SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(194L)
RE:327
轟くジェット・ドライブの排気音が、周囲の空間を歪ませる…

超音速旅客機の金属製の外装が、時折、周囲に鋭角の反射光を放っては、滑走路に流麗な姿を現わしてゆく…

白い機体が、滑る様に滑走路を進む…
ジェット・ドライブから噴き上がる陽炎…

ゆっくりと方向転換する機体。
コクピットの窓ガラスが、一瞬、射す様な反射光を発する。

太陽の光点が、滑走路をゆく旅客機の滑らかな機体の上を、揺らめきながら滑ってゆく…

夏の日差が、真新しい滑走路の上に降り注いでいる…

滑走路の彼方にそそり立つ巨大な離陸カタパルトが、立ちのぼる陽炎に微かに揺れながら、炎熱の中にそびえている…

時折、思い出した様に、滑走路の上を海風が渡って行く…

空港。
壮大なガラス張りの吹抜けを持つターミナル・ロビー。
アナウンスが広いロビーに木霊している…

ロビーに轟音が轟き、吹抜けのガラス天井の上を一瞬、影がよぎる。
今しも離陸した超音速旅客機が、ターミナルの上を飛び去ってゆく…

ターミナル・ロビー。
ロビーの中央、吹抜けの空間に映し出されるホログラフィック・ディスプレイ。

発着時刻を表示した巨大なディスプレイのそこ此処で、離発着便の表示が目まぐるしく変わって行く…

そのディスプレイを先程から真剣な表情で見つめているリエ。
到着便の表示に、まるで嘗め回す様な視線を走らせる…

そのリエの後ろで、疑わし気な視線でその様子を眺めているケンタ。
ディスプレイを見つめているリエ。

背後からケンタの声。

ケンタ(声)
「姉ちゃん、まだ分かんないのカぁ?」

リエ
「(ディスプレイを見つめたまま)…少し黙っててよ、大変なんだかんね、探すの!」

ディスプレイの上を走る視線…

リエ
「(つぶやき)…トランス・ワールド153…トランス・ワールド153…」

走る視線…
その先でディスプレイの情報が次々に更新されてゆく…

リエ
「(ぼやいて)…まったく、なんであたしこんなコトやってんだろ…」

手摺の上に腰を降ろしたケンタ、不満気な表情。

ケンタ
「飛行機着いちゃうよぉ!まだぁ?」

チラと壁面の時計を見上げるケンタ。

午後1時25分…

リエ
「(ムッとして)分かってるッ!…(そのまま探す)…トランス・ワールド153…」

流れるディスプレイ…
と、リエの視線がトランス・ワールドの文字を捉える!

リエ
「…ア…………あったぁ!」

ケンタ
「…エッ?」

そのまま到着時刻に視線を滑らせる…午後1時25分。
ハッとするリエ。隣の時刻表示を見る。午後1時26分!

リエ
「エ、もう着いてるッ!…(ケンタを振り返り)…ケンタ、A-15!」

走り出すリエ!

ケンタ
「エ?なんだよ、ソレ…(走り出すリエを見る)…あ、待ってよォ!!」

手摺から飛び降り、慌ててリエを追うケンタ…

A-15到着ロビー。
長い通路を走ってくる人影…

息せき切ったリエが駆け込んで来る。
折しも到着ロビーに降り立つ乗客達の姿…

手の甲で汗をぬぐい、周囲を見回すリエ…
乗客の中にエリカの姿を探す…

と、後からケンタがやってくる。肩で息をする。

ケンタ
「…ひでぇよォ…いっきなり…おいてく、なんて、さぁ…」

肩で息をするケンタ。
リエはそのケンタの声には応えず、前方を見ている…
と、その表情が緩む…

リエ
「(前方を見たまま)…ケンタ…」

リエの声にうつむいて息をついていたケンタ、顔を上げる。

ケンタ
「…エ?…」

リエが微笑みながら前方を見つめている…

リエ
「…エリカさんよ…ホラ!」

その声にハッとする。ゆっくりと前方を見るケンタ…

行き交う乗客達の中、一人の少女が立ち止まり、じっとこちらを見つめている…
背後の窓から降り注ぐ夏の日差し。
周囲の影の中、少女の白い服が夢の様に輝いている…

少女が微笑んでいる…
透き通る様な瞳が、ケンタを見て優しげな光を宿している…

その微笑みを、夢をみている様な思いで見つめるケンタ…
ケンタに微笑んでいるエリカ…

ケンタも思い出した様に微笑む…

しばらく見つめ会う二人…
周囲の喧噪が遠く響いている…
微笑み、ゆっくりと口を開くエリカ…

エリカ
「…会えたのね、また…」

エリカの言葉を噛みしめる…
微笑むケンタ…

ケンタ
「……(うなづき)…ウン…」

窓から降る夏の日差しの中で、エリカもケンタも微笑んでいる…

メイン・ゲート。
手摺から身を乗りだし、父親を探しているミツル…

その目にスーツケースを押しながら出てくる男性の姿。
ミツルの表情がパッと明るくなる。

ミツル
「お父さんッ!」

その声にミツルの方を見る男性。手を上げ、ミツルに応える。
嬉しそうに手を振るミツル。

ミツル
「お父さんッ!」

天井に取り付けられたデジタル時計。
午後1時40分を指している…


リニア・ターミナル。
空港内のリニア・ターミナル。
ホームの時計が午後1時50分を指している。

列車運行表示版。
電子音と共にディスプレイが変わる。
『13:58 東京ターミナル』の表示が現われる。

アナウンス
「まもなく、折り返し13:58発東京ターミナル行の列車が到着します。
      乗降デッキはA。ガイド・ディスプレイの点滅している乗降口でお待ちください…」

列車を待っているリエとケンタ、そしてエリカ。
ケンタは妙にそわそわした様子で、頻りにホームの先を眺めている。
そのケンタの様子に微笑むエリカ。

エリカ
「ね、ケンタ君?」

ケンタ
「(慌てて振り向き)…エ、何?」

振り向いたケンタの頬が赤らんでいる。
ケンタの慌てぶりに微笑むエリカ。嬉しそうに。

エリカ
「ウン、あのね…また、ラピッド・スターに乗せてくれる?…もう一編乗りたいんだ、ラピッド・スターに。」

ケンタ
「(顔を輝かせ)ホント!?今さ、オレ、操縦の練習してるんだ。もう随分うまくなったんだゼ。」

自慢気なケンタ。と、悪戯っぽくリエが横から口を挟む。

リエ
「マ、墜落しない程度だけどネ。」

ケンタ
「(リエを睨み付け)姉ちゃんは黙ってろ!…(エリカを見て)…エリカさん、いいよ。ラピッド・スターにまた乗せてあげるからね。」

エリカ
「ウン!!」

嬉しそうなエリカ。

と、ホームに電子音が響く。視線を上げる一同。
ホームに滑り込んでくるリニア・モーターカー。

パノラミック・ウィンドーを持つ流線型の車体。
その車体が周囲の風景を映し込み、艶やかに輝いている…

ゆっくりとホームに進入してくる列車。

その脇で、ホームのデジタル時計が午後1時54分を指している…


〜 つづく 〜

~ 初出:1996.08.17 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009