SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(138L)
RE:622
暗い、狭苦しい空間。
周囲は壁面と言わず、天井と言わず、おびただしい数の計器で埋め尽くされ、そ
のあちこちで、計器のランプがチカチカと明滅を繰り返している…
その空間はどうやら全体に球形を帯びている様である。
まるで深海潜航艇の操縦席を想わせる空間。
薄暗いその空間の中、正面に設けられた大型のスクリーンが、周囲を青白く照らしている…
そのスクリーンには、オオツカ警部とロボット・チーム、それにランド・チャレンジャーの姿が映し出されている…
球形の狭い室内、スクリーンの青白い反射に照らされ、その狭い空間の中に二人の人物の姿が浮び上がる。
恐竜ロボットを操る、ドクター・ジャンクとギャリソン・タバタの姿である。
操縦席に着いた二人の間には、あのマックスベリー・システムが、大きなラッセル管に、さざめく様な神秘的な光の瞬きを点らせながら動作を続けている…
タバタ
「旦那様、ジャイロ・コクピットの乗り心地は最高でございます!どんなに機体が傾いても、操縦席は常に水平。この前のドグーとは大層な変わり様でございます。」
メタモールの乗り心地にはしゃぐタバタを他所に、ジャンクはマックスベリーの作動する様子を眺めている。
美しいきらめきを見つめながら、満足そうな様子。
ジャンク
「…素晴らしい…全く素晴らしい発明だ、このシステムは。…マックスベリーと私の天才的なロボット工学理論が融合すれば、太古に死に絶えた生物ですら、この通り本物を遥かに超えた能力を持って、現代に蘇らせる事が可能なのだ!」
満足の行く結果に酔うジャンク。
その横ではタバタが何事か、おもむろに計器の調整をし始める。
ふと、そのタバタの様子に気付くジャンク。
ジャンク
「(タバタを見て)…何をしている!?」
そのジャンクの言葉に、困った様な表情を見せるタバタ。
タバタ
「…どう致しましょうか?旦那様…」
ジャンク
「…(怪訝そうに)…どうしたのだ?」
タバタ
「翼竜に変形したのは良かったのでございますが、メタモールは重量がございます。さすがに翼のはばたきだけでは、飛び上がる事が出来ない様でございますが…」
メインストリート。
巨大なプテラノドンが、先程から必死になってその翼をはばたかせている。
周囲に凄まじい風が巻き起こっているが、プテラノドンは一向に飛び立つ事が出来ない。
操縦席。
タバタはプテラノドンを何とか飛び立たせようと、尚もコントロール装置の調整を続けている…
ジャンク
「…(呆れた様に)…タバタ。」
タバタ
「…(ジャンクを振り返り)…は、ハイ旦那様?」
ジャンク
「…何故ジェットエンジンを使わん?」
タバタ
「…しかし、プテラノドンにはエンジンなどございませんので…」
ジャンク
「…タバタ。」
タバタ
「はい、旦那様。」
ジャンク
「(諭す様な口調で)…はばたいて飛べるのなら苦労はないぞ。…(徐々に感情が高ぶる)…一体…このメタモールが…何トンあると思っているのだ…お前は!?…(遂に感情が爆発!)…さっさとエンジンを使わんか!!」
タバタ
「ひ、ひぃ〜っつ!!…も、申し訳ございませんっつ!!」
大慌ててジェットエンジンのイグニッション・スイッチを入れるタバタ。
ジャンクはそのタバタの慌てぶりを他所に、一人不敵な笑いを浮かべている。
ジャンク
「…次なる目標は…あの、ブライトネス・オブ・クラウドだ。」
メインストリート。
必死にはばたきを続けていたプテラノドン。
急にはばたきを止め、翼を一杯に広げる。
すると、翼の下からジェット音がし始め、薄い紫の排気煙が噴き上がり始める。
ジェット機の様な轟音を轟かせながら、プテラノドンの巨体が宙に浮き始める…
その様子を見守るオオツカ警部。
オオツカ
「…やはり奴はロボット…しかも、マックスベリーを装備したロボットとは…ドクター・ジャンクめ!」
ランド・チャレンジャー操縦席。
ショウイチ
「(ゲンザブロウを見て)…お父さん!」
飛び立つプテラノドンを見つめるゲンザブロウ、ショウイチの声にうなずく。
ゲンザブロウ
「遂に、本性を現して来おったな、ドクター・ジャンク。…(コミュニケーターのスイッチを入れる)…リエ、ケンタ、奴を追跡するんじゃ!」
リエ/ケンタ(声)
「了解!!」
回線を切り替え、アース・ムーバーのユキコを呼び出す。
ゲンザブロウ
「ユキコさん、ワシらも奴を追うぞ!すまんが、ランド・チャレンジャーを拾い上げてくれんか?」
ユキコ(声)
「分かりました。」
ゲンザブロウ
「…ジャンクよ、今度こそ、お前を追い詰めてやるぞ…」
上空。
防衛隊の戦闘機が編隊を組んでやって来る。
一斉にプテラノドンにミサイル攻撃を加える。
プテラノドンの周囲で、次々に爆発するミサイル!
しかし、プテラノドンはその攻撃をものともせず、猛スピードで高度をあげ、ジェット編隊を振り切る。
と、そのプテラノドンにぴったりと付いている1つの機影。
ラピッド・スターだ!
プテラノドンの操縦席。
ジャンクがモニターで追跡してくるラピッド・スターの映像を見ている。
ジャンク
「来おったな、ゲンザブロウのメカめ…(ニヤリと不敵な笑みをこぼす)
…さて、どこまで付いて来れるかな?」
更に高度を上げて行くプテラノドン…
追跡しているラピッド・スターのコクピット。
ケンタ
「…(プテラノドンを見て)…姉ちゃん、アイツまだ高度を上げるつもりだ!いったいどこまで行くつもりなんだ!?」
リエ
「まるで、あたし達を、からかっているみたい…(心を決める)…見てなさい、ラピッド・スターの性能を見せてあげるわ!」
一気にスロットル・レバーを引き、操縦捍を引き寄せるリエ。
全速力でプテラノドンを追って高度を上げて行くラピッド・スター…
〜 つづく 〜
~ 初出:1994.06.26 Nifty Serve 特撮フォーラム ~