SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(206L)
RE:005
B.O.C.機内。
廊下を急ぎ足で歩く一人の男。

エリカ・ハミルトンのマネージャー、エリック・ビトーである。
不安気な表情のビトー。

屋内プール。
入口。優雅な模様を彫り込んだガラスドアを開け、ビトーが入って来る。

キョロキョロと辺りを見回す。どうやらエリカを捜している様子。
しかし、人気のないプールに、エリカの姿はない…

エリカのキャビン。
ドアをノックする音。

何度も何度もノックされるドア。
しかし、部屋の中にエリカの姿はない。

ベッドの上には華やかなエリカのパーティードレスが、まるで投げ出された様に置かれている…

廊下。
ドアをノックしているビトー。
ようやく諦めた様子。

ビトー
「…やっぱり戻ってない…エリカの奴、一体どこに行っちまったんだ…」

不安な表情でエリカの行方を案ずるビトー…

メインストリート。
石造りの重厚な外観を持つシティ・センタービル。
突如その壁面にひびが入る!建物の各所で壁面の石材が割れ、弾け飛ぶ!

次の瞬間、一気に崩れ落ちるセンタービル。
各所でスパークが起こり、凄まじい土煙が沸き上がる。

崩れ落ちたビルの背後から巨大な恐竜が、その凶暴な姿を現す!

バズーカ砲の照準を恐竜に合わせ、待機しているロボット機動隊。
恐竜の破壊力に驚愕する。

トゥース
「…なんて破壊力なんだ…奴は本当に生物なのか?…」

サーディー
「(トゥースを見て)…私も同感です。あのパワー、本当にあれが生身の生物に出来る事なのでしょうか?」

と、脚を引きずりながらオオツカ警部がやって来る。

ワンディム
「(オオツカを見て)…警部!?……大丈夫ですか?」

オオツカ
「(ワンディムを見上げる)…なぁに、ちょっとつまづいて脚を打っただけだ。それより…(恐竜を見て)…アイツ、本物の恐竜なのか?」

ワンディム
「…我々もそれを不審に思っていたところです。先程サーディーが生体スキャンを試みたのですが、あの恐竜の周囲に特殊なフィールドが形成されており、スキャン出来ませんでした。」

オオツカ
「特殊なフィールド?」

サーディー
「はい。恐竜の周囲に形成された特殊な磁界の影響を受け、スキャン電磁波が拡散されてしまう様です。残念ながら、全くスキャン不能です。」

オオツカ
「一体…(ワンディム達を見上げて)…とにかく、防衛隊が到着する迄、我々が奴を食い止めねばならん!…電気ショック弾を使って見よう。奴の動きを止めるんだ!」

ロボット達
「了解!」

背中の装填システムが作動、ワンディム達のバズーカに電気ショック弾が装填される。

オオツカ
「よし、電気ショック弾、発射!!」

一斉に火を噴くバズーカ!
発射の衝撃で、ワンディム達の周囲の地面から一斉に砂ぼこりが舞い上がる!

街に轟音が轟き、電気ショック弾が恐竜めがけ、白煙の尾を引きながら一直線に飛んで行く!

空中で固定用の爪を開くショック弾。
そのまま恐竜の体を掴もうとするが、まるで体を素通りする様に一瞬見えなくなる!

次の瞬間、ショック弾は何か堅いものにでも跳ね返されたかの様に、爪を開いたまま道路に転がる!

その様子に一瞬声を失う一同。

オオツカ
「…何だ、一体…彼奴の体はどうなってるんだ!?…」

トゥース
「体を突き抜けた!?…」

ワンディム
「(予期しない状況に慌てて)警部、通常火器での攻撃を!」

オオツカ
「仕方あるまい…よし、砲撃開始!!」

ロボット達
「了解!!」

一斉砲撃を開始するロボット達!
恐竜の体に次々に砲弾が炸裂する!

咆哮をあげ、怒りの表情をあらわにする恐竜!
恐竜の周囲で一斉に砲弾が炸裂、メインストリートのアスファルトの路面が、粉々に砕け散りながら舞い上がる!

その凄まじい攻撃の中、しかし恐竜は全く無傷である…

ワンディム
「…バカな…あれだけの攻撃を受けながら、全く平気なのか、奴は…」

砲撃の爆発の中、ゆっくりと前進を続ける恐竜…

ビルの影。
恐竜とワンディム達の闘いを、メインストリート沿いのビルの影から、息を殺して眺めているリエとエリカ。

ケンタが戻ってくる。

エリカ
「(ケンタを見つける)…アッ、ケンタ君!…良かった、無事だったのね!…(呆れた様に)…なぁに?こんな時にトイレだなんて!」

その言葉に頭を掻き、恥ずかしがるケンタ。

ケンタ
「ご、ごめんなさい…」

リエ
「(ケンタを振り返る。どうだった?という表情)…?」

ケンタ
「…!(拳を握った右手から親指を突出し、合図する)」

しかし、しっかりその様子を見ているエリカ。
ケンタとリエを訝しげに見る。

エリカ
「…何がOKなの、ケンタ君?」

いきなり突っ込まれたケンタ、うろたえる。

ケンタ
「えっ!?…な、何でもないよ…」

慌てるケンタを見て、エリカの目が悪戯っぽく輝く。

エリカ
「(疑う様な表情)…変ね…変だわ。何か隠してるわね、ケンタ君。(考える)……あなた達、一体何者なの…ねえケンタ君!」

エリカに詰め寄られ、困るケンタ。
リエを見る。
助けを求める様な表情。

そのケンタを見てリエ、にっこりと微笑む。
リエの反応を見てうなずくケンタ。思い切って。

ケンタ
「…心配しないで、エリカさん。あなたの事はオレ達が必ず守ります。」

エリカ
「(驚いて)…ケンタ君…」

にっこりと微笑むケンタ。エリカを見てうなづく。

と、リエが空の一点を指さす。

リエ
「ケンタ、来たわよ!」

リエの声に、その指さす方向を見るケンタとエリカ。
青空の彼方、何かが一瞬強烈な光を発する!

次の瞬間、その何かが凄い勢いで一同の方に向って急降下して来る!
ラピッド・スターだ!

エリカ
「(驚く)…あれは、何?…」

メインストリート。
恐竜と交戦中のロボット・チーム。
サーディーのレーダー・システムが接近するラピッド・スターの機影を捉える。

サーディー
「10時方向上空から所属不明の航空機接近!急激に高度を下げています!」

空を見上げるオオツカ警部。
ラピッド・スターが付近の建物の影に降りて行くのを見る。

オオツカ
「あの戦闘機は!?…(考える)…やはり、あの少年…」

ビルの影。
メインストリートを一本入った市民ホールの裏庭。

背の低い樹が何本か植えられている芝生の庭に、ゆっくりとラピッド・スターが垂直降下して来る。

ジェット噴射が周囲の樹々の枝を大きく揺らし、樹々の葉は風に煽られて、白っぽい葉裏を覗かせている。車輪を出し、着地する。

コクピットには誰も乗っておらず、完全な自動操縦である。

庭に入って来るリエ、ケンタ、エリカの3人。
エリカはこの信じられない光景に、呆然とラピッド・スターの輝く機体を眺める。

エリカ
「…これ、あなた達の飛行機なの?…」

リエ
「(微笑んで)そうよ、ラピッド・スターっていうの。」

その言葉に目を丸くするエリカ。
コミュニケーターのボタンを押すリエ。

するとラピッド・スターのコクピット、キャノピーガラスがゆっくりと開く。
更に、機体に格納されていたマニピュレート・アームがガクンと下がり、ゆっくりとリエ達に向ってアームを差し出す。

その手のひらに乗るリエとケンタ。
エリカは行動を決めかねて、その様子を呆然と見ている。
手の上のケンタ、エリカに声をかける。

ケンタ
「エリカさん、乗って!飛行船まで送ります。」

エリカ
「…え、…ええ。」

おっかなびっくりでマニピュレート・アームの上に乗るエリカ。
ラピッド・スターは、ゆっくりとアームを上げ、コクピットの高さまで3人を持ち上げる。

操縦席に飛び乗るリエとケンタ。
操縦席についたリエが、とまどっているエリカに声をかける。

リエ
「エリカさんはケンタと一緒に前の席に座って。ちょっと狭いけど我慢してね。これってモトが二人乗りなもんだから…」

ゆっくりと前のシートに乗り込むエリカ。
先に座っていたケンタ、体をシートの隅に寄せ、エリカの手をとって乗り込むのを手伝ってやる。

エリカ
「(ケンタを見て微笑む)…ありがとう。」

その言葉に一瞬頬を赤らめるケンタ。
後部操縦席からは、リエが微笑みながらその光景を眺めている。

席につくエリカ。
ケンタが後部操縦席のリエを振り返る。

ケンタ
「いいよ、姉ちゃん。準備完了!」

リエ
「(うなずく)…発進するわよ、良いわねエリカさん?」

エリカ
「ハイ!」

キャノピーガラスを閉めるリエ。
スロットル・レバーを引き、徐々にエンジン出力を上げる。

ゆっくりと垂直上昇を開始するラピッド・スター。
前の席では、エリカがゆっくりと下にさがり始める周囲の光景に目を輝かせている。

B.O.C.に向うラピッド・スター…


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.06.15 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018