SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(180L)
RE:117
上空。
ラピッド・スターコクピット。

ジャンクの脱出カプセルが凄まじいスピードで空を駆け登って行く!

ケンタ
「姉ちゃん、ジャンクが逃げるっ!!」

リエ
「行くわよ、ケンタ!アイツを捕まえるのよ!」

ケンタ
「うん!!」

ドライビング・システムを切り替え、高速飛行体勢を取ろうとするリエ。
その時、コミュニケーターからショウイチの声。

ショウイチ
「二人とも待てっ!!下を見てみろっ!!」

その声に下を見る2人。ドグーの胴体部分がゆっくりと飛行している。

リエ
「ロボットの胴体が!…(モニターを見て)…お父さん!」

ショウイチ
「アイツはトーキョー・タワーに突っ込むつもりだ!頼む、何とか阻止してくれっ!!」

リエ
「分かった、やってみる!!…(ケンタを見る)…頼んだわよ!」

ケンタ
「まかせろっ!!」

コミュニケーターが鳴り、モニターにユキコが出る。

ユキコ
「リエ、私がアイツの動きを止めるわ、だからその隙にロボットの飛行用エンジンを!!」

リエ
「うん!!」

高度を取るべくエンジンを全開し、上昇するラピッド・スター。

一方アース・ムーバーは、その巨体をゆっくりと降下させ、ロボットの後ろに回り込む。

轟音を立て、エンジンから凄まじい炎を噴き上げながら、タワーめがけてゆっくりと移動を続ける胴体。

アース・ムーバーの機首部分、小さなハッチが4箇所で開く。
一斉にワイヤーのついた小型ミサイルを発射!ロボットのジョイント部分の外装を突き破る!

ロボットの内部。
打ち込まれた小型ミサイルの頭部が開き、鍵型の固定アームが出る。

アース・ムーバー、コクピット。

ユキコ
「うまくいったわ…逆進ドライブスタート、出力最大!」

操縦席横のスロットルを思いきり引くユキコ。

アース・ムーバーの機体。
逆進用ジェットノズルからジェットの炎が噴き上がる。
ワイヤーが思いきり伸び、ロボットの胴体を引き留める!

しかし、ロボットの力は強く、ゆっくりと、アース・ムーバーの機体を引きずり始める!

ユキコ
「凄い力だわ…(モニターを見る)…リエ、急いで!余り長い間引き留めておけないわ!」

上空、急上昇したラピッド・スター。

リエ
「待ってて、お母さん…(ケンタを見て)…準備いい?」

ケンタ、ニャンコを自分のジャンパーの中に入れる。
ジャンパーの胸元から首だけ出しているニャンコ。
センサー・グラブに腕を通す。

ケンタ
「(ニャンコを見て)大丈夫、オレがついてる…いいぞ!、行こう!!」

リエ
「行くわよーッ!!」

操縦捍を思いきり前に倒すリエ。
ラピッド・スターがその機首を殆ど垂直に、上空から稲妻の様に急降下する!!

そのままドグーの飛行用エンジンに、思いきりパンチを叩き込む!!
エンジンが大きく陥没、次の瞬間、巨大な火柱を噴き上げ、爆発するエンジン!

その炎をかい潜り、ラピッド・スターが上昇する!

ケンタ
「姉ちゃん、やったぜ!!みたか、オレの実力!!」

おどけてガッツポーズを取るケンタ。それを微笑みながら見つめるリエ。

リエ
「うん!!」

エンジンを失った胴体は徐々に高度を下げ始める。
アース・ムーバーは逆噴射を続けながら、その降下速度を減少させる。

そのまま、芝公園の林の中に突っ込む胴体!
土砂と樹が舞い上がり、巨大な土煙があがる!!

ランド・チャレンジャー操縦席。この様子に大喜びのショウイチ。

ショウイチ
「やった、やったーっ!!偉いぞ皆んな!良くやったぞ!」

その横で、ゲンザブロウはモニターを見つめ、物思いにふけっている…

上空のユキコ、ロボットの胴体を見ている。

まだそのエンジンは火災を起こし、炎が噴き上がっている。
機体下部から消火剤を投下、火を消すアース・ムーバー。

ラピッド・スター。大喜びのケンタと穏やかな表情のリエ。

ロボットの胴体から微かに煙が立ち上る…

朝。

タナカ家では、今日もいつもと変わらぬ一日が始まっていた。

戦場の様なタナカ家の朝食現場!
リエとケンタが大慌てで居間のちゃぶ台に突進してくる!

ケンタ
「遅刻だよ姉ちゃん!何で起こしてくんないんダ!」

リエ
「こっちだって、ゆうべ遅くて疲れてるんだからネッ!自分の面倒位自分で見ろッ!!…あと2分!!」

ユキコが味噌汁のお椀を持って入って来る。

ケンタ
「(ユキコを見て)アッ、母ちゃん!起きてるんなら起こせヨ!かわいい息子が学校でハジかいてもヘイキなのか、ユキコは!?」

ユキコ
「(平然と)人生はキビシイんだぞ、ケンタ?自分の事は自分でする!」

ケンタ
「ヒデーなあ、ヒコーはココから始まるんだからナ!」

ユキコ
「(ケンタの頭をたたく)ワケ分かんない事言ってると、時間切れだゾ!…ハイ、あと1分20秒!」

ケンタ
「(時計を見て)イケネッ!!」

猛烈な勢いでご飯をかき込む2人!
食べ終るやいなや玄関に向ってダッシュする!

リエ/ケンタ
「行ってきま〜すっ!!」

ユキコ
「ハイ、いってらっしゃい。」

二人の後ろ姿を見送りながら、腰に手を当て、ため息をつくユキコ。

いつもと変わらぬ朝を迎えている東京の街…

警視庁。
慌ただしい室内。その片隅にある科学捜査1課。

オオツカ警部の机一つだけの捜査課である。

オオツカ警部のデスク。
山の様に積まれた調書をめくっている警部。

机の上のテレ・コミュニケーション・システムが鳴る。応答ボタンを押す警部。
そこにはサエキ警視総監の姿が!

オオツカ
「総監!…一体私にどの様な…」

サエキ
「ちょっと話しがある、裏の駐車場まで来てくれんか?」

オオツカ
「はぁ…駐車場、ですか…」

駐車場。
オオツカ警部が出てくる。待っているサエキ総監。

サエキ
「試験的に作った科学捜査1課だが、今回の事件をきっかけに正式な捜査課として発足させたいと思う。ついては、君に3名の部下を預かって欲しいのだが…」

オオツカ
「はあ、それはかまいませんが…」

怪訝そうな表情のオオツカ。と駐車場の片隅に3体のロボット機動隊が!

オオツカ
「総監、彼等は!?」

サエキ
「(うなずく)今まで、私の直属だったのだが…彼等からの、たっての希望でな。ぜひ君の指揮を仰ぎたいと…」

ロボット機動隊を見上げるオオツカ。リーダー機が声をかける。

リーダー機
「…警部、お願いします!…トゥースやサーディーとも話したのですが…我々がこの先、一人前のロボットとして成長して行くには、人間と同じ様に、様々な人達との出会いが必要だと分かったのです。その中での様々な経験によって初めて、我々は成長する事ができると。何の関係もないロボットを、命をかけて救う…そんな素晴らしい何かを、私達は貴方から学びたいのです。」

オオツカ
「…生意気言いやがって…ま、そんな大した人間じゃないから、きっとガッカリするだろうけどな。」

リーダー機
「それでは、警部?」

オオツカ
「面倒見てやるよ、3人まとめてな。…ヨロシク頼むぞ!」

カメラ・ヘッドを見合わせる3機。
オオツカを見て腕をあげ、敬礼する様な仕草をする。

ロボット達
「よろしくお願いします!」

朝の薄もやが、彼等を包んでいた…



この章終り

~ 初出:1994.05.08 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018