SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(158L)
RE:221
新橋駅前。
崩れたビルからはまだうっすらと煙が立ち上っている…

路肩に停められた無数のパトカーのパトライトが、あちこちで点滅し、遠くでは救急車のサイレンが鳴っている…

パワーユニットを直撃され、停止したロボットクレーンの機体が、警視庁の手配した超大型トレーラーのデッキに乗せられている。車道を殆ど塞ぐ程の大きさ。
その様子を恐る恐る遠巻きに眺めている野次馬…

ロボットクレーンの機体は、何本もの太いワイヤーケーブルでデッキに固定されている。その傍らに佇むワンディムとトゥース。

トゥース
「(ワンディムを見て)…しかし、一体どうしたんでしょうね?」

ワンディム
「(トゥースを見る)…ん?」

カメラヘッドを巡らせるトゥース。
トレーラーのデッキに乗せられた、クレーンロボットの機体を見る。

トゥース
「…あのロボットですよ。…気がつきませんでしたか、さっきの動き?暴走と言うより、まるで意志があるかの様でしたよ…凄い力で抵抗してた。」

ワンディム
「…そうだな…(カメラヘッドを上げ、やや上方に視線を走らせる)…確かにあのロボット、まるで我々に抵抗している様な動きをしていた。見方によっては意志があるかの様に思えたかも知れない…(トゥースを見て)…だが、有り得ない事だ。あのロボットは自立制御タイプではない。コントロールシグナルで制御される建設機械に過ぎない筈だぞ。」

トゥース
「はぁ…」

クレーンロボットの機体を見るトゥース。
ロボットの警戒色の機体が鈍い反射を放っている…

レーザーの直撃を受けた部分は、チタン合金の外装パネルが溶解し、小さな穴が空いて内部のメカニックが覗いている…

その機体は最早微動だにしない…


舗道。
信号機の支柱が大きく傾き、車道に倒れかかっている。
時折思い出した様に、青い信号ランプが点る…

その信号機の向こうに、機体を屈めたサーディーが佇んでいる。

サーディーの前には、あの少年が目を輝かせながら、サーディーの機体を見上げている…

サーディーのカメラヘッドが微かな駆動音を立てながら、まるでお辞儀をするような動きを見せる。

サーディー
「…さっきはどうもありがとう、応援してくれて。」

少年
「(微笑み)ボク信じてたもん、ロボットポリスはどんな奴にだって負けないって。」

一瞬言葉に詰まるサーディー…

サーディー
「え…」

サーディーのカメラヘッドが一瞬、少し視線を落した様にうつむく。
しかし、気を取り直した様に、再び少年の姿を捉える。

サーディー
「(気分を変える様に明るく)…そう言えばさっきも、私の事をロボットポリスって言ってましたね。」

少年
「(微笑み)…だって、キミ、ロボットポリスなんでしょ?」

サーディーのカメラアイ。
レンズの中の絞りが、ゆっくりと絞られて行く…

サーディー
「え?(少し困惑して)…まぁ、私はロボットだし、警官ですが…」

少し考える…

サーディー
「…そう。…確かに、ロボット…(微笑む様に)…ポリスですね。」

少年「(嬉しそうに)ウン!」

サーディー
「…ですが、私本当の名前はサーディーって言います。警視庁科学捜査一課所属のサーディーです。どうぞよろしく。」

少年に向って大きな手を突き出すサーディー。
鈍いギヤの駆動音を立てて、サーディーの手が伸ばされる。

少し驚いた様に一歩後退りする少年。
しかし、次の瞬間、目を輝かせ、サーディーの太い指を両手で挟む様に掴む。

まるで握手する様に、小さく指を動かすサーディー。

少年
「ミツル…タカムラ・ミツル。」

サーディー「ミツル君ですね。よろしく、ミツル君!」

嬉しそうに微笑む少年。

少年
「(喜々として)凄いや、ロボットポリスと友達になれるなんて!…(サーディーを見上げ)ねぇ、そうだよねサーディー?友達だよね、ボクたち…」

少年の言葉に一瞬とまどう様な仕草を見せるサーディー。
しかし嬉しげにうなづく。

サーディー
「(うなづき)ええ。」

サーディー(心の声)
「(微笑む様に)トモダチ、か…」

と、後ろからワンディムの声。

ワンディム
「サーディー、そろそろ引き上げるぞ。」

その声にカメラヘッドを巡らせるサーディー。
と、ワンディムとトゥースは既にホバリングを開始し、帰投態勢に入っている。

サーディー
「(ワンディムを見て)…解りました!…(再びミツルに視線を転じて)…私はそろそろ帰らなければなりません。本当にありがとう、ミツル君。」

サーディーを見上げるミツル。小さくうなづき、一歩下がる。

サーディーの足元。
ホバーシステムが作動を開始する。
幾つものラダーが複雑に動き、噴射バランスを調節している。

徐々に浮き上がるサーディーの機体。周囲に砂塵が舞い上がる。
ゆっくりと走り出すサーディー。

その姿に一歩踏み出すミツル。

ミツル
「また合えるよね、サーディー?ボク達、また会えるよね!?」

ミツルを見るサーディー。

サーディーのモニター映像。
名残惜しげな表情のミツルが映っている…

その後ろに母親らしき女性が歩み寄る。
そっと、ミツルの肩に手を置き、一緒にサーディーを見送る…

サーディーのカメラヘッド。
うなづく様にカメラヘッドを動かすサーディー。

サーディー
「会えますとも。私達はトモダチです、ミツル君。」

ミツル
「(嬉しげに)ウン!!」

走り出すサーディー。
その後ろではミツルが大きく手を振っている…
みるみる小さくなるミツルの姿…

日比谷通り。
走行中のサーディーの脇に、トゥースの機体が並ぶ。

トゥース
「どうやらファンができたみたいじゃないか、サーディー?」

サーディー
「…ファンじゃありませんよ、トゥース」

トゥース
「(怪訝そうに)え?」

どこか嬉しげな様子でまっすぐ前を向くサーディー。

その様子に状況が飲み込めず、怪訝そうにサーディーを覗き込むトゥース。
嬉しそうに前を見ているサーディー…

サーディー
「(嬉しげに)トモダチです…」


〜 つづく 〜

~ 初出:1996.03.24 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009