SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(175L)
RE:NON
空。
空中のラピッド・スターとヴォルカティック。

その周囲では相変わらず風が渦を巻き、雲がうねる様に動いている。

ラピッド・スターコクピット。
操縦席のリエ。

その前のモニターには、ヴォルカティックのサーモグラフィーが表示されている。
ヴォルカティックの周囲の温度をグラフィック表示する。

モニター上の表示。
ヴォルカティックの機体全体が、高温を示す暖色系の色で周囲から浮び上がっている。その機体下面は非常な高温を示す赤で表示され、その高温の赤は、まるで尾を引く様に下方に伸びている。

リエ
「やっぱり異常な高温の原因はあのロボットだったんだわ。街に向って熱風を吹き出してる…」

ケンタ
「(後部操縦席のリエを振り返り)…姉ちゃん、やっつけようゼ!何とかしないと街がッ!」

リエ
「何言ってんの!忘れたの、ここは街の上よ。こんな処で攻撃したらどうなると思ってるの!?」

ケンタ
「だけど、このままじゃ!!」

リエ
「そんな事、分かってるわよ…」

困惑した表情を見せるリエ。
考え込む。

と、脇のレーダーモニターでは、ヴォルカティックを取り巻く小型排熱装置の一つが徐々に円軌道を外れて行く…

しかし、それには気付かないリエ。

リエ
「とにかくお父さんに報告しなきゃ…(コミュニケーターのスイッチを入れる)…こちらリエ!」

空中。
静止しているラピッド・スター。
その背後、雲の中から1機の小型排熱ポッドがゆっくりと姿を現わす…

コクピット。
鉄工所と交信しているリエ。

リエ
「…ええ、高熱の原因はやっぱりあのロボットよ。街に向って凄い熱気を吹き出してるわ。」

モニターに映るショウイチ。

ショウイチ
「そうか、やはり…(考える)…分かった。一旦戻りなさい、作戦を考えよう。」

空中。
ラピッド・スターの後方、少し離れた位置に静止した小型排熱ポッド。

その機体に取り付けられた小型ビーム砲が、ゆっくりとラピッド・スターに照準を合わせる…

コクピット。
鉄工所と交信しているリエと、その様子を、前部操縦席から身を乗り出して聞いているケンタ。

リエ
「…ええ、データ収集にもう少しかかりそうなの。それが終ったらすぐ戻るわ。」

ショウイチ
「分かった。気をつけるんだぞ。」

リエ
「(うなずく)うん。」

コミュニケーターのスイッチを切る。
ふと、脇のレーダーモニターを見るリエ。

見ると、先程まで円を描く様に等間隔で配置されていた小型排熱ポッドの反応が、一つ欠けているのに気付く。

リエ
「これは…」

排熱ポッドの不可思議な反応に、言い知れぬ不安を感じるリエ…
その瞬間、閃光と共に衝撃がラピッド・スターを襲う!!

リエ
「キャーッ!!」

ケンタ
「ウワーッ!!」

ラピッド・スターの後方、雲間から姿を現わした小型排熱ポッドのビーム砲が、再びラピッド・スター目がけて発射される!

ケンタ
「姉ちゃん、後ろだッ!」

ケンタの声に、メインエンジンを一気にブーストさせるリエ!

機体を翻し、ビームの砲撃を危うくかわす。
そのまま雲の中に突っ込む!

コクピット。
雲の中を飛行するラピッド・スター。

キャノピーガラスの外は、一面真っ白な雲に被われている。
メインモニターに、機体の損傷を示す警告が表示され、アラームが鳴っている。

リエ
「クゥッ!うかつだったわ。後ろを取られるなんて…(ケンタを見て)…どう?アイツの動きは?」

真剣な表情で、キャノピーガラスに表示されたディスプレイを見ているケンタ。

ケンタ
「ダメだ、ピッタリくっ付いてくるッ!」

と、再び激しい衝撃!新たな損傷箇所がモニターにディスプレイされる。

ケンタ
「うわっ!…(リエを振り返り)…姉ちゃん、このままじゃ狙い撃ちにされるゾ!」

リエ
「照準が高精度ね…(ケンタを見て)…ここじゃこっちが不利だわ。雲から出るわよッ!」

ケンタ
「ウン!」

操縦捍を引き、機首を持ち上げるリエ。
急角度で上昇するラピッド・スター。

コクピットを取り巻く真っ白な雲が、徐々に明るさを増し始める。
ふっと雲が切れ、ラピッド・スターは雲海の中から真っ青な青空の中に飛び出す。

そのラピッド・スターを追って、排熱ポッドがすぐ後からその姿を現わす!

ケンタ
「(後ろを見ながら)姉ちゃん来たゾ!すぐ後ろだ!!」

ラピッド・スターの機体を霞めてビームの発光が走る!
それを必死にかわすリエ。

リエは先程からモニターで、何か確認しようとしている様子。

リエ
「まだかしら…もうそろそろ見えても良さそうなのに…」

モニターには、機体下部のカメラが捉えた外の映像が映し出されている。
真っ白な雲の波が続いている…

徐々にラピッド・スターとの距離を縮める排熱ポッド。
前部操縦席ではケンタが気が気ではない様子。

ケンタ
「(後ろを見ながら)このままじゃ追い付かれるゾ!何とかしなきゃ!」

それには応えず、リエは相変わらずモニターに注目している。

ケンタ
「姉ちゃん!!」

益々距離を縮めてくる排熱ポッド。一定間隔で機械的にビームを発射してくる。
モニターに注目し続けるリエ。

と、雲の切れ間から下に広がる海面が見える。

リエ
「海だわッ!!」

言うが早いか操縦捍を思いきり引き、スロットルを全開する!
急上昇するラピッド・スター!

ケンタ
「ウワーッ!!」

突然の急上昇に、排熱ポッドはラピッド・スター目がけてビーム砲を連射する!

それをことごとくかわし、大きく弧を描く様に、殆ど垂直に上昇して行くラピッド・スター。宙返りの体勢に入る!

リエ
「ケンタ、ビーム砲準備して!突っ込むわよ!」

ケンタ
「分かった!」

凄まじい振動の中、ケンタは素早くビーム砲の発射準備をする。
機体をきらめかせ、宙返りしながら一気に急降下するラピッド・スター!

リエ
「今よッ!!」

ビーム砲の発射ボタンを押し込むケンタ!
ラピッド・スターの機首、ビーム砲から白熱したビームが、閃光となって発射される!

そのままビームを連射していた排熱ポッドに命中!
ポッドは破片を飛び散らせながら爆発する!!

ケンタ
「やったーッ!!」

雲の渦の中のヴォルカティック。

操縦席。
一台のポッドの反応が消える。

タバタ
「仲々の腕前でございますね。…しかし、その程度ではこのヴォルカティックを倒す事はお出来になれませんでございます…」

ニヤリと笑うタバタ。


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.09.10 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018