SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(226L)
RE:267
銀座四丁目。
街にサイレンの音が響く…
道路を走る自動車がスピードを緩め、道を空ける。

乗用車。
道路の脇に寄り、スピードを緩める…
ウィンカーを点滅させながら停車する。

車内にはドライバーの男性。
身を乗り出す様に、サイレンの方向を見つめる。

サイレンの音が徐々にその強さを増して行く…

停車中の乗用車。
ドライバーが何事かとサイレンの音の方向を眺めている…
徐々に大きくなるサイレンの音…

と、その瞬間、凄まじい轟音が周囲に轟く!
一瞬身体をすくめるドライバー!

開け放たれた窓から疾風が吹き込む!
乗用車の脇を、何か大きな車両が、砂塵を巻き上げながら擦り抜けて行く!
振り向くドライバー。

リア・ウィンドー。
パトライトを点滅させたロボットが、猛スピードで遠ざかって行く。
呆然とした様子で、ロボットを見送るドライバー…

数寄屋橋交差点。
道を空ける自動車の屋根越し、機体を低くした走行形態のサーディーが、サイレンを鳴らし、パトライトを点滅させながら全速で走り抜けて行く…
彼方に黒煙が噴き上がっている…

地下鉄…

地下鉄の電車がライトをきらめかせ、トンネルの中を走っている…

丸の内線の車内。
ドアの脇に立っているリエ。鞄を手に学校帰りの様子。

鞄を持つ指先が、いらついている様に小刻みに動いている…
急〔せ〕いている様子。

ドアの外、トンネルの暗闇を見つめている…
時折その暗闇を、トンネル内部に取り付けられた蛍光灯の光の筋が流れてゆく…

リエ(心の声)「急いで…、急いで…早くッ!…」

ガラスの向こうで、煤けたコンクリートの壁が、闇の中を走っている…

と、突然列車のスピードが落ちる。
ハッとした様に周囲に視線を巡らせるリエ…

車内にアナウンスが流れる…

アナウンス
「エー、お客様にお知らせ致します。お客様にお知らせ致します。お急ぎの処、誠にご迷惑さまですが、只今、御茶ノ水駅付近で事故が発生した模様です。…現在、御茶ノ水駅を通過する総ての路線で、列車の運行を見合わせております。その為、この電車も次の淡路町駅で運転見合わせとなります。お客様にはお急ぎの処、誠にご迷惑さまですが、詳しい情報が入り次第お伝えいたしますので、このまましばらくお待ち下さい…繰返しお客様にお知らせ致します…」

車内にざわめきが起こる…

リエ
「(つぶやく様に)…みんな…」

淡路町駅。
短く警笛を鳴らし、ゆっくりと電車がホームに入ってくる。
停車する…

ドアが開き、乗客達がホームに降りる。
乗客達の間をすり抜け、ホームに飛び出してくるリエ!

リエ
「!!」

停車した電車の車内では、まだアナウンスが繰り返されている…
ホームのあちこちで乗客達が顔を見合わせ、不安気に会話をしている…

猛然と改札を抜け、階段を駆け上がって行くリエ…

日比谷通り。
大きな銀杏の街路樹を次々になぎ倒しながら、ロボットが前進している…

対峙するランド・チャレンジャー。
機体を揺すりながらゆっくりとスピードを落し、道路の中央で停止する…

ランド・チャレンジャー操縦席。

ゲンザブロウ
「(ショウイチを見て)この状況なら、エア・ハードナーでの足止めが一番効果的じゃろう。」

ショウイチ
「そうですね、すぐ準備を…」

コンソールを操作し、サブモニターにコマンド・セレクターを表示する。
セレクターを操作するショウイチ。

モニターに『Air-hardner cartridge: LOADED』の表示が点滅する。

ランド・チャレンジャー機体上部。
外装甲パネルが起き上がり、機体から多装填ランチャーが姿を現わす…

操縦席。
メインモニターにターゲットスコープが浮び上がる…
照準を合わせるショウイチ…
ショウイチの横ではゲンザブロウがラピッド・スターのケンタを呼び出している。

上空。
急降下するラピッド・スター。

御茶ノ水駅前の交差点。
両腕がクレーンの様になったロボットが、張り巡らされた電線を引きずりながら前進を続けている。あちこちで電柱が引き倒され、スパークが散る!

電線を引きちぎりながら前進する。
そのまま交差点の中央に出る。

ラピッド・スターコクピット。
急降下を続けるラピッド・スター。

ターゲットスコープ。
キャノピーガラスに映ったターゲットスコープ。
見る見る接近してくる地表の風景。

その上を目まぐるしい早さでターゲットマークが移動する。
必死に操縦捍を握り締めているケンタ。
照準を合わせてゆく…

ケンタ
「ク…もう、すこし…」

移動するターゲットマーク…
接近する地表…
瞬間、照準が交差点のロボットに合う!

ケンタ
「今だッ!!」

操縦捍の発射ボタンを押し込む!
交差点のロボットにビームバルカンを浴びせる!

交差点。
ロボットの機体にビームバルカンが炸裂する!
外装が次々に飛び散る!

ロボットの周囲を嘗める様に炸裂するビーム!
周囲のアスファルトの路面が砕け散り、破片を噴き上げる!!
バラバラと落下するロボットの破片!

道路すれすれまで降下したラピッド・スター、そのまま再び急上昇する!
噴き上がる砂塵!耳をつん裂く爆音!衝撃波の爆裂音が、周囲の空気を震わせる!

コクピット。

ケンタ
「よおし!」

操縦捍を引き、一気に機首を引き起こすケンタ。
キャノピーガラスに太陽のきらめきがハレーションを起こす!
ロボットの機体がすぐ脇を走る!!

と、ガラス上にコミュニケーション・ウィンドーが開き、ゲンザブロウが映る。

ゲンザブロウ
「ケンタ、エア・ハードナーを使いなさい。ロボットを足止めするんじゃ。」

ケンタ
「了解ッ!」

コンソールパネルを操作するケンタ、一瞬視線をパネルに落す…
ほんの一瞬、ケンタの視線がロボットの動きから外れる…

その瞬間、機体に凄まじい衝撃が走る!
機体全体が悲鳴の様なうなりをあげ、信じられない様な減速が起こる!
シートベルトで固定されたケンタの身体が、シートから引き剥されそうになる!

ケンタ
「ウワーッ!!」

ロボットの腕からクレーンのワイヤーが伸び、ラピッド・スターの機体を捕らえている!

ケンタ
「(振り向き)し、しまった!!」

地下鉄出口。
リエが階段を駆け登って来る!

リエ
「…みんなは?…どこ!?」

空を見上げる。と、彼方で爆裂音が轟く!
音の方向を振り向くリエ。
ビルの広告越し、ワイヤーに捕らえられたラピッド・スターの姿!

リエ
「ケンタ!!」

ラピッド・スター目がけ、必死の表情で駆け出してゆくリエ…

ラピッド・スターコクピット。
『CAUTION! Overloading Driving-unit!』のメッセージがキャノピーガラスの上で点滅を繰り返している…

アラームが鳴っている…

キャノピーガラスのあちこちに警告メッセージが点滅し、電子音のアラームがケンタの耳を打つ…

小刻みに視線を巡らせているケンタ…
追い詰められている…

ケンタのこめかみを脂汗が流れる…
機体が不気味なきしみをあげる…

ケンタ
「こ…こんなワイヤー!」

片手でコンソールパネルを操作する。

機体下部。
全力噴射しているラピッド・スター。
機体下部に格納されていたマニピュレート・アームがガクリと下がる。

コクピット。
右腕だけセンサーグラブに腕を通したケンタ。
ワイヤーを引きちぎろうとする…

ラピッド・スターの右腕が、機体に絡み付いたワイヤーをちぎろうとしている…
その瞬間、ロボットの腕がワイヤーを掴む。
信じられない様なパワーでラピッド・スターを引きずり落す!!

コクピット。
凄まじい衝撃!!
ケンタの周囲の風景が、突然一切の均衡を失い、渦を巻く!!

ケンタ
「ウワーッ!!!」

街。
走るリエ。
その目に、引きずり落されるラピッド・スターの姿!!

リエ
「ケンタ!!!」


〜 つづく 〜

~ 初出:1996.05.26 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009