SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(195L)
RE:743
東京湾の海中…

ジャンクのコウモリ・ロボットが海中をやって来る。
トゥースのアーム・バルカンを受けた右翼から、気泡が立ちのぼっている。

ぼんやりと濁った海中を行くロボット。
やがて、その前方に大きな影が姿を現す。

前方に静止しているのはドクター・ジャンクの大型潜水母艦、ブラウザスである。

ロボットの機内。
コクピットのジャンクとタバタ。

タバタのシートの横には、奪われたマックスベリー・システムのメタルケースが置かれている。

ジャンク
「(タバタを見て)…ケースを。」

タバタ
「はい…(ケースをジャンクに渡す)」

ケースを受け取るジャンク。パチンを大きな音をさせ、ケースの止め金を開く。
ゆっくりとケースの蓋を開く。
中から姿を現すマックスベリー・システム。

薄暗いコクピットの中、周囲のモニターや、パイロットランプの瞬きを映し、システムの中心にある巨大なラッセル管が、神秘的な輝きを発している…

思わずその繊細な美しさに見とれるジャンク。

ジャンク
「…ほほお、これは美しい…あんな俗物が生み出したとは思えん、繊細なメカニズムだ…(細部を凝視する)…成る程、接続はオプティックデジタル・インターフェースか…これならば『メタモール』との接続、 造作もない…」

不気味な笑みを浮かべるジャンク。

タバタ
「…旦那様。ブラウザス、着艦待機中です。」

マックスベリーを見つめていたジャンク、その声に前方のモニター・スクリーンを見る。海中に静止しているブラウザス、その船体の前方下部がゆっくりと開き、着艦用のデッキが現われる。

ジャンク
「よし、着艦しろ。着艦後、直ちにメタモールにマックスベリーを搭載する作業にかかる。」

タバタ
「かしこまりました…」

速度を落すロボット。
ゆっくりとブラウザスの着艦デッキに吸い込まれて行く…

発着ポート。
事件後の現場調査が行われ、慌ただしい雰囲気の発着ポート。
ポート周辺のあちこちにロープが張られ、検証が行われている。

警備に当っているワンディム。
と、発着ポートの入口から一人の少女が出てくるのを見つける。

ワンディム
「申し訳ありませんが、お嬢さん。現場検証が終了するまで、乗客の皆さんには外出を控えて頂いているのですが。」

ベースボール・キャップを目深にかぶった少女、その声にワンディムをまぶしげに見上げる。

少女
「あら?随分ひどい事言うのね、ロボットさん?」

ワンディム
「ひどい?…おっしゃる意味が良く分かりませんが。これは事件の捜査上やむを得ない措置で、論理的な判断に基づくものだと思います。事件の早期解決を図るために、ご協力をお願いします。」

少女
「…クッ、フフフフフ(懸命に笑いをこらえる)…」

ワンディム
「(とまどう様に)…?私の答えが、何かおかしかったですか?」

少女
「…ククッ…あら、ごめんなさい…決してあなたをバカにした訳じゃないのよ。…ただ、あんまり真面目な答え方なんですもの。」

ワンディム
「(ちょっと悲しげに)…すみません…もう少し気の利いた答えが出来れば良いのですが…」

少女
「…(微笑む)…そんな事ないわよ。とても紳士的だわ、ロボットさん。…(少し憤慨した様子で)…でも、折角日本に来たのに、どこにも行けないなんて、ひどい事だと思わない?」

ワンディム
「(困って)…同情は致しますが…」

その言葉を聞くや、にっこりと笑う少女。

少女
「ホント!?さすがはロボットさんだわ!じゃあ外出、許して下さるわね!」

ワンディムの横をすり抜け、駆け出して行ってしまう。
少し行った処でワンディムを振り返り、嬉しそうに手を振る少女。

ワンディム
「あ、困ります!……まいったなぁ、警部に何て報告したら良いんだろう?…(考える)…しかし、彼女の顔は既に認識している。…誰だろう?…」

メモリーバンクにアクセスするワンディム。

メモリーイメージ。
右半分に先程の、ベースボール・キャップをかぶった少女の録画映像。
スキャンサーチ。早送りで映像が流れる。

正面を向いたところで映像が静止する。
映像がスキャンされ、イメージを認識する。

画面左側に、ワンディムの認識している人物のデータイメージ。
超高速で認識する。パラパラとカードをめくる様に人物の顔が次々に変わる。

一人の少女の写真が現われる。イメージ下にデータが表示される。
エリカ・ハミルトンの名前が表示される。

ワンディム
「彼女、エリカ・ハミルトンだったのか…」

少女の駆けて行った方向を見つめるワンディム。

なぎさシティ、ターミナル・ステーション。
駅前広場に続く広い階段。人々の中にリエとケンタの姿もある。

しかし、駅前広場は、B.O.C.歓迎の華やかな飾り付けにも関わらず、異様に警官の姿が多い。
駅前のメインストリートには頻りにパトカーが行き交っている。

そのただならぬ雰囲気に、不安気な表情でそれを見守る人々。

リエ
「…一体どうしたのかしら?パトカーがあんなに…」

リエもその物々しい雰囲気に少し不安気な様子。

しかしケンタは、シティ上空にその巨大な機体を輝かせているB.O.C.に、すっかり心を奪われている。

ケンタ
「(B.O.C.を指さし)…見て!すげーなぁ…アース・ムーバーよりずっと大きいや…(リエを見て)…早く行こうよ!」

リエ
「エッ?…そうね、行きましょ。」

歩き出す二人。
広いメインストリートは、先程の事件で退避してきた人々が大勢、駅へ向って歩いている。

ケンタ
「もう終っちゃったのかなぁ、発着ポートの見学会…」

少し不安そうな表情のケンタ。
二人は人々の流れとは反対に、ポートの方向に歩いて行く。

と、歩道の隅にいた、ベースボール・キャップをかぶった少女に声をかけられる。
エリカ・ハミルトンである。

エリカ
「…あの、すみませんが、ニホンバシへは、どう行ったら良いんでしょうか?…」

突然の呼びかけに驚いてエリカを見る二人。
二人を見て、エリカはにっこりと微笑む。

エリカ
「…ママのママが住んでるの、ニホンバシには…」

リエ
「…あなた、ひょっとして、エリカ…エリカ・ハミルトン!?」

驚くリエに、エリカは自分の口の前に人指し指を近付け、静かにする様にジェスチャーする。

エリカ
「お願い、騒がないで。…今は騒がれたくないの…」

エリカは二人をメインストリートから一本入った、人通りの少ない道へうながす。

リエ
「一体どうしたの?あなた、ブライトネス・オブ・クラウドに乗ってたんじゃなかったの?」

エリカ
「…(うなずく)…」

リエ
「じゃ、どうしてこんなところに?」

エリカ
「飛行船での生活に飽き飽きしちゃって…それに折角ママの故郷に来たっていうのに、自由に外にも出られないんですもの。」

さっきから二人のやり取りを呆然と聞いていたケンタ、憧れのエリカを前に、声も出ない。エリカ、そんなケンタの様子を見て、にっこりと微笑む。

エリカ
「はじめまして。」

手を差し出すエリカ。
しかしケンタ、どうして良いか分からず、モジモジするばかり。

ケンタ
「……アノ…」

みかねたリエ、助け船を出す。

リエ
「エリカさん、紹介が遅れちゃったけど、私はタナカ・リエ。そしてこちらが弟のケンタ。ケンタは貴方の大ファンなのよ。」

その言葉に顔を真っ赤にするケンタ。

ケンタ
「(リエを見て)姉ちゃん、余計な事言うなよ!…」

だが、それを言い終わるか終らないかの内に、エリカは微笑みながらケンタの手をとって握手する。

エリカ
「(うなずき)…嬉しいわ、ケンタ君。よろしくね。」

ケンタ
「(モジモジと)……よろしく。」

握手する二人。ようやくにっこりと微笑むケンタ…

と、その時、彼方から不思議な咆哮が聴こえてくる。
或る種、獣の様な聞いた事もない不思議な声。

と、同時に、規則的な地鳴りの様な音が辺りに響く…
不安気に音の方向を見る3人。

ケンタ
「何だろう…」

と、メインストリートの反対側で、大音響と共に土煙があがり、ビルが崩れ落ちる。
ビルの影から姿を現したのは、何と巨大な肉食恐竜である!

大混乱に陥るなぎさシティ。その信じられない光景に驚愕する3人。

リエ
「恐竜!?…これは…本当に起こっている事なの!?」

ナレーション
「突如、なぎさシティに出現した巨大な恐竜!一体この恐竜は!?」


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.06.05 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018