SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(180L)
RE:955
なぎさシティ。

ナレーション
「突如出現した巨大な肉食恐竜のために、東京湾上に建設された洋上未来都市『なぎさシティ』は大混乱に陥っていた…」

ビルの影からゆっくりと、恐竜の巨大な頭部が姿を現す。
何と体高50mはあろうかという大きさである。

恐竜が歩く度、地鳴りの様な音と共に、その足元のアスファルトにヒビが入る。
その足元、まるで蜘蛛の子を散らす様に、人々が逃げまどう。

恐竜は歩きながら、その太い尾を道路脇のビルに叩き付ける!
全面ガラス張りの近代的なビル、その凄まじい力に巨大な反射ガラスの壁面が吹き飛び、道路に面した側がガラガラと崩れ落ちる。

凄まじい声で咆哮をあげる恐竜。
その異様な声が、辺りのビルの窓ガラスを震わせる。
鳴き声をあげる度、鋭い牙が、大きく開かれたその口の中から現われる…

先程までB.O.C.の寄港歓迎イベントが行われていた広場。
避難の混乱で、辺りは雑然とした状況になっている。
広場の周囲の樹木をなぎ倒しながら、恐竜がゆっくりと広場の中に進んでくる。

イベントステージ背後、B.O.C.の大きな模型を飾り付けた看板が、メキメキと音を立てて倒れる…

発着ポート。
現場検証に立ち会っているオオツカ、と、警官が駆け寄ってくる。
敬礼する警官。

警官
「警部ッ、中央広場付近に突然恐竜が出現したとの連絡が入りました!」

パトカーのボンネットに携帯用コンピュータを乗せ、記録を打っていた警部、その突拍子もない報告に、その警官の顔をしげしげと眺める。

オオツカ
「…恐竜?…(警官を見て)…まさか。」

再びコンピュータのディスプレイに向う警部。

警官
「警部、冗談ではありません!」

その時、辺り一面に不思議な咆哮が轟く!周囲のビルの窓ガラスが、その低周波のうなりにビリビリと震える。周囲の警官達も何事かと空を見上げる。

オオツカ
「(空を見上げ)…ホントに恐竜なのか?…」

ボンネットに広げていた携帯用コンピュータを、ハンカチの様に4つに畳み込む
と、上着のポケットに入れる。
腕のコミュニケーターでワンディムを呼ぶ。

オオツカ
「ワンディム!」

ワンディム(声)
「…はい、こちらワンディムです。」

オオツカ
「今の音を聞いたか?」

ワンディム(声)
「はい、聞きました。」

オオツカ
「何の音だ?分かるか?」

ワンディム(声)
「…それが、私のメモリーバンクには登録されていません。波形からすると、獣の鳴き声に近いものの様ですが…」

オオツカ
「…獣の…(考える)…分かった。お前達は全員、戦闘体勢をとり、中央広場に向ってくれ。恐竜が出現したとの報告が入った。私もすぐに行く。」

ワンディム(声)
「了解!」

コミュニケーターを切る。

オオツカ
「一体どうなってるんだ……」

メインストリート脇のビル。
ビルの影に身を隠したリエ、ケンタ、エリカの3人。恐竜の様子を伺っている。

3人が隠れているビルのすぐ前を、恐竜の巨大な脚が通り過ぎる。
息を殺して恐竜の様子を見守る3人。

ケンタ
「…やっぱり、あの恐竜何かヘンだ…」

リエ
「…変って、何が?そりゃ、現代に恐竜が生きてる事自体変じゃない。」

ケンタ
「(憤慨して)…違うってば!…(恐竜を見つめる)…あの恐竜はティラノサウルスにそっくりだ。でも、ティラノサウルスはせいぜい15m位の大きさしかなかった筈なんだ。あの恐竜は姿はそっくりだけど、50mはある…それに…見て!」

恐竜を指さすケンタ。一瞬恐竜の体が、まるで、テレビの映像が乱れる様に歪む。

リエ
「…本当だわ……(考える)…もしかして、あの恐竜。」

ケンタ
「(リエを見てうなずく)…姉ちゃん!」

ケンタを見てうなずくリエ。
ケンタもそれにうなずいて応え、駆け出して行く。

エリカ
「あっ!ケンタ君、どこ行くの!?危ないわよ!!」

ケンタを追いかけようとするエリカ。それをリエが引き留める。

リエ
「(呆れた様に)…ケンタ、トイレに行きたくなったんですって。」

エリカ
「……トイレ…」

メインストリート。
ロボット・チームがパトライトを点滅させながら到着する。
背中の対戦車バズーカがゆっくりとせり上がり、恐竜に向けてセットされる。

トゥース
「恐竜だ…本当なんでしょうか?これは…」

ワンディム
「…信じられん…(サーディーを見て)サーディー、奴をスキャンしてみてくれ。本物かどうか確かめたい。」

サーディー
「了解!」

サーディーのボディから、センサーシステムが現われる。
サーディーのモニターイメージ。
恐竜をスキャンするが、一面のノイズ。全くスキャンできない。

サーディー
「スキャン不能です!どうやら、あの恐竜の周囲には特殊なフィールドが形成されている様です。」

ワンディム
「特殊なフィールド…一体奴は生物なのか?…」

咆哮をあげる恐竜…

メインストリート。
オオツカ警部のパトカーがやってくる。
パトカーのドアを跳ね上げ、警部が降りる。

ふと、脇の歩道を見る。
走って行くケンタを見つける。

オオツカ
「坊や、危ない!そっちは危険だ!!」

ケンタを追いかけるオオツカ。

ビルの影。
ケンタが腕のコミュニケーターで交信しようとしている。

と、突然後ろから誰かに肩を掴まれる!
ハッとして振り返るケンタ。

オオツカ警部である。

オオツカ
「坊や、危ないじゃないか?…(ケンタの腕のコミュニケーターに目をやる)…ん?何だね、それは?ここで何をしてるんだ?」

ケンタ
「…ちょっとトイレに行きたくなっちゃって…」

オオツカ
「トイレ?…(ケンタの腕を掴む)…コイツはコミュニケーターだね。一体どこに連絡しようとしていたんだい?…(ケンタの顔を見る。ハッとする)…君は、もしかして映像保存センターの時の…」

一瞬、オオツカの脳裏に映像保存センターで、ラピッド・スターのコクピットに乗ったケンタのイメージが浮かぶ。

オオツカに詰問され、返答に窮するケンタ。
その時、オオツカのコミュニケーターに呼び出し音が鳴る。

一瞬それに気を取られるオオツカ。

その瞬間、ケンタ、オオツカの向こう脛を思いきり蹴飛ばす!
余りの痛さにケンタの腕を離し、脚を押さえてうずくまるオオツカ。

ケンタ
「…ごめんなさい!!」

駆け出して行くケンタ。

オオツカ
「…コラ、どこへ行く!待ちなさい!!…痛ッて〜ッ!!」

ビルの影。
オオツカから何とか逃げ出したケンタが走って来る。
ビルの影に入ると背後を今来た道を振り返り、追っ手が来ないことを確かめる。

肩で息をするケンタ。
コミュニケーターで鉄工所を呼び出す。

ケンタ
「…こちら…ケンタ。…母ちゃん…母ちゃん!」

ユキコ(声)
「…どうしたのケンタ?そんなに息を切らせて?」

ケンタ
「…大変…なんだ…なぎさシティに恐竜が!」

ユキコ(声)
「恐竜?何バカな事言ってんのよ!」

ケンタ
「本当だってば!…すぐに出動して!!」

ケンタの真剣な声に、それが本当である事を直感するユキコ。

ユキコ(声)
「本当なのね…分かったわ!ロケーション・シグナルを発進してお
       いて。すぐ行くわ!」

ケンタ
「うん!」

メインストリート。
再び前進を開始する恐竜。広場からメインストリート上に姿を現す。
その視線は上空に大きな姿を見せているB.O.C.に注がれている。

B.O.C.に向けて牙を向き、怒りの表情で一際大きな咆哮を上げる恐竜。
前進を始める…


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.06.05 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018