SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(142L)
RE:169
ドリーム・ブリッジ。
ワンディム達の努力の甲斐もなく、B.O.C.はドリーム・ブリッジの橋桁に衝突、その機体を大きく傾斜させている。

尚も徐々に前進を続けるB.O.C.。
僅かづつ機体が前進する度に、B.O.C.の巨体のあちこちが、悲鳴の様な音を立てる…

真っ黒な煙が、メインエンジンから噴き上がり続けている…

上空。
プテラノドンがラピッド・スターを追い回している。

口から立て続けに強烈なビームを、ラピッド・スター目がけて連射するプテラノドン!
その攻撃を必死にかわすラピッド・スター!

ラピッド・スターコクピット。
次々と放たれるプテラノドンのビームを必死の操縦でかわすリエ。

リエ
「(危うくビームを避ける)うわっ!…一体、アイツの弱点はどこなのかしら!?」

ケンタ
「くっそーっ!!オレ達をからかって楽しんでるみたいだ!!」

プテラノドン操縦席。
タバタがモニター上のラピッド・スターに、夢中になって照準を合わせようとしている。

ビームを連射するタバタ!
しかし、すばしこいラピッド・スターはタバタの攻撃をことごとくかわして行く!

徐々にイライラしてくるタバタ。

タバタ
「コノ!コノ!コノッ!!…(照準を合わせる)…そこでじっとしていて下さいまし!(ビームを発射!しかし又もや外れる)…アッ!どうしてお逃げになるんでございましょう!!」

ジャンク
「…タバタ。」

タバタ
「(前を向いたまま)…コノ!コノッ!!」

ジャンク
「タバタ。」

タバタ
「…ああっ、またお避けになるっ!どうして当って頂けないのでございますか?」

ジャンク
「(無視されて頭に来る)…ウーッ…タバターッ!聞こえんのか、お前は!」

タバタ
「…は?何か御用でございますか、旦那様?」

ジャンク
「(ムッとしながら)…用があるから呼んだのだ。お前、さっきから随分撃っておるようだが、一発も命中しておらんぞ。…私に替われ。」

思わず操縦席から腰を浮かせるドクター・ジャンク。

タバタ
「申し訳ございませんが旦那様、ダメでございます!」

ムッとしていたジャンク、タバタのつれない返事に思わずキレてしまう!

ジャンク
「…な、ん、だ、と、お!」

タバタ
「一発当るまでは私の番でございます!」

ジャンク
「ええいっ!今度は私がっ!!」

席を立つジャンク、タバタの席の照準機を奪おうとする。
照準機の取合いになる2人。

タバタ
「旦那様、ずるうございますっ!!」

ジャンク
「何を言う!さんざん撃っておったクセに!…(無理矢理照準機をむしり取ろうとする)…ええい、今度は、私の、番だっ!」

タバタ
「…(照準機を渡してなるかと力の限り抵抗する)…ダ、メ、で、ござい、ますう!」

ジャンク
「主、人、に、むかっ、て、なにを、いう〜っ!」

玩具を取り合う子供の如き状態となるジャンクとタバタ…

と、その瞬間、コクピットの中央に設置されていたマックスベリー・システムの中枢であるラッセル管が、異様な輝きを発し始める。

光は徐々にその強さを増し、狭いコクピットの内部は一転、白昼の様な明るさとなる…

タバタ
「(ラッセル管の異様な輝きに驚き)…旦那様…」

ジャンク
「(タバタの視線を追い、ラッセル管の輝きに気付く)…何だ?…この輝きは?…」

照準機の取合いも忘れ、ラッセル管の異様な輝きを見る2人。
と、次の瞬間、小さな音を立て、ラッセル管の輝きが消える!

ラッセル管の内部が、一瞬の内に煙で黒く濁る…
再び元の薄暗さに戻るコクピット内部…

タバタ
「旦那様…一体、これは?…」

ジャンク
「…ラッセル管が…切れた…(ハッとする)タバタッ!すぐマックスベリーを確認しろっ!!」

タバタ
「は、ハイッ!!…(コンソールをチェックする)…(ジャンクを振り返る)…旦那様…」

ジャンク
「…どうした?」

タバタ
「…マックスベリー、停止しています!」

ジャンク
「何だと…ラッセル管の寿命が…尽きたと言うのか…」

呆然とするドクター・ジャンク…

幻の様な風景(主観描写)。
一面に青が拡がっている…

ぼんやりと、何か長い帯の様なものがゆらゆらと揺れているのが見える…

不意に潮の臭いが鼻を打ち、身体に風の感覚が蘇って来る…

耳に、強い風の音やきしむ様な音、波の砕ける音が一編に飛び込んで来る…

意識を取り戻すエリカ。
ゆっくりと体を動かそうとするが、左腕が何かに押えつけられ、動かない。

無理に動かそうとすると、どこかで何かが気持ちの悪い、きしむ様な音を立てる。

周囲を見回すエリカ。
先程の帯の様に思えたものは、実は何か太いケーブルであるのに気付く。

エリカの体は、破損したB.O.C.の機体から出ている、おびただしいケーブルの束
に引っかかっていた…

動かない左腕を見る。
エリカの左腕は、太い2本のケーブルの間にしっかりと挟まれてしまっている。
思いきり体を動かし、ケーブルの間から腕を抜こうともがくエリカ!

だが、その途端、上の方で、何かがきしむ様な音を立て、突然、エリカの体を支
えているケーブルがガクンと一段下がる!

エリカ
「アッ!!」

思わず下を見るエリカ。
エリカの足元には、白い波頭を立てる海面が遥か下方に広がっている。

又、ギシギシときしむ様な音が上方から聴こえて来る…

上を見上げるエリカ。
エリカの体を支えるケーブルの束は、機体から突き出た細いアンテナに引っかかっている。

そのアンテナが、ケーブルの重みで根元から折れかかっている…

エリカ
「どうしよう…あのアンテナが折れたら、このまま海へ落ちてしまう!」

自らの置かれた絶対絶命の状況に、怯えた様な表情を見せるエリカ…

足元に広がる海面が、寒々とした白い波頭を立てている…

ナレーション
「絶対絶命のエリカ!果してエリカはこの危機を切り抜ける事ができるのか!?一方、苦戦するSFXボイジャーは、ジャンクの変身ロボット、メタモールを倒す事が出来るのだろうか!?…」


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.07.12 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018