SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(207L)
RE:491
東京湾上。
メタモールが突っ込んだ海面。

巨大な水柱が噴き上がり、メタモールが発する高熱で、周囲の海水は沸騰する!
うねりをあげる海水。

ゴボゴボと大きな音を立て、巨大な気泡が絶え間なく浮び上がり、凄まじい水蒸気の白煙が周囲を包んでいる…

と、一際大きな気泡が噴き上がる。
それと同時に球形の物体が浮び上がって来る。

金属製のその球体は、表面が焼け焦げ、傷だらけである…
その球体に付けられたハッチがゆっくりと開き始める。

中から煙が噴き出す。
その煙の中に人影が見える…

ギャリソン・タバタ…それにドクター・ジャンクである。
煙にむせる二人。

タバタ
「ゴホゴホ…旦那様、大丈夫でございますか?」

ジャンク
「ええい、何ともないッ!…またしてもゲンザブロウのメカめ!この次こそは私の超頭脳で、目にもの見せてくれるぞッ!!…(周囲の沸騰した海水が跳ねる)あつッ!コラ、タバタ何とかせんか、何とか!」

タバタ
「(周囲を見渡し)…これは凄い!海が温泉になっている様でございます。(ふと何か思い付いた様子で)…しかし、旦那様?」

ジャンク
「何だ、どうしたのだ?」

タバタ
「これからどう致しましょうか?」

ジャンク
「ん?…」

タバタ
「このカプセルには動力がございません。岸までこがなければなりません
    が…」

ジャンク
「何ッ!?何で動力を付けておかなかったのだ!お前という奴は!このままでは我々は、温泉卵の様にゆだってしまうではないか!!」

タバタ
「(不満気に)…旦那様、でもそれは旦那様が!!」

つめよるタバタ。
と、突然、ジャンクが苦しみ出す。

しかし、どこかわざとらしい様子。

ジャンク
「ウウ…いかん、船酔だ、私は船酔になったぞ!こらタバタ、何とかしろ!」

タバタ
「あ〜っ!旦那様、また仮病を!ずるうございますっ!!」

ジャンク
「とにかく船酔だ!私は船酔だぞ!」

タバタ
「…………」

海上で延々続くジャンクとタバタの争い…

埠頭。
アース・ムーバーに支えられたB.O.C.がゆっくりと着陸する。
その後部エンジンからは相変わらず黒煙が噴き上がっている…

アース・ムーバー操縦席。
無事にB.O.C.を救助し、ホッと息をつくユキコ。

と、コミュニケーターが鳴る。
スイッチを入れるとゲンザブロウが映る。

ユキコ
「お父さん。…無事に救助完了しました。」

ゲンザブロウ
「ご苦労じゃったなユキコさん。こっちもみんな無事じゃ。…(微笑みながら)そう言えば今回は、ケンタの頑張りに随分と助けられたのお。」

ユキコ
「(微笑み、遠くを見つめるような目付きで)…本当に…」

B.O.C.機首。
エネルギーを消耗し、動けなくなっていたワンディム達、ゆっくりとカメラヘッドを動かす。

ワンディム
「…みんな、無事か?…」

トゥース
「…大丈夫、です…」

サーディー
「…私も大丈夫ですが、最早、体を動かせるだけのエネルギーが残っていません。現在、補助バッテリーで何とか…」

ワンディム
「とにかく、みんな無事で良かった…(上空のアース・ムーバーを見上げ)…また、彼等に助けられてしまったな…」

と、パトカーがやってくる。降りるオオツカ警部。

オオツカ
「大丈夫か!?みんな無事か!?」

ワンディム
「全員無事です。」

オオツカ
「良かった……心配させやがって!」

ワンディム
「(ハッとして)…警部…申し訳ありません…」

オオツカ
「…いや…ありがとう。お前達の活躍で、事態を最小限の被害で食い止める事が出来た。本当にありがとう。…ただし、頼むから余り無茶な事はしないでくれよ…(微笑む)」

一同
「(テレた様に)…済みません、警部。」

夕方の発着タワー。
B.O.C.の機体は発着タワーのドックに固定され、周囲をヤグラに囲まれて修理が行われている。と、轟音を響かせ、B.O.C.の横に少し小型の飛行船が到着する。

ナレーション
「…それから数日後。修理のため、しばらく日本に留まる事になったB.O.C.に替わって、同型機による世界一周飛行が再開される事になった…今日はその出発の日である…」

出発ロビーにはエリカとビトー。それにタナカ家の一同の姿がある…

ビトー
「本当にありがとうございました。何とお礼を申し上げたら良いのか…」

ゲンザブロウ
「なぁに、礼など必要ありません。ワシ等は当然の事をしたまでですからな。」

ショウイチ
「そうですよ。…それよりお二人とも無事で本当に良かった。」

その横で、エリカはケンタを見る。

エリカ
「(微笑みながら)…ケンタ君…ありがとう…」

ケンタ
「(頬を赤らめながら)…エリカさん、元気でね………さ…」

ケンタが『さよなら』と言おうとした瞬間、突然、エリカがケンタの口を手で塞ぐ。驚いてエリカを見るケンタ。

微笑みながらケンタを見るエリカ。

エリカ
「…『さよなら』は言わないわ、私。…だってもっと良い言葉を知ってるんですもの。…『また、会いましょう』(微笑む)。」

言い終わるとエリカは、ケンタの頬にキスをする。真っ赤になるケンタ。
リエ達も、驚いてその様子を見る。

ケンタ
「…エリカさん…(にっこりと)…また会おうね!!」

エリカ
「うん!!」

発着ロビー内に出発を知らせるアナウンスが響く。

アナウンス
「大変お待たせ致しました。ご搭乗の準備が整いましたので、乗客の皆様を只今より機内へご案内致します。

ビトー
「…じゃあ、私達はこれで…(ケンタを見て)…ケンタ君、素晴らしいナイトぶりだったよ。僕は君を本当に尊敬するぞ!…ありがとう!!」

しっかりとケンタの手を握り、握手するビトー。

ケンタ
「ビトーさん…」

ケンタを見てにっこりとうなずくビトー。
エリカと一緒に搭乗ゲートに歩き出す。歩きながらケンタを振り返るエリカ。

エリカ
「ケンタ君、絶対よ!絶対また会いましょう!!」

ケンタ
「エリカさん、絶対!絶対だよ!!」

手を振り会うケンタとエリカ。エリカの姿はゲートの中に消えて行く…

発着タワー付近の道路。
オオツカ警部が路肩にパトカーを停め、一息入れている。

と、背後から誰かが声をかける。
振り向くオオツカ。そこにはラッセル博士の助手、ルディー・ワーゼスの姿。

ワーゼス
「どうも、色々とお世話になりました、警部。」

オオツカ
「(驚いて)…どうしたんです?今日はワールド・プレミア・フライトの出発の日だったはずですが?」

ワーゼス
「…博士の所を辞める事にしました。これからは、自分の力をもう少し信じてみようと思います。」

オオツカ
「そうですか…(にっこりと微笑み、ワーゼスの手を取って握手する)…頑張って下さい。あなたならきっと、博士以上の素晴らしい発明を成し遂げてくれると思っています。期待してますよ!」

ワーゼス
「(明るく)ありがとうございます。」

夕暮れの発着タワー。
タワー屋上の送迎デッキ。タナカ家の面々が、今、正に出発しようとする飛行船を見つめている。

飛行船の機体がゆっくりと反転して行くと、夕日がその機体にキラキラと光の筋を描いて行く…

デッキの手摺にもたれ、心地良い風に吹かれながら、これを見送る一同。
ケンタは飛行船に向って一心に手を振っている。

その様子を見ているリエとユキコ。

リエ
「…お母さん。」

ユキコ
「…ん?」

リエ
「あたし、ケンタに教えられた気がするわ…始めから諦める必要なんて、全然ないんだって事…ケンタからかった事、ホントに後悔してる…」

ユキコ
「(微笑み)…そうね。ケンタったら遂に、エリカさんのハートを射止めちゃったみたいだもんね。」

ショウイチ
「オレもケンタを見習らわなくっちゃな。よおし、まずはケンタの担任のヨシナガ先生にアタックだ!!」

ゲンザブロウ
「(ショウイチのソデを引っ張る)ショウイチ、ショウイチ…」

ショウイチ
「何です、お父さん?…(ユキコを見て)…あ、ユキコ…さん。」

そこにはショウイチを睨むユキコの姿が…
しかし、次の瞬間、一同に笑いが起こる。

小さくなり、空の彼方に消えて行く飛行船を見送る一同…

ケンタの初恋編  〜完〜

~ 初出:1994.07.24 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018