SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(222L)
RE:202
午後…

大門。
道路を跨ぐ様にそびえる増上寺大門。
周囲のビルとはまるで不釣り合いな瓦屋根の巨大な門が、道路を跨いで建っている。

その下を、車高を気にする様に、サーディーが多少機体を屈めながらゆっくりと通過して行く。
門すれすれに通過するサーディーの機体。

舗道を歩く人々が興味深げにサーディーを振り返って眺めている…
道行く乗用車の屋根越しに、サーディーの機体がホバリングしながら進んで行く。

何時になく不機嫌な様子のサーディー。

サーディー
「(つぶやく様に)…何だか気分が良くありません。…トゥースは本当にデリカシーのかけらもない…私の精神が未発達などと…」

大門交差点。
沢山の自動車に囲まれながら、信号待ちをしているサーディー。
カメラヘッドを伸ばし、ぼんやりと空中の一点を見つめている…

サーディー(心の声)
「私は…」

交差点を曲がる自動車のフロントガラスが、キラキラと陽の光を反射する…
その反射が明滅する光線となって、サーディーの機体を照らし出す。

サーディーのカメラアイ。
レンズの中の絞りが、まるで反射に目を細める様に絞られて行く…

サーディー(心の声)
「…私は一体、何の為にこうしてパトロールなどしているのだろう?…毎日、毎日、毎日…」

横断歩道を渡る歩行者の列。
行き交う自動車の波…
スモッグに霞んだビルの峰々…
サーディーのカメラヘッドが、ゆっくりとパンしながらその光景を映して行く…

歩行者用の信号機。
青の信号が点滅している…

信号が変わる。
我に返るサーディー。

ウィンカーを点滅させながら交差点を左折、第一京浜に入る。
機体後方のイグゾースト・パネルから薄い排気煙が噴き上がる…

モニター映像。
サーディーのメインカメラが捉えた主観映像。
国道を走る車の列が映っている…
モニターの速度表示が40km/hを示している…

と、コールシグナルが鳴る。
モニターに『RING』のディスプレイが点滅する。

回線を接続するサーディー。
コミュニケーション・ウィンドーが開き、オオツカ警部が映る。

サーディー
「…サーディーです。」

オオツカ
「西新橋交差点付近で事件発生。セントラル・タワービル建設現場で使用されていた工事用の自走式ロボットクレーンが暴走、新橋駅方向に向って進行中だ。お前はそのまま第一京浜を直進、外堀通りから目標の正面に回り、足止めを。我々もすぐ現場に向う!」

サーディー
「…」

オオツカ
「どうしたサーディー、指示を復唱しろ!」

サーディー
「(ハッとして)す、すみません!(気を取り直し)外堀通りから正面に回り込み、目標を足止めします!」

オオツカ
「頼んだぞ。」

サーディー
「ハイ!」

警視庁。
回線を切るオオツカ。

オオツカ
「サーディーの奴…一体どうしたって言うんだ?…(回線を切り替え)ワンディム、トゥース、装備搭載完了次第発進!」

ワンディム(声)
「了解!」

コミュニケーション・システムのスイッチを切るオオツカ。
上着を手に部屋を出て行く。

西新橋交差点。
緊急車両のサイレンがうるさいほど木霊している…

交差点角に建つビル。その影で土煙が噴き上がり、背後の雑居ビルが道路に向って雪崩落ちるように崩れる!

ビルが電線にもたれかかり、あちこちでスパークが噴き上がる!
そのまま道路に倒れ込む!

電線が引きずられ、それを支える電柱が次々に倒れて行く…
土煙の中から突如クレーンのアームが突き出す!

エンジンの駆動音を想わせる轟音と共に、巨大なキャタピラを持つ建設用ロボットが姿を現わす!機体の両側面に設けられた巨大な排気管が、エンジンの轟音が轟く
度に黒煙を噴き上げる!瓦礫と化した雑居ビルの上を、巨大なキャタピラが土煙を噴き上げながら前進する。

と、瓦礫の上で機体が横滑りを起こし、そのまま路肩に駐車してあった乗用車や軽トラックを踏み潰しながら大通りに滑り落ちる!

勢い余り、そのまま道路反対側のビルに頭から突っ込む!
崩れるビル!噴き上がる土煙!
屋上の広告塔がグニャグニャと曲がりながら崩れ落ちてゆく…

排気管が轟音と共に黒煙を噴き上げるとロボットは後退し、崩れかけたビルの中から機体を抜き出す。

警察車両が道路封鎖している外堀通りに、ロボットはその姿を現わす。
点滅しているパトカーのパトライト越しに、警戒色のロボットの機体が巨大な姿を見せる…

新橋駅前。
道路にはパトカーや機動隊の装甲車が何台も停まり、大勢の警官や機動隊員が待機している。舗道には見物の群衆が溢れ、事の成り行きを見守っている…

JR線の低いガードを潜り、機体を一杯まで低くしたサーディーがパトライトを点滅させ、サイレンを鳴らしながら到着する。

サーディーの姿に群衆の間からどよめきが起こる。
群衆の中に母親に手を引かれた小学校低学年位の少年。
サーディーを指さし目を輝かせている。が、次の瞬間、母親に手を引かれる…

必死に抵抗している様子の少年。
少年を叱っているような母親の様子。
しかし、そのまま母親に手を引かれて群衆の間に消える少年…

ゆっくりと着地し、機体を起こして戦闘形態をとるサーディー。
腕部の装甲がスライドし、小型のアームガンがセットされる。
機体頂部のセンサーシステムが起き上がる。

サーディーのメインモニター。
正面に土煙が噴き上がり、ロボットがゆっくりと前進してくる。
道路封鎖しているパトカーが踏み潰され、あちこちで火花が噴き上がっている…

ロボットの形態を識別し、データベースにアクセスするサーディー。
サブウィンドーにデータベースの情報が流れる。

サーディー
「主動力機関の出力がこちらの2.75倍…力では分が悪いか…」

カメラヘッドを巡らせ、舗道に溢れる群衆を見る。

サーディー
「(困惑して)しかし…」

溢れる群衆…

サーディー
「しかし、この状況では、武器の使用はリスクが高すぎる…」

アームガンを見る…
考えるサーディー…

しかし、決心した様に正面を見る!

サーディー
「…行くぞッ!!」

脚部のラダーとスタビライザーが一斉に飛び出す!
凄まじい風が周囲に巻起こる!

バーニアを全開するサーディー!
一瞬その機体が空中に浮かび上がったかと思うと、脚部のバーニアが高出力の為に輝き、そのまま一直線にロボット目がけて突っ込む!

サーディーの接近に反応するロボット。
クレーンアームをサーディー目がけて振り降ろす!
突進してくるサーディー、瞬間、機体を翻しアームをかわす!素晴らしい反応!

舗道の電話ボックスを直撃するアーム!
ボックスを叩き潰し、そのままアスファルトの地面にめり込む!
路面のアスファルトと土が一気に舞い上がる!

ロボットの機体に組み付くサーディー!
背面のメイン・イグゾーストから真っ白な排気煙を噴き上げる!
最大出力でロボットを組み伏せようとする。

サーディーに組み伏せられ、激しく抵抗するロボット。
排気管が真っ黒な煙を噴き上げると、凄まじい出力で前進を開始する。
最大出力のサーディーを押し戻す!

サーディー
「や、やはりパワーでは…」

噴き上がる排気煙!
轟音が周囲に轟いたかと思うと、サーディーごと一気に走り出すロボット!
巨大なキャタピラが路面のアスファルト舗装を次々に砕いてゆく!

交差点を渡り、商店街の建物を次々に突き崩しながら尚も前進するロボット!
爆煙の様に巨大な土煙が次々に噴き上がり、建物の破片が舞い上がる!

新橋駅前。
突進してくるロボットに大混乱の群衆!
一斉に逃げ出す!
警官が必死に誘導している。

ロボットに組み付いたサーディー。
フルパワーで押えつけているが、ロボットはじりじりと前進を続ける。

サーディー
「こ、コイツのパワーユニットを…」

ロボットのデータを基に、機体をスキャンするサーディー。
しかし、その瞬間、ロボットが信じられない様な力でサーディーの機体を押し戻す!
パチンコ店のビルにサーディーを押し付ける!
ビルに激突するサーディー!

サーディー
「ウワーッ!!」

壁面一杯に取り付けられた派手なネオン管が、スパークしながら次々に破裂する!
飛び散る破片!大きなガラス張りのビルの正面がグシャリと崩れる!

サーディー
「クソッ!…」

逃げ惑う群衆!
誘導する警官の吹く警笛の音が、苛立つ様に周囲に響く!

尚もサーディーを押し付けるロボット。サーディーの機体がビルにめり込む!
スパークする機体!崩れるビル…

苦しげに抵抗するサーディー。しかし、ロボットの強力なパワーに反撃できない。

と、誰かの声がする。子供の様…


「…頑張れ、ロボットポリスーッ!ガンバレーッ!!」

その声にハッとするサーディー。
カメラアイを巡らす。
乱れるモニター映像。

群衆の中に少年の姿。サーディーを必死に応援している。
先程の少年。

カメラの倍率を上げる。
モニターに映る少年の姿。
サーディー目がけて必死に叫ぶ。

少年
「がんばれーッ!!ロボットポリス、がんばれーッ!!」

サーディー
「ロボット…ポリス?…」


〜 つづく 〜

~ 初出:1996.02.25 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009