SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(173L)
RE:033
ドグー操縦席。
コンソールのキーボードを操作するタバタ。モニターのパワーゲージ、そのエネルギーレベルが大きく変動し、ビーム発生回路にエネルギーが集中して行く。

モニターのデジタルインジケーターが徐々に上昇、やがて70を示す。

タバタ
「(ジャンクを見て)…旦那様、エネルギー・コントローラーの調整が完了致しました…最大出力での発射が可能でございます…」

道路上のドグー、その目の輝きが徐々に暗くなり、凄まじい轟音を上げていた飛行用エンジンも出力が落ちる。微かなエンジンの音を除くと、辺りは不思議な沈黙に包まれる。

ジャンク
「ビーム・ジェネレーター、エネルギー・コンデンス開始。」

その言葉を受けて、タバタがキーボードを操作する。
ドグーの口、ビーム砲が徐々に光を発し始める。

タバタ
「…エネルギー・コンデンス、55…60…65……」

数値を読み上げ続けるタバタ。
そのタバタの声を聞きながら、ドクター・ジャンクは考える。

ジャンク(心の声)
「…しかし、再びこんな形で対決しようとは…皮肉なものだな、ゲンザブロウ…」

ランド・チャレンジャー操縦席。

ショウイチ
「(モニターに映るドグーの様子を見て)…お父さん、ロボットの様子が…」

ゲンザブロウ
「(モニターを見る)…奴め、最大級のビームでこちらを攻撃するつもりじゃな…(ショウイチを見て)…準備は良いな?チャンスは一瞬、一度きりじゃぞ!」

ショウイチ
「分かってますよ、お父さん。私にまかせて下さい。」

操縦席。
コンソールのスイッチに手を置きながら、真剣な表情でモニターを注視するショウイチ。

ドグーの操縦席。
タバタが数値を読み上げ続ける…

タバタ
「…95…100!エネルギー・コンデンス完了致しました!」

その言葉に、稲妻の様に反応するジャンク!

ジャンク
「…私の勝ちだ、ゲンザブロウ!!」

思いきりビーム発射スイッチを叩き込む!

ドグーの口、ビーム発生システムが凄まじい白光をあげ、周囲の空気が高熱に歪む!強烈な光を発し、最大級のビームがランド・チャレンジャー目がけて発射される!

その瞬間、ランド・チャレンジャーの前面に光の壁が出現!その壁の表面、ドグーのビームが凄まじい白光を上げて拡散する!!

ランド・チャレンジャーの巨体が衝撃でズズッと押し戻される!
周囲の空気がビームの発する高熱で渦を巻き、辺りに旋風が巻き起こる!!

ジャンク
「何ッ!?」

衝撃に襲われるランド・チャレンジャーの操縦席。
必死にそれをこらえるゲンザブロウとショウイチ。

ゲンザブロウ
「…ショウイチ、今じゃ!!」

ショウイチ
「リョーカイッ!!」

ビームを受け止めるや否や、バリアーをカット、殆ど同時にドグーに向けてボディ上面の2連装砲を連射する!!

光弾はドグーの口に命中!ビーム発生システムが轟音を立てて吹き飛ぶ!!

そのまま真後ろにひっくり返るドグー!!

上空、ホバリングを続けるラピッド・スターとアース・ムーバー。
ラピッド・スターのコクピットでは、ケンタがその様子に歓声をあげる!

ケンタ
「やったぞ、すっげ〜っ!!いいぞ父ちゃん!!姉ちゃん見ろよ…」

後部操縦席のリエを振り返るケンタ。何時になくおとなしいリエ。

ケンタ
「(リエを見る)姉ちゃん…らしくないぞ(一瞬、同情する様な表情を見せる)…(ニャンコを抱き上げ、見る。小声でささやく)…ニャンコ、イケっ、姉ちゃんを攻撃だ。」

ケンタを見て一声鳴くニャンコ。

ケンタ
「(ニャンコを見て)ヨシ!…(リエを見て)…姉ちゃん!」

ぼんやりしていたリエ、その声にケンタを見る。
その途端、リエに向ってニャンコを放るケンタ!

リエ
「あ、チョットやめなさいってば!!(ニャンコがしがみつく)…あ、コラくすぐったいわよニャンコ!…クッ…アハハハ。」

しがみつくニャンコ。
落ちては大変と、懸命にリエの首筋に這いあがる。

くすぐったさの余り、遂に笑い出してしまうリエ。
それを見て悪戯っぽく笑うケンタ。

ケンタ
「ヘヘエ、姉ちゃん、元気出た?」

リエ
「(ケンタを見て微笑む)…ケンタ、コイツめ〜……(明るく)もう大丈夫よ。(ニャンコを見て)…ニャンコもありがとう。」

リエに頭を撫でられ、満足気な表情のニャンコ。

日比谷通り。
ランド・チャレンジャーがドグーに向ってゆっくりと前進を開始する。
ひっくり返ったドグー、頭から煙を吹きながらも、背中の飛行用エンジンを噴射して起き上がる。

ランド・チャレンジャー操縦席。

ショウイチ
「『エア・ハードナー』を使いましょう!奴の動きを封じます!」

ゲンザブロウ
「(うなずく)おお、奴の脚と、あの厄介な腕を狙うんじゃ!ロボットめ、地面にくっつけてやるぞ!…奴の脚が地面に付いた時がチャンスじゃ…」

うなずくショウイチ。コンソールのスイッチを入れる。

前進していたランド・チャレンジャーがゆっくりと停止、ボディ上面から6連の多装填ランチャーが出る。

操縦席のショウイチ、脇のモニターを見る。
6分割された画面で、一度に照準を合わせる。自動追尾モードにセットする。

ショウイチ
「オート・トレーサー、セット完了です。」

ゲンザブロウ
「よし、チャンスを待て…」

緊張の空気が流れる操縦席。ゲンザブロウ、ショウイチ。
上空のアース・ムーバー、ユキコ。
ラピッド・スター、ケンタ、そしてリエ…

皆、それぞれの想いで、事の成行きを固唾を飲んで見守っている…

再びランド・チャレンジャー操縦席。ショウイチがモニターを注視している。
発射ボタンの上に置かれた手が、落ち着かなく動いている…

ドグー操縦席。
機内には機体の損傷を知らせるアラームが鳴り響いている。

ジャンク
「タバタ、機体の損害状況は?」

コンソールをチェックするタバタ。

タバタ
「ビーム発生機構が破壊しております。…エネルギー・ユニットにも異常、出力が約半分に低下しておりますが…」

モニターのランド・チャレンジャーを見つめるジャンク。

ジャンク
「…さすがはゲンザブロウ…ウィーン時代の研究を、あそこまで完成させておったとは…だが、まだ負けた訳ではないっ!タバタ、そのまま前進、あのメカを叩き潰せっ!!」

タバタ
「かしこまりました…」

コンソールを操作するタバタ、ドグーのジェット噴射が止まり、その脚が大地に付く。その瞬間!!

ゲンザブロウ
「今じゃ!!」

反射的にボタンを押すショウイチ!

ランド・チャレンジャーの6連装多装填ランチャーが一斉に火を噴き、何かカプセル状の物体が発射される!

カプセルはドグーの脚と両手の部分で炸裂!
中から青い粘り気のある、接着剤の様な物質が飛び散る!!

ドグーのボディに付着した物質は、空気と激しく反応し、煙を噴き上げる!
あっと言う間に物質の色が赤く変わり、硬化する!!
地面に固着してしまうドグー!!

操縦席。予期しない状況に慌てるタバタ。

タバタ
「旦那様、全く動けなくなりました!」

ジャンク
「(驚く)…エア・ハードナー…しかも、あの頃とは比較にならん程改良されている……(決意を固める)こうなれば、せめてトーキョー・タワーをこのドグーの道連れにしてやるっ!(タバタを見て)…カプセル脱出準備!我々の脱出後、ドグーの胸部ユニットをリモートコントロールでトーキョー・タワーにぶつけるのだ!!」

タバタ
「かしこまりました…」

ジャンク
「見ておれ…」  


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.05.07 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018