ!

ケンタは加速度の重圧を必死にこらえながら、尚もターゲットスコープに集中している。
一心に前方を見つめるケンタ。

しっかりと照準レバーを握り締めたケンタの手…

ケンタ
「(苦しげに)…あと、20秒!…コースに戻って、早くッ!!…」

苦しげなリエ。渾身の力を込めて操縦捍を引き寄せる!
ガタガタと大きく震え出す機体!

リエ
「(苦しげに)…ウウッ…失速する…クッ!!」

手元のスイッチを素早く操作し、足元のペダルを思いきり踏み込むリエ!
噴き上がるヴァーティカル・ジェット!

ラピッド・スターの機体が大きく機首を上げ、急角度で上昇する!
正面にデイダロスの姿を捉える!

再びその陽電子砲がラピッド・スターの機体に照準を合わせている。
砲身が輝き始めている…

リエ
「時間はッ!?」

ケンタ
「あと…15秒!」

リエ
「(決意して)もう避けないわよ、ケンタ!」

ケンタ
「(必死の表情)ウン!!」

再びチャージタイム・カウンターを見る。

ケンタ
「…12!11!…」

ターゲットスコープ。
真正面に捉えるデイダロスの機体。

その中心、輝き出した陽電子砲の砲身にターゲットマークがロックされる!
厳しさを増すケンタの表情!

と、その瞬間、右主翼の先端部分が高温に耐え切れなくなり、大きく破壊する!
飛び散る破片!!
大きく体勢を崩すラピッド・スター!

ケンタ
「ウワーッ!!」

リエ
「(必死に)コイツッ!!」

再び片側のペダルを思いきり踏み込む!
崩れた体勢を噴射するヴァーティカルジェットが支える!
機体を立て直すラピッド・スター!

食らいつく様に身体を起こし、ターゲットスコープに集中するケンタ!

ターゲットスコープ。
真正面にデイダロスを捉える!
と、その瞬間、デイダロスの陽電子砲が一瞬強烈な閃光を発する!!

リエ
「ケンタ!!」

ケンタ
「負けるかッツ!!」

秒のカウンターがゼロを示すや否や、発射ボタンを押し込むケンタ!

しかし、発射しない!!

ハッとするケンタ、チャージタイム・カウンターを見る。
まだ減算を続けているカウンター!

一瞬、時が止まる!

ラピッド・スター目がけ、一直線に空を突き進む陽電子の閃光!

100分の1秒がカウントを刻み続けるカウンター!

まだ0になっていない!!

ケンタ(心の声)
「(必死に)早く、早く、早くッ!!!」

迫る閃光!
減算するカウンター!
発射ボタンを押し続けるケンタの指!
必死の表情!
迫る閃光…

その瞬間、カウンターの数字が総てゼロを示す!
周囲の総てが沈黙する…

ラピッド・スターのグラン・マキシマイザーが凄まじい閃光を噴き上げる!!
噴き上がる光の奔流!!

一直線にやって来た陽電子の閃光を、迎え撃つ光が粉々に打ち砕く!!
大気が瞬間、大きく湾曲する!!

陽電子のきらめきが周囲の大空に一瞬、七色の輝きを発しながら飛び散る!!
轟く轟音!!

飛び散る光の飛沫!!
ラピッド・スターの機体に降り注ぐ陽電子の雨!
機体に次々に穴が開く!

大きく揺さぶられるラピッド・スターの機体!!
尚も降り注ぐ光の飛沫!!

大きくひびが入るキャノピーガラス!!
衝撃をこらえるリエ、そしてケンタ!!

機体後部で小爆発が起こり、大きく機首を下げ、
まるで力尽きたかの様に降下するラピッド・スター!

煙を噴き上げ、真っ逆様に墜落する!!

しかし、一直線にデイダロス目がけて走る一筋の光!

再び陽電子砲で応戦しようとしているデイダロス。
輝く砲身!

が、その陽電子砲ごと、デイダロスの胸部を貫くグラン・マキシマイザー!

直撃!!

瞬間、砲身が機体もろともグニャリと曲り、めり込む様に大きく陥没する!
陽電子砲がその衝撃で誘爆する!!

デイダロスの機体が連続して爆発を起こし、機体前方から粉々に砕け散って行く!
遂に機関部が爆発、機体全体が巨大な光の塊と化す!!

周囲におびただしい破片が飛び散り、轟音と共にデイダロスの機体が爆発する!

大きな破片が炎を噴き上げながら海上に落下し、巨大な水柱が立つ!!
雨の様に降り注ぐ無数の破片!

噴き上がる熱気と水蒸気が雨雲を呼び、黒煙が周囲に低く垂れ込めている…

海上。

雨…

静かに雨が降っている…
不思議な程穏やかな海面に、雨が無数の波紋を描いている…
海上に着水しているラピッド・スター。

その満身創痍の機体…
粉々にひび割れたキャノピーガラスがゆっくりと開き、リエとケンタの顔が覗く。
煤に塗れた表情…

煤を含んだ雨滴が、二人の顔に黒い雫を作ってゆく…
ゆっくりと身体を起こし、デイダロスの巨大な爆煙を見つめる二人…
雨の彼方、雨滴に霞んで、巨大な爆煙がまだ噴き上がっている…

と、上空で轟音が響く。
その音に顔を上げる二人。

低く垂れ込めた雨雲の中から、アース・ムーバーの巨大な機体が姿を現わす。
ゆっくりと降下してくるアース・ムーバー…


夜…

タナカ鉄工所。
門柱の丸い、乳白の電球カバーにぼんやりと電灯が点っている…

工場。
高い天井から照らす水銀灯の光。
その中にラピッド・スターの機体が浮び上がる…
各部が分解され、修理中の機体…

静かな工場。
遠くから、まだ季節には早い風鈴の音が、風に乗って微かに聴こえて来る…

運河。
遠く街の灯を映し、暗い水面が静かに瞬いている…
太鼓橋の上を、初夏の心地よい風が静かに渡って行く…

欄干にもたれ、ぼんやりと夜の運河を見つめているトシヒコとリエ…

トシヒコ
「…全然気がつかなかったよ、オレ…」

リエ
「(トシヒコを見て)…え?」

トシヒコ
「…タナカがさ、普段の生活の影で、あんな凄いコトやってたなんて…」

リエ
「…そんな…凄いだなんて…」

トシヒコ
「(照れた様に)…オレの観察眼もさ、全然大したコトないな。1年以上もおんなじクラスにいてさ、そんなコトも分かんねえなんて…」

微笑むトシヒコ。

リエ
「…そんなコトない。…ヤマグチ君が、助けてくれたから、あたし…(トシヒコを見て)…あたし、今ここにいられるんだもん…」

トシヒコ
「(少し驚いた様に)タナカ…」

二人の視線が合う。一瞬、沈黙が流れる。
視線を見合わせるトシヒコとリエ…

沈黙…

やがて、沈黙に耐え難くなった様に、はにかみ、微笑むトシヒコ。

トシヒコ
「…一人でしょってるのが重くなったらさ、話してくれよ、オレでよければ。(照れて)でも、あんまし頼りには、なんないかも知れないケドさ…」

リエ
「ヤマグチ君…」

トシヒコを見るリエ。
その表情に感情の揺らめきが現われる…

その揺らめきをこらえる様な、リエの表情…
目頭をそっと手の甲でぬぐう…

揺らめきを振り払うかの様に、明るく微笑む…

リエ
「…相談するね、きっと。」

微笑むリエ、そしてうなずくトシヒコ…
彼もまた微笑んでいる…

空を見上げる二人。

二人の頭上、運河の上に拡がる初夏の星空。
星空は都会の光の中に、青い、微かな瞬きを浮かべ、どこまでも拡がっている…




「45秒間の死角」編 〜 完 〜

~ 初出:1996.01.28 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009