SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(236L)
RE:273
街…

ロボットの怪力に引きずり落されるラピッド・スター!
空を見上げるリエ。
ビルの隙間、ワイヤーに絡み付かれたラピッド・スターが墜落して行く!

リエ
「ケンタッ!!!」

コクピット。

ケンタ
「うわーっッ!!」

ランド・チャレンジャー操縦席。
モニターに墜落するラピッド・スターの姿!

ショウイチ
「あーッ!ケンタッ!!」

キャノピーガラスの外、渦を巻き、猛スピードで接近してくる地表の風景!
雑居ビルの乱雑な屋上が、まるでこちらに向って突き刺さる様に迫る!!

機体に絡み付いたワイヤーが擦れ、火花が噴き上がる!
空を切ってうなりを上げるワイヤー!
飛び散る火花…

ケンタ
「う、あ、あ…ぁ…」

渦を巻きながら突進してくる地表!
思わず目を閉じるケンタ!


その瞬間!


コンソールパネルに新たなパイロットランプが点る。

キャノピーガラスに
『AUTOMATIC LIFE SAVER: ACTIVATED』
のディスプレイが点滅する!

コンソールパネルに次々とランプが点って行く…
『JET BALANCING CONTROL MODE: FORCIBLE』
のディスプレイ。

機体下部。
外装パネルが弾ける様に開く!
緊急用バーニアが噴射する!

キャノピーガラス。
噴射バランスレベル・インジケーター。
小刻みに変動している各エンジンの推力レベル…

『AUTOMATIC BALANCE CONTROLLED』
のディスプレイと共に、垂直噴射バーニアの噴射レベルが最大に引き上がる!

機体下部。
両翼のバーニアが小刻みに噴射レベルを変え、機体のバランスをとる!
噴射ノズルがクルクルと向きを変える!
墜落する機体を支え上げる!

ワイヤーが絡み付いたまま、凄まじい排気煙を噴き上げ、雑居ビルの脇に生えた銀杏の樹の上に落下するラピッド・スター!
周囲にメインドライブの轟音が轟く!

バキバキと音を立て、銀杏の枝が折れる!
ズブリとめり込む様に銀杏の樹にのしかかる機体!

噴き上がるジェット噴射が周囲におびただしい葉を飛び散らす!
体勢を崩し、そのまま轟音を立てて地上に滑り落ちるラピッド・スター!

樹の横手にある駐車場、駐車中のバンの上に着地する。
周囲を囲むフェンスの金網が折れ曲がり、バンの屋根がグシャグシャに潰れる!
白煙が噴き上がる!

コクピット。
電子音のアラームが鳴り続けている…

前部操縦席のケンタ、頭を振り、意識を取り戻す…
苦しげな表情で上方を見上げる…

ケンタ
「…チ………チッキショーォ…」

キャノピーガラス越し、ロボットが前進して来る…

コクピットのケンタの上に、ロボットの影が広がる…
ハッとして、コンソールを操作し、ドライブモードをチェンジするケンタ。

スロットルレバーを押す。
ドライブの推力が上がる…
徐々に数値がアップするデジタル・インジケーター…

ロボットのアーム。
鈍い駆動音をたてながら、ワイヤーを手繰り寄せ始める…

コクピット。
機体に衝撃が走る!

不快な金属音が周囲に響き、ラピッド・スターの機体がロボットに引き寄せられてゆく…

ケンタ
「チッキショーッ!バカにしやがってッ!!」

潰れたバンの車体が横倒しになり、その上のラピッド・スターの機体が駐車場のコンクリートの上を滑る!主翼の先端が地面に触れ、パッと火花が散る!

コクピット。
アラームが鳴り響き、金属の擦れる不快な音や機体の上げる悲鳴の様なきしみが、ケンタの周囲を包んでいる…

断続的な衝撃がコクピットを襲う!
必死に操縦捍を握るケンタ。

ケンタ
「…(苦し気に)…クソッ、思う様に操縦が…くそぉ…(空を見上げ)…早く…早く来てくれッ、姉ちゃんッ!」

街。
煙が低く流れる舗道。
リエが必死の表情で走ってくる。

と、広告板の鉄骨越し、ロボットに釣り下げられたラピッド・スターの機体が見える。
その様子にハッとするリエ。

リエ
「ケンタ!!」

コクピット。
ケンタが空しく操縦捍のレバーを動かしている。

ケンタ
「クソッ、クソッ、クソッ!!」

街。

リエ
「ケンタ…」

と、リエの後ろで轟音が轟き、風が巻く!

リエ
「キャッ!」

驚き、後ろを振り向くリエ。
その瞬間、凄まじい轟音が周囲に轟き、バラバラと何かがアスファルトの路面に降る!
夥しい薬莢〔やっきょう〕。

耳を押さえるリエ。
身体をすくめながら見上げる。
ロボットの巨大な脚…

両腕のアームガンを露出したサーディーがロボット目がけて一斉射している!
ロボットの機体に命中する!機体に火花が散り、飛び散る装甲パネル!

ラピッド・スターを捕らえていたワイヤーがちぎれ、もんどりうってひっくり返る!
投げ出されるラピッド・スター。駅前の石畳の広場に着地する!

そのまま滑る様に広場を進み、電話ボックスに衝突する!

リエ
「(ハッとして)…今だわッ!」

ラピッド・スターに駆け寄るリエ。

広場。
着地したラピッド・スター。機体からうっすらと煙が噴き上がっている…
機体に駆け寄るリエ。

主翼によじ登り、外部コンソールパネルの蓋を開ける。
スイッチを押し、キャノピーガラスを開く。

ゆっくりと開いて行くキャノピー…
機体を伝いながら、コクピットに寄るリエ。

ケンタ
「(振り向き)姉ちゃんッ!」

リエ
「ケンタ、大丈夫?…(微笑み)随分ヤラレてたみたいだったけど。」

コクピットの後部操縦席に乗り込むリエ。
シートベルトを締める…

ケンタ
「(目を伏せ)…オレ、操縦ヘタだから…」

思わぬケンタの落込みに、「しまった」と言う表情のリエ。
気分を変える様に明るく…

リエ
「(明るく)しょげてる場合ッ!?すぐ発進よ!…飛べるわね?」

ケンタ
「………ウン…」

リエ
「もう…元気だせ、ケンタ!ホラ、返事はッ!?」

ケンタ
「(ヤケ気味に)飛べるゾッ!!」

リエ
「(微笑み)よぉしッ!…(操縦捍を握り)…いっくぞォ!」

思いきりジェットを噴射し、垂直上昇するラピッド・スター。
キャノピーガラスがゆっくりと閉じて行く…
バラバラと落下するワイヤー…

日比谷通り。
通りの中央で、2機のロボットが佇立している。
機体のあちこちで駆動音がし、関節部分が過負荷に煙を立ち上らせている…

その機体や脚部に赤い物質が固着している…
機体を被う物質のあちこちからは、激しい化学反応の名残を想わせる煙が噴き上がっている…

ゆっくりと後退するランド・チャレンジャー。

操縦席。

ショウイチ
「(コミュニケーションシステムを見ながら)…それで、大丈夫なのか、ケンタは?」

モニター映像。
ふくれた顔のケンタ。

ショウイチ
「コラ、ケンタ返事しなさいッ!」

モニター映像。

ケンタ
「どうせ操縦ヘタッピだよ、オレ!!」

ショウイチ
「(呆気に取られて)あん?何怒ってんだ、お前?」

リエ(声)
「(苦笑する様に)…相当悔しかったみたいよ、ヤラれたのが。」

ショウイチ
「(ため息をつき)フー…あのなぁ…(気を取り直し)…とにかくだ、残りの1機もこれ以上暴れん様にすぐエア・ハードナーで固着するんだ。」

リエ(声)
「了解ッ!」

御茶ノ水駅前。
起き上がったロボット。サーディー目がけて再び突進する。
ロボットに照準を合わせるサーディー…

アームガンが再びうなりを上げる!
ロボットの脚部装甲パネルが吹き飛ぶ!

バランスを崩し、駅舎に倒れ込むロボット!
駅舎のコンクリートが飛び散る!
尚も、もがく様に暴れるロボット。

ラピッド・スターコクピット。
倒れたロボットにターゲットスコープの照準を合わせているリエ。

リエ
「発射ッ!」

カプセルを発射するラピッド・スター。
ロボットの機体に次々に炸裂するカプセル!

粘性の青い物質が飛び散る!
空気と反応し、激しく煙を噴き上げる!
赤く変色し、固着してゆく物質…

ロボットの動きが徐々に鈍って行き、やがて完全に停止する…
沈黙するロボット…


〜 つづく 〜

~ 初出:1996.06.02 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009