SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(153L)
RE:677
タナカ鉄工所。
工場に駆け込んで来るリエとケンタ。
工場の片隅に、カタパルトにセットされたラピッド・スターが待機している。

腕にはめたコミュニケーターのボタンを押すリエ。
コクピットの計器に一斉に明りがともり、ドライブシステムがイグニッション・モードになる。

操縦席のメインモニターに
『ALL SYSTEM ACTIVATED』
の表示。同時にキャノピーガラスが開く。

コクピットに乗り込む2人。
シートベルトを締める。
リエは計器のチェックをする。

リエ
「…ケンタ、準備いい?発進するわよ。」

ケンタ
「うん!」

キャノピーガラスが閉まる。
ラピッド・スターを乗せたカタパルトがゆっくりと横に平行移動を開始する。
レールの上を移動するカタパルト。

コクピットの左側から徐々に光が射し始める。
機体の移動に合わせて工場の壁がゆっくりと開いて行く。

工場裏の運河。
運河に面した工場の壁がゆっくりと開く。
それに伴ってその前の堤防も下がり、工場の中からトラスに支えられた移動用レールが、鈍いモーターの作動音を立てながら、ゆっくりと伸びて来る。

運河の水面まで伸びるレール。
レールの上を、カタパルトに乗ったラピッド・スターが運河に降りる。

コクピット。
計器のチェックをしているリエ。
と、一瞬機体にショックが走り、キャノピーガラスに水しぶきがかかる。

チラと前を見るリエ。
ゆらゆらとゆっくり揺れる機体。
再び計器のチェックに戻るリエ。

操縦席正面のメインモニターには、前部カメラの捉えた運河の風景が、周囲に様々な情報をディスプレイしながら映し出されている。

ケンタ
「姉ちゃん、着水したゾ。」

リエ
「OK!…(右脇のサブ・コンソールのスイッチを入れる)…こちらラピッド・スター、リエ。今から発進するわ。」

モニターにショウイチとユキコが映る。

ユキコ
「(脇のモニターを見て)…運河上障害物なし。発進OKよ。」

と、その脇からショウイチがカメラを覗き込む様に。

ショウイチ
「いいか、あの雲の中には何かがいるはずだ。だが、発見しても軽率に攻撃しちゃダメだ。まずは状況を報告する事。くれぐれも街の上だって事を忘れずに慎重に行動するんだ。」

リエ
「(うなずく)…分かったわ。…(再び計器を見て)……システムチェック…ステータス、オールグリーン。ドライビング・ユニット、出力、80、90、100……出力、マキシマム。」

メイン・モニター上にエンジン出力がデジタル表示されている。
その数値が最大出力を示して点滅する。

リエ
「(脇のスイッチを入れる)…ドライブ・コネクト!ラピッド・スター、発進!!」

思いきりスロットルレバーを引くリエ。
運河上のラピッド・スター、エンジンを全力噴射する。

運河に大きな水柱が噴き上がり、水しぶきが霧となって夏の日差しに虹が立つ。
運河上を滑べるように滑走し、離陸するラピッド・スター!

ナレーション
「その頃、各所で発生した大規模な停電の為に、東京の街は大混乱に陥っていた…」

交差点。
信号機が全部停電している。

大渋滞の幹線道路。
あちこちでクラクションが苛立った調子で鳴らされている。

駅。
電車が立往生してしまい、乗客がホームに溢れている。

地下街。
非常灯がついた薄暗い地下街。
不安そうな表情で出口を求めて足早に歩く人々。

地下街の出口からは次々に人々が地上に脱出してくる。
地上に出てきた人々は皆、空に浮かぶ巨大な積乱雲を驚きの表情で見上げている…

空に浮かぶ不気味な積乱雲…

東京上空。
巨大な積乱雲の中、ヴォルカティックは相変わらず強烈な熱気を、足元の東京の街に向って噴き出し続けている。

ヴォルカティックの周囲では、大気が強烈な温度差で渦を巻き、雲が凄まじいスピードでその周囲を巡っている。

ヴォルカティック操縦席。
モニターに逆巻く雲の間からほの見える東京の街と、熱気を噴き出し続けている排熱装置の様子が映し出されている。

着々と上昇を続ける地表温度に、満足気な表情のタバタ。

タバタ
「只今の地表面外気温45度。素晴らしゅうございます。もうしばらくでこの東京は居住不可能な環境となりましょう。…(満足気に)…いかがでございます?たとえ旦那様がご不在でも、私一人で立派に作戦を遂行出来るではございませんか?」

すっかり満足して操縦席のソファーに深々と座り込む。

と、レーダーがアラームをあげる。
モニターに接近する物体の情報が表示される。

タバタ
「…どうやらどなた様か、お客様がお見えになられた様でございます。」

モニターカメラのスイッチを入れる。
逆巻く雲の切れ間に一瞬、上昇してくるラピッド・スターの機体が映る。

雲の切れ間をゆっくりと上昇して来るラピッド・スター。
その周囲では目まぐるしく雲が渦を巻き、日差しが小刻みに晴れたり曇ったりを繰り返している…

にわかに激しい雨が振る。

日差しに焼かれたラピッド・スターの機体表面で、雨滴が一瞬ジュッと音を立てて蒸発する。

コクピットのリエとケンタ。
キャノピーガラスに雨が流れを作っている…

リエ
「(モニターを見ながら)…周りを良く見てて、すぐ近くにいるはずよ…」

ケンタ
「うん!」

雨に視界を遮られながらも、懸命に周囲を見回しているケンタ。

と、上空、雲の切れ間から一瞬、なにか大きな物が見える。
ハッとするケンタ。

ケンタ
「(上を見ながら)…姉ちゃん、いたッ!!」

ケンタの声に上を向くリエ。
雲間から姿を現わすヴォルカティックの機体。

先程までの激しい雨は既に上がりかけている…
コミュニケーターのスイッチを入れるリエ。

リエ
「(顔を上げたまま)…こちらラピッド・スター、リエ。見つけたわ…大きい…物凄く大きなロボットだわ…」

ショウイチ
「ロボットだって?…映像を転送してくれ!」

リエ
「分かったわ!」

鉄工所事務所。
モニターにラピッド・スターのカメラが捉えた、ヴォルカティックの映像が映し出される。その巨大さに息を飲むショウイチとユキコ。

ショウイチ
「こいつが…」

ユキコ
「あなた…」

ショウイチ
「ああ…ジャンクのロボットだ…間違いない…」

モニターを凝視する二人。

上空。
ヴォルカティックの巨体を見上げるリエとケンタ。

対峙するラピッド・スターとヴォルカティック…



〜 つづく 〜

~ 初出:1994.09.03 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018