SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(167L)
RE:385
リニア管制センター。
天井全体が間接照明となった広い室内。壁面全体に巨大な液晶ディスプレイが取り付けられ、リニア・モーターカーの路線図が映し出されている…

路線図の終端付近、洋上軌道上に停止している列車が表示されている。
ディスプレイ上にマークが点滅を繰り返している。
小さく電子音のアラームが鳴る…

ディスプレイの上を、列車のコントロールパネルからの情報が流れてゆく…

『 Speed: 0km/h Linear motor system: STOP
  System control signal: INACTIVE... 』

コミュニケーション・システムの呼出音が慌ただしく鳴り響いている室内…

メイン・コンソールを操作している係員。
先程から何度も列車のメイン・コントロールにリセット・シグナルを発信している。
しかし、ディスプレイ上に繰り返される『 NO ACCESS 』の列…

係員A
「…くそぉ、どうなってる…」

その後ろに心配そうな表情の別の係員。

係員B
「(覗き込み)…どうだ?」

係員A
「(ディスプレイを見つめたまま)ダメだ。こちらからのシグナルを全く受け付けない。」

係員B
「(怪訝そうに)受け付けない?そんなバカな。(ディスプレイを見て)…コントロールパネルからの情報はバックされて来てる。システムは生きてる筈だぞ。」

係員A
「しかし、実際受け付けないんだ!」

係員B
「…分かった…(考え)…仕方がない、軌道電源をカットしよう…」

係員A
「(係員Bを見上げ)…軌道電源を?」

係員B
「(うなづき)…そうだ。列車への電源供給を止める。うまく行けばこれでリセット出来る筈だ。」

係員A
「よし…やってみよう。」

メイン・コンソールを操作する係員。

コンソール画面。
幾つものパスワード入力項目に、次々に電源制御コードを入力して行く係員。
総ての項目に入力を終える。ディスプレイに軌道電源制御画面が表示される。

係員A
「(振り返り)電源を切断する。」

うなづく係員B…
係員Aがコンソールを操作し、軌道電源を切断する。

コンソール画面。
『 DISCONNECTION 』のディスプレイが点滅する…

係員A
「よし、軌道電源切断プロセスに入った。」

うなづく係員B。

ディスプレイ上をメッセージが流れて行く…


と、最後に小さなメッセージが点滅する。

『 Disconnection process: FAILED... 』

その表示にディスプレイを見つめていた係員達の表情が緊張を増す。

係員A
「…失敗した。…ダメだ、軌道電源もカットできない…」

係員B
「…バカな…これもダメなのか?…」

あまりの事態に呆然とする係員達…

と、鳴り続けていたコミュニケーション・システムのターミナル、一人の係員がようやくスイッチを入れる。

係員C
「(係員Bを見て)…ニシオカさん、テレコです。警察から。」

ニシオカ
「(係員Cを見て)…警察?」

係員C
「(うなづき)ええ、警視庁のオオツカさんって方です…」

怪訝そうな顔のニシオカ…

洋上軌道。
軌道上に静止している列車…

車内。
重苦しい沈黙が流れる車内。遠くで赤ん坊が不安気な泣き声を立てている…
座席に座っているケンタ達…
通路上のデジタル時計が14時27分を指している…

再びビデオグラスをかけているリエ。
ビデオグラスの内側にはラピッド・スターの現在位置がディスプレイされている。
洋上軌道目指して一直線に飛行しているラピッド・スター…
ビデオグラスを外す。

リエ
「(ケンタを見て)…あと4分で着くわ。」

ケンタ
「4分?…おそいなぁ、アイツならもっとスピード出せるはずなのに。」

リエ
「しょうがないじゃない、オートマチックなんだから。それより、ラピッド・スターが着いたら何とか乗り移らなきゃ。」

ケンタ
「ドアが開かないんダ。さっき非常用のボタン試してたけど、ダメだったみたい。』

リエ
「きっと非常用の開閉も別系統のコンピュータ制御なんだわ…(ケンタを見て)…できる?」

そのリエの視線に悪戯っぽい表情を浮かべるケンタ。

ケンタ
「シューリするのはムズカシイけど、コワすのはまかせろ!」

何時になく嬉しそうなケンタに苦笑するリエ。

リエ
「頼んだわよ。」

ケンタ
「ウン。」

その二人の会話を、驚いた様子で見ているエリカ。

エリカ
「…あの…リエさん…」

リエ
「(微笑み)大丈夫、あたし達に任せて。」

デッキ。
ドアの横、通路の壁面に設けられた点検用ハッチの蓋が外されている。
頭を突っ込んでいるケンタ。なにやらゴソゴソとやっている様子。
そのケンタの後ろでは、エリカが心配そうに覗き込んでいる。

エリカ
「だいじょぶなの、ケンタ君?こんなコトして…」

ケンタ
「(頭を突っ込んだまま)ダイジョーブ。全然オッケーだって!オレにまかせといてよ。こんなのアサメシ…まえ……くっそぉ…暗くって良く分かんないゾ!…コレか?…」

その瞬間、ハッチの奥でバチッ!という音と共に火花が散る!!

不安気な表情を浮かべるエリカ。

エリカ
「だいじょぶなの…ホントに?…」

ケンタ
「テヘヘ…」

と、その瞬間、ガクリというショックが伝わる。

ハッとするエリカ、ケンタ…
ハッチから身体を抜き、周囲を見るケンタ。

ケンタ
「列車が…動くぞ…」

思わずケンタにそっとすがるエリカ。

エリカ
「ケンタ君…」

車内。
ショックが伝わる。
ハッとして周囲を見るリエ。
周りでは乗客達に動揺が広がる…

遂にゆっくりと動き出す列車…


〜 つづく 〜

~ 初出:1996.09.21 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009