SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(138L)
RE:246
昼下がり…

のどかな昼下がりの隅田川。
川の中央を、小型のタンカー船が白波を立てながら進んで行く…

その航跡が、延々と連なる波動となり、やがて岸辺に打ち寄せる。
打ち寄せる波が、思い出した様に川岸の堤防で、ゴボゴボと大きな水音を立てている…

勝鬨橋。
自動車が行き交う橋の上。
学校帰りのミツルがやって来る。

心持ちうつむき気味のミツル。何となく元気がない。
ランドセルに付けられたメタルのカードキーが、初夏の日差しを受け、時折キラキラと輝いている…

と、ミツルの耳に船のエンジン音が響いて来る。
視線を上げるミツル。
道の反対側の手摺越し、川を行くタンカー船に気付く。

駆け出すミツル。こちら側の手摺に駆け寄り、川面を覗き込む。
川面に太陽の反射が浮かび、ゆらゆらと揺れながら輝いている…

次の瞬間、ミツルの足元、轟音を立てながら、タンカー船が橋の下を潜って現われる。
甲板を走るパイプの列や、その上で作業している乗員が、ミツルの視線の上を流れる。

砕ける白波。緑色の水面に、白い波が砕け、振り撒かれてゆく…
潮の香のする風が周囲を包む…

覗き込む様に、手摺から身を乗りだし、タンカー船を眺めているミツル。
その視線は、船の行方を追いかけてゆく。

白い航跡を曳きながら、ゆっくりと遠ざかってゆくタンカー船…
ぼんやりとその行方を見つめるミツル…

ふと気が抜けた様に、乗り出していた身体を戻す。
手摺にもたれる。
何処か寂しげな表情…

道路。
晴海通り。勝鬨橋の上を、パトロール中のサーディーが通りがかる。
カメラアイがミツルの姿を捉える。
ミツルの姿を追って、サーディーのカメラアイが動いて行く…

サーディーのカメラ映像。
寂し気なミツルの姿…

サーディー
「あれは…」

ウィンカーを点滅させ、スピードを落すサーディー。
砂塵を巻き上げながらゆっくりと路肩に寄り、停止する。

サーディー
「ミツル君。」

その声にハッとし、声の方向を見るミツル。
その表情が輝く。

ミツル
「(顔を輝かせ)サーディー!」


堤防…

対岸に浜離宮の水門を望む堤防。隅田川の川風が心地よく吹いている…
堤防に腰を降ろしたミツルと、その後ろに佇んでいるサーディー。

元気のないミツル…じっと川面を見つめている…
その様子に、ミツルを気遣うサーディー。

サーディー
「どうかしたのですか、ミツル君…」

ミツル
「(川を見つめながら)…みんな信じてくれないんだ…」

サーディー
「…信じる?」

うなずくミツル。

ミツル
「(すがる様な表情でサーディーを見て)…ねえ、ボク達友達だよね。そうだよね、サーディー?」

サーディー
「(一瞬とまどい)ミツル君…(うなずき)ええ、勿論ですよ、私達はトモダチです。……でも、どうしてそんな事を?…(察する。ミツルを見て)…何か、あったんですね?」

ミツル
「…サーディーと会った日のコト、今日、学校でタケシ君やサトル君に話したんだ…でも、だれも信じてくれなくって…(感情が高ぶる)…ちゃんと話したんだボク!だってホントの事だモン!ウソじゃないんだモン!…でも…でも、みんな信じてくれないんだ…ボクのコト、ウソつきだって…」

うつむくミツル…

対岸の水門で、水上バスが長い汽笛を鳴らしながら出発して行く…

サーディー
「ミツル君…」

うつむいているミツル。
堤防の渇いたコンクリートに、一滴、小さな雫の跡がつく…

顔を伏せたミツルの横顔を見るサーディー。
唇を噛みしめ、耐えているミツル…

サーディー
「……」

顔を上げ、サーディーを見るミツル。
その目が涙で潤んでいる…

ミツル
「サーディー、ボク、どうしたらいいの?……どうしたらみんなにホントだって解ってもらえるの?…」

サーディー
「ミツル君…」

穏やかな川面から、水上バスのエンジン音が微かに響いて来る…
少し視線を外し、川を見つめるサーディー…

川面は初夏の青空を映し、微かに空の色に染まっている…
風が一時、川面にさざ波を立てながら川を渡って行く…

サーディー
「…私達はトモダチです、ミツル君…」

再び顔を上げ、サーディーを見るミツル…

サーディー
「…もし、相手が困っていたら、精一杯力になってあげるのがトモダチの役目だと、私は思ってます。」

見つめるミツルの瞳…

サーディー
「…私がタケシ君やサトル君に話してみましょう。」

思いもかけないサーディーの言葉に、ミツルの表情にパッと光が射す。

ミツル
「(立上り、身を乗り出す様に)…ホント?ホントなの、サーディー!?」

サーディー
「(うなずき)明日、学校が終る頃、ミツル君の学校にお伺いしましょう。私から直接お話をすれば、きっとタケシ君達も解ってくれる筈です。」

ミツル
「…サーディー……ありがとうサーディー!」

サーディーの機体に飛びつくミツル!
サーディーの金属の機体に、身体を擦りよせる。
喜ぶミツルの様子に嬉しそうなサーディー…


〜 つづく 〜

~ 初出:1996.04.21 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009