SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(155L)
RE:380
警視庁羽田演習センター。
広い埋立地、滑走路跡のアスファルト。

表面に残る剥げたラインが、往時の空港の面影を残している…
滑走路の彼方、繁った葦の緑の先で、夏の海が遠く輝いている…

管理センター。
演習センターを一望するガラス張りのコントロール・タワー。

コンソールの前で、訓練を終えたらしいオオツカ警部と、センターのメカニック担当者が缶コーヒーを飲んでいる。

窓の外、滑走路の端に広がる葦原の緑を見ているオオツカ…

海風が一面の葦の緑に、時折、漣〔さざなみ〕を立ててゆく…

そのオオツカの様子に、メカニックが声を掛ける。

メカニック
「…まだ考えておられるんですか、彼らの事?」

オオツカ
「(気付き)…あ、済まん。…(視線を再び窓外に転ずる)…確かに、考えても仕方のない事かも知ない。しかし…」

メカニック
「…どうしようもない違いは確かにある…でも、それは仕方がない事でしょう?」

メカニックを見るオオツカ。

メカニック
「…かれらは所詮人間じゃない。それは私や、警部がいくら頑張ったって解決する事は出来ない問題です。…なら、それは現実としてけ入れなきゃいけないんじゃないですか?」

手にした缶コーヒーを飲み干すメカニック。
缶を手に、視線を窓の外に向ける…

メカニック
「…彼らは、新しい生き物なんですよ、きっと。今迄地球上に存在しなかったね…だったら、彼らには彼らなりの生き方が、きっとあるはずだって、思いますがね…」

オオツカ
「新しい、生き物、か…」

遥か遠い海のきらめきを見つめるオオツカ…

と、コンソールのコミュニケーション・システムが鳴り出す。

コンソールに歩み寄り、スイッチを入れるメカニック。
ディスプレイに現われるドクター・ジャンク!

メカニック
「(ハッとして)警部ッ!」

その声にディスプレイを見るオオツカ。
画面に映し出されたドクター・ジャンクが、不敵な笑みを浮かべている。

ジャンク
「…ロボット達の責任者はいらっしゃるかな?」

椅子から立上り、カメラの前へ踏み出す。

オオツカ
「ドクター、ジャンク…」

ジャンク
「(大げさに)…おお、これはこれは。やはり貴方でしたか。すっかり御無沙汰しておりましたな。」

オオツカ
「貴様…」

洋上軌道。
軌道上に静止しているリニア・モーターカー。

デッキ。
脱出しようとする乗客達。
先程から必死に、天井近くにあるドアの非常開閉ボタンを押し続けている。
しかし、全く反応しないスイッチ。

乗客A
「…ダメだ、全然効かない…」

乗客B
「…一体どうすりゃいい!窓も開かないし、自動運転で乗員もいないんだぞ!」

混乱する車内。その騒ぎを横目に、そっと通り過ぎるケンタ。
デッキの脇にあるトイレに入る。そっとドアを閉める。
ドアロックの表示が 『使用中 / OCCUPIED』 に変わる…

トイレの中。
便器に腰を降ろしたケンタ、ズボンのポケットからSFXボイジャーのコミュニケーターを取り出し、スイッチを入れる。

ケンタ
「こちらケンタ、こちらケンタ。誰か応答してくれッ!」

と、コミュニケーターからショウイチの声。

ショウイチ(声)
「…おお、ケンタどうした?迷子か?まったくなぁ、迷子でラピッド・スター呼ぶなよナ。今エマージェンシー・コールかかってるゾ。」

ケンタ
「(ムッとして)ナニ言ってんダ、父ちゃんは!…(思い出し)ア、大変なんだ!オレ達『ヒトチジ』になってるんダ!」

ショウイチ(声)
「『ヒトチジ』?…なんだソレ…それって人質だろ?」

ケンタ
「(頬を赤らめ)イイだろどっちだって!とにかくヒトジチなんダ!!」

ショウイチ(声)
「…分かった。とにかく状況を説明しなさい。」

ケンタ
「ウン。」

羽田演習センター。
ディスプレイのジャンクと対峙しているオオツカ…

オオツカ
「…お前は…お前は、そんな事の為に…」

ジャンク
「そんな事?…そんな事とは心外ですな。私にとっては実に重要な命題ですよ。」

オオツカ
「(睨み付け)ジャンク…」

ジャンク
「…有余は30分です、ミスター・オオツカ。今から30分後に、貴方と、そして貴方の親愛なる部下達の真価が、問われる事になる。(嘲る様に)貴方と部下達にとっては、その存在を世にアピールする、又とない舞台じゃないですか?アッハッハ!」

愉快そうに笑うジャンク。その映像が消える。

しばらく映像の消えたディスプレイを見つめているオオツカ…

メカニック
「警部…」

オオツカ
「(メカニックを見て)彼等のセットアップにどの位かかります?」

メカニック
「(力強くうなづき)まかせて下さい、3分で仕上げます!」

オオツカ
「頼みます!」

ハンディ・コミュニケーターを手に、部屋を駆け出してゆくメカニック。
その姿を見ながら、コミュニケーション・システムのスイッチを入れるオオツカ。

オオツカ
「ワンディム!」

リニア・モーターカー車内。
騒然とした車内。その中に不安気なミツル達の姿。

ミツルの母
「あなた、私達一体?…」

ミツルの父
「大丈夫、心配するな。警視庁のロボット・チームがきっと何とかしてくれる。(ミツルを見て)…そうだよな、ミツル?(明るく)何たって、ロボット・チームはミツルの友達なんだからな。」

その言葉にハッとした様に父親を見るミツル。

ミツル
「お父さん…」

微笑んでうなづく父親…

ミツル
「(力強くうなづき)ウン!」

視線を窓の外に向けるミツル。

ミツル(心の声)
「サーディー…」


〜 つづく 〜

~ 初出:1996.09.08 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009