SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(165L)
RE:285
なぎさシティ上空。
夕暮れの空をラピッド・スターが急速上昇してくる。

コクピット。
ケンタがグラン・マキシマイザーの照準を調整している。
コクピットのキャノピーガラスにターゲットスコープが浮び上がり、エネルギーレベルがデジタル表示されている。

後部操縦席のリエがケンタに声をかける。

リエ
「(計器を見て)…アイツ、凄いスピードで一直線にこちらに向って来るわ!…(顔を上げ、ケンタを見て)準備いい!?」

ケンタ
「(リエを振り返り)…大丈夫!オレにまかせろって!」

リエ
「(微笑み)頼んだわよ!」

ケンタ
「うん!!…(エネルギーメーターを見て)…よおし!チャージ完了!」

リエ
「(コミュニケーターのスイッチを入れ)…こちらリエ、グラン・マキシマイザーのエネルギーチャージが完了したわ。お父さん、ジャンクのメカの構造分析データを!」

ディスプレイに映るショウイチ。

ショウイチ
「(横のモニターを見ている)…待ってくれ、もう少しだ…(ディスプレイに分析結果が表示される)…よし!分析が完了した、データを転送するぞ!」

リエ
「OK!」

ランド・チャレンジャー操縦席。
構造分析データを転送しているショウイチ。
それを見ているゲンザブロウとエリカ。

ゲンザブロウ
「…うむ。やはり、外観を構成していたあのフィールドが、奴の内部構造をスキャン出来んようにしておった様じゃな…フィールドが消滅すると同時に、スキャン出来る様になったか…」

ショウイチ
「…ええ。しかし危ないところでした。あのままスキャンできなければ、どうなる事かと…いやぁ良かった良かった。」

ゲンザブロウ
「(呆れて)確かにそうじゃが…ショウイチ、お前、全部解決した様な口ぶりじゃな。」

ショウイチ
「(テレながら)…ああ、そうでしたね、まだ終ってなかったんでしたっけ。」

ゲンザブロウ
「(腕組みしながら)…まったくノンキな奴じゃ。」

二人のやり取りを聞いていたエリカ、思わず微笑む。

ふと視線を移すと、操縦席の隅のモニターにラピッド・スターのコクピット映像が映っている。

それを見つめるエリカ。

ラピッド・スターコクピット。
リエの操縦席のモニターに、メタモールの構造分析結果が、コンピュータ・グラ
フィックで表示される。そのグラフィックに合わせてショウイチの声が響く。

ショウイチ
「…奴の構造をスキャンした情報では、心臓部の動力ユニットは丁度背中の部分、翼のつけね辺りだ(グラフィックでその位置が示される)…」

前部操縦席のケンタ。
キャノピーガラスの片隅にウインドウが開き、リエのモニターに表示されていた
のと同じコンピュータ・グラフィックが表示されている。

ショウイチ
「…ケンタ、聞いてるか?」

ケンタ
「ウン。」

ショウイチ
「…動力ユニットへの直撃は避けるんだ。周囲への被害が大きくなるからな。…狙うのはここだ(グラフィックに表示が出る。首筋に当る非常に小さな部分)。」

ケンタ
「(驚いて)…エッ!?…こんな小さな目標を狙うの!?」

ショウイチ
「そうだ。ここにはどうやら、パワーを身体中に伝達するための基幹ケーブルがある様だ。これを破壊できれば、奴の機能は一撃で停止出来る!」

ケンタ
「…でも…(訴える様に)…できないよ、オレ…」

ショウイチ
「…ケンタ……自信を持つんだ。お前ならきっと出来る。」

モニターに映るショウイチ。と、その横からエリカが顔を覗かせる。

エリカ
「…ケンタ君、わたしもケンタ君ならきっと出来ると思うわ。だって、あ
    んな凄い事をして、私を助けてくれたじゃない…」

ケンタ
「…エリカさん…」

モニターのエリカを見る。うなずき、微笑むエリカ。

ケンタ
「………(決意する)…父ちゃん、オレ、やってみる!」

ショウイチ
「(にっこりと)…ウン。頼んだぞ、ケンタ!!」

うなずくケンタ。
と、前方で、夕暮れの空の中、何かが沈み行く夕日の残光を受け、反射する!

リエ
「ケンタ、来たわ!!」

リエの声に前を向くケンタ。
反射光を発したその物体は、次の瞬間、見る見る形が明確になりはじめる。

猛スピードでラピッド・スター目がけ、一直線に進んでくる銀色の竜!電子音の咆哮をあげる!

メタモール操縦席。
操縦席のジャンクとタバタ。

ジャンクは前方のモニターに映る、接近してくるラピッド・スターの姿を凝視し続けている。

ジャンク
「いよいよ決着を付けてやる、ゲンザブロウのメカめっつ!!…(タバタを見て)…電子ビーム砲、スタンバイ!」

タバタ
「かしこまりました…」

竜の口がゆっくりと開き、電子ビーム砲がセットされる。

ラピッド・スターコクピット。
ケンタがグラン・マキシマイザーの照準をメタモールにセットする。

見る見る接近してくるメタモール!

ケンタは引金に手をかけたまま、発射のタイミングを図っている…

ケンタ
「まだだ…もっと引き付けるんだ…」

リエ
「ケンタ、このままじゃ衝突するわっ!!」

ケンタ
「(スコープを見たまま)姉ちゃん、もうちょっと!」

接近するメタモール!
スコープの照準がメタモールの首筋に合う。

メタモール操縦席。
ジャンクの手が電子ビーム砲の発射ボタンにかかっている。

ラピッド・スターコクピット。
ぐんぐん接近するメタモール!

しかし、ケンタはまだスコープを凝視し続けている…

リエ
「(たまりかねて)ケンタ!!」

メタモール操縦席。
ジャンクの指が発射ボタンを押し込む。

ジャンク
「とどめだっ!!」

ケンタ
「今だっ!!」

グラン・マキシマイザーを発射するラピッド・スター!

発射ボタンを一杯に押し込むジャンク!

その瞬間、機体に小さな衝撃が走る!
と、同時に操縦席内の電源が落ち、非常灯が付く!

ジャンク
「何ッ!?」

ケンタ
「姉ちゃん、避けて!!」

反射的に操縦捍を右に一杯に切るリエ!

メタモールの首筋で爆発が起き、突然エンジンが停止する!!
ラピッド・スターは機体を翻し、間一髪、メタモールをやり過ごす!

ジャンク
「バカな!パワーが総て切れた!!」

タバタ
「旦那様ッ!!」

そのまま一気に高度が下がり、海面に突っ込んで行くメタモール!!
巨大な水柱があがる!!


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.07.23 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018