SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(172L)
RE:NON
ドグーに捕まえられたラピッド・スター。
全力でジェットを噴射する!凄まじい炎が噴射口から噴き出す!
しかし、ドグーの力は凄まじく、脱出する事が出来ない…
ラピッド・スターコクピット。
機体がミシミシと異様な悲鳴をあげる。機体の圧力センサーが、耐圧限界を警告するアラームをあげ続けている。
コンソールのモニターには、機体のセルフチェック・モニターが表示されている。
その画面のあちこちで
「Warning」の文字が点滅し、機体各部の圧力値がデジタル表示される。
リエ、更にエンジンの出力を上げる。
と、凄まじい炎が噴き上がり、機体に異常な振動が走る!必死に出力を上げようとするリエ。
リエ
「…もうちょっと…もうちょっとなのよ…お願い、ラピッド・スター、頑張って!!」
尚もエンジンの出力を高めようとするリエ、機体を震わせる異様な振動に、前部操縦席のケンタがあわてて振り返る。
ケンタ
「姉ちゃんやめろっ!こんな事したらユニットが爆発するっ!!」
リエ
「分かってるわよ!!でも、このままじゃ、あたし達!!」
ケンタ
「クソー、このままヤラれちゃうのかよお…」
コンソールのモニターに新たな警告表示が出る。点滅する警告表示!
『Warning : A driving system is superheat. 』
リエ
「…ユニットが、もう限界だわ…」
ケンタ
「(その言葉に一瞬ギクリとリエの顔を見る)……くそー…」
がっくりと首をうなだれるケンタ。
ドグー操縦席。
モニターで必死に脱出しようとするラピッド・スターの様子を見ているジャンク
とタバタ。
ジャンク
「無駄な事を…(タバタを見る)…エンジン最大出力!、フルパワーで一気に握り潰せっ!!」
タバタ
「かしこまりました…(脇のモニターを見る)…おや?…あれは?…いかん。」
一瞬何かに気を取られたタバタ、再び正面を向き、エンジン出力を徐々に高めて行く…。
それに伴ってドグーの手が徐々に握られて行く!
悲鳴を上げるラピッド・スターのボディ!!
ケンタ
「ウワーッ!!」
思わず目を閉じるリエ!!
突然、凄まじい振動が起こる!!機体各部の圧力が急激に減少する。
コミュニケーターから突然誰かの声がする。
声
「今よ、逃げてっ!!」
目を閉じていたリエ、その声に反射的にスロットルを引く!
再びラピッド・スターの噴射口からジェットの炎が勢い良く噴き上がる!
飛び出すラピッド・スター!
きりもみ状態になり、その翼で道路際のビルの一部を削り取りながらも、何とか上昇する!
バランスを失うドグー!頭からコミュニケーション・センタービルに突っ込む!
その重さに耐えきれず、センタービルが崩れ落ちる!
更に、屋上のデジタル通信アンテナの鉄塔が、ドグーの上に倒れかかる。
凄まじいスパークと土煙!
その背後、土煙の中に、何か大きな影が見える…
上空。
何とか体勢を立て直したラピッド・スター。
コクピット。
ケンタ
「(その影を指さす)姉ちゃん、アレ!…(その表情が輝く)…アース・ムーバーだっ!!」
土煙の中から姿を現す巨大な機体。日比谷通り上空に静止しているのはSFXボイジャーの大型輸送機、アース・ムーバーである。
ラピッド・スターのコクピット、コミュニケーターにユキコが映る。
ユキコ
「大丈夫、リエ?初めてなモンだから、発進に手間取っちゃって…」
リエ
「…お母さん…あたし…あたし…(泣き出す)…ありがとう、お母さん…」
その様子に胸がつまるユキコ。
ユキコ
「…リエ……(笑顔で)よく頑張ったわね、2人共。」
ケンタ
「母ちゃん、遅いゾ。もうちょっとでオレ達、センベイになるとこダゾ!親としてどう考えてるんダ!?」
妙に憤慨しているケンタ。
アース・ムーバーコクピット。
その様子に苦笑いのユキコ。
ユキコ
「ゴメン、ゴメン。でも、もう大丈夫だからね。」
と、コミュニケーターの受信音が鳴る。モニターを切り替えるユキコ。
画面に映るショウイチ。
ショウイチ
「間にあってくれたか…だけど、あんまりハデに暴れるなよ…いきなり体当りなんて、機体が壊れたらどうするんだ!初飛行でいきなりスクラップじゃ目も当てられん!」
ユキコ
「だって、この場合こうするしかないじゃない!それともあなた、何か他に方法があるって言うのっ!?」
いきなり突っ込まれてタジタジとするショウイチ。
ショウイチ
「あ…いや…その…(むりに笑顔をつくるが、どこかひきつった笑い)…すぐランド・チャレンジャーを降ろしてくれ。」
ユキコ
「(憤慨して)リョーカイッ!」
ドグーのコクピット。ヨロヨロと起き上がるジャンクとタバタ。
ジャンク
「…タバタ!貴様、何でアイツの接近に気がつかんのだっ!?」
タバタ
「決してその様な事は…ただ、ニホンの古いコトワザに『二兎を追う者は一兎も得ず』というのがございまして…」
ジャンク
「成る程、それでお前はそのコトワザ通り…」
タバタ
「(誇らしげに)ハイ!この場合、掌中の飛行機を握り潰す方が先だと、私めの心の声が、私にささやいたのでございます。」
ジャンク
「(皮肉に満ちて)…そうか、素晴らしい…心の声だなあ…(拳を震わせる)」
タバタ
「(明るく)ハイ、ありがとうございます、旦那様!」
ジャンク
「このバカタレーッ!!お前の頭はどんな構造しておるんじゃ!!」
遂に怒りを爆発させるドクター・ジャンク!
その余りの怒り方に恐れをなすタバタ。
タバタ
「ひい〜っ!お許し下さいっ!!」
ジャンク
「状況判断という言葉が、お前の辞書にはないのかっ!!…すぐ体勢を立て直せっ!!……それにしても、あんなメカまで作っておったとは…ゲンザブロウめ!…(タバタを見て)…何をしてる?早くしろッ!!」
日比谷通り。
増上寺の本殿、その大きな瓦屋根をかすめながら、轟音と共にアース・ムーバーがゆっくりと移動して来る。通りの上で徐々に垂直降下を始める。
やって来るタナカ鉄工所のトラック。
道路脇で停まり、ゲンザブロウとショウイチが降りる。
降下して来るアース・ムーバーを見上げる2人。
道路すれすれ迄降下したアース・ムーバー。
その機体下面で、一斉にロックが外れる。轟音を立てて、道路に巨大な装甲車が降り立つ!道路2車線を塞いでしまう程の巨体である。
ショウイチ
「あ、コラ!…乱暴だなあ。もっと静かに降ろせないのか?」
ゲンザブロウ
「(ショウイチを見て)…お前、また何か余計な事を言ったな?ユキコさん、ご機嫌斜めじゃぞ。…全く、気の利かん奴じゃ。」
ショウイチ
「いやだなあ、お父さんそんな事ありませんって…さあ、乗りましょう、急いで急いで!」
ゲンザブロウの背中を押し、あたふたとランド・チャレンジャーに向うショウイチ。
ゲンザブロウ
「図星じゃな…」
ランド・チャレンジャーに乗り込む2人。
ドグーの操縦席。
正面のモニタースクリーンに、ランド・チャレンジャーの巨体が映る!
その様子に驚愕するドクター・ジャンク。
ジャンク
「…あれは…何だ…(その顔に怒りが込み上げる)おのれーっ!あんなモノまでっ!!タバタ、パワーサプライの70%をビーム回路に接続、ビーム砲最大出力っ!!」
〜 つづく 〜
~ 初出:1994.05.04 Nifty Serve 特撮フォーラム ~