SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(82L)
RE:144
B.O.C.エアロ・デッキ。
煙を逃れて避難した乗客達が集まっている。

皆、疲労の色が濃く、あちこちでうずくまっている姿が見られる…
その中にエリカとビトーの姿もある。

ビトー
「…大丈夫、もうじききっと助かるさ。」

エリカをいたわる様に肩に手を置き、力づけようとするビトー。
そのエリカ達の横では、ラッセル博士が頭を抱え込んでいる。

ラッセル
「…なんて事だ…もうおしまいだ…香港での契約が…マックスベリーの未来が…」

傍らに立つ博士の助手、ルディー・ワーゼスがラッセル博士を慰める。

ワーゼス
「…博士…元気を出して下さい…」

ラッセル
「(ワーゼスを睨む)…貴様!元はと言えば、お前があんな奴に目を付けられたりするからこんな事に!どうしてくれるんだ!?私の夢、私の望み!」

ワーゼス
「(悲しげな表情で)…博士…」

ラッセル
「…何処へでも行っちまえ!お前の顔なんか二度と見たくない!」

ワーゼスをなじるラッセル博士。と、エリカが突然立ち上がる。

エリカ
「(ラッセルを見て)やめなさい、みっともない!」

ラッセル
「(エリカを見て)…何ッ!?…お前なんかに何が分かる!」

エリカ
「…皆んな…皆んな自分の事より、私達を助ける為に全力を尽くしてくれてるのよ!それなのに…それなのに…あなた、自分の事しか考えられないの!?」

ビトー
「エリカ…」

立ち尽くしたまま、うつむくエリカ。
その目から涙の雫がこぼれる…

その言葉にラッセル、力が抜けた様にがっくりと顔を伏せ、うずくまる…

B.O.C.機首。
全力でB.O.C.を押し戻し続けているワンディム達。
しかし、ワンディム達のエネルギーは既に尽きようとしていた…

ワンディム達の必死の抵抗も空しく、ゆっくりとドリーム・ブリッジの橋桁に機首を押し付けて行くB.O.C.…

サーディー
「ワンディム、これ以上ジェットパックを使用し続ける事が出来ません…」

ワンディム
「…もう少しだ…もう少しなんだ…」

ワンディム達のジェットの炎が少しずつ、その力を弱めて行く…

B.O.C.はゆっくりと機首を、ドリーム・ブリッジの橋桁部分に押し付けて行く…
鋼鉄の橋桁がきしむ様な音を立てる!

B.O.C.の機首が橋桁の下面にもぐり込む!
一気に機体が斜めになり、橋桁から鉄骨がバラバラと海面に落下する!

エアロ・デッキ。
突然、デッキを衝撃が襲う!

驚いて前方を見る一同。
だが、次の瞬間、機体が一気に傾斜を始める!

デッキの上に散乱する破片が、ずるずると動き始め、やがて海の中に次々に落下して行く…

乗客達は周囲の壁につかまり、なんとか傾斜に耐えている。
徐々に角度が増す。

と、エリカが足を滑らせる!

エリカ
「アッ!!」

その瞬間、ビトーが間一髪、エリカの手を掴む!
腕一本で必死にエリカを支えるビトー。

傾斜はますます強まって行く。
あちこちで悲鳴の様なきしみをあげる機体。

ビトー
「(苦しげに)…エリカ、大丈夫。今助ける…」

エリカ
「…エリック…」

ありったけの力を込め、エリカを救い上げようとするビトー。
が、その瞬間、再び機体に激しい衝撃が走る!

そのショックで二人のつないでいた手が離れる!

エリカ
「キャーッ!!」

ビトー
「エリカ!!」


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.07.10 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018