SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(174L)
RE:258
雲海。
一面の雲海の上を行くラピッド・スター。

コクピット。
リエの操縦席。

その正面のモニターには相変わらず機体の破損状況を警告するディスプレイが点滅し続けている。

リエ
「…(モニターの表示を見ながら、計器の調整をしている)…大分やられちゃったみたい…エネルギーレベルがダウンして、ビーム砲はもう使えそうもないわ…」

と、前部操縦席のケンタが叫ぶ。

ケンタ
「姉ちゃん、また来たゾ!(モニターを注視する)…3機だ!11時方向から接近!」

リエ
「(憤慨して)全くシツコイんだから…(ケンタを見て)…行くわよッ!」

ケンタ
「ウン!」

高度を落し、雲海の中に突っ込むラピッド・スター!

雲海の下面。
ラピッド・スターが雲の中から姿を現わす。足元には一面の海が広がっている…

彼方、一面の雲が一部切れ、そこから太陽の光が、まるで光のカーテンの様に海に向って伸びている。

そこで、何かが一瞬、キラリと反射光を発する…

コクピット。
彼方の輝きを見つめるリエ。

リエ
「来たわね…」

前部操縦席のケンタ、ミサイルの照準装置をスタンバイし、リエを振り返る。

ケンタ
「準備いいゾ!」

リエ
「(ケンタを見てうなずく)…今の状態じゃ長引くと不利だわ。いい?一気に決めるわよッ!」

ケンタ
「ウン!!」

リエ
「行くわよッ!!」

スロットルを思いきり引くリエ!

タナカ鉄工所。
事務所の片隅に置かれたレーダー・システムのコンソール。
ディスプレイ上にラピッド・スターの位置が刻々と表示されている。

激しい動きを見せるラピッド・スター。
そのラピッド・スターを追う様に、3つの反応が動いて行く。

ユキコ
「反応がまたラピッド・スターに向ってるわ!」

ショウイチ
「(ディスプレイを見て)いかん、ロボットめラピッド・スターに集中攻撃をかけるつもりだ!…(マイクを取り)…リエ!リエ!!」

必死に呼びかけるショウイチ。しかし、ラピッド・スターからの応答はない…

ユキコ
「(不安気にショウイチを見上げ)…あなた…」

ショウイチ
「我々も行くぞ!すぐアース・ムーバーの発進準備を!」

ユキコ
「分かったわ!」

事務所を出て行こうとする二人。
と、事務所の入口にニャンコを抱えたゲンザブロウが大あくびをし、頭を掻きながら立っている。その様子に驚くショウイチとユキコ。

ショウイチ
「(驚いて)お父さん…」

ゲンザブロウ
「(大きなあくび)ファ〜ッ!…いやぁ、すっかり寝込んでしまってな。…(ショウイチ達の真剣な様子を見て)…お?どうしたんじゃ、そんなに慌てて?」

と、ゲンザブロウが腕に抱えていたニャンコが、小さく『クシュッ!』とクシャミをする。

ゲンザブロウ
「(ニャンコを覗き込み)…おや?大丈夫かニャンコ?やっぱりちと寒過ぎたかのう?」

ショウイチ
「寒過ぎたって…一体どこにいたんです?…(考える)…あ〜っ、まさか!」

ゲンザブロウ
「(嬉し気に)…いやぁ、やっぱりエアコンは良いのう。すっかり日頃の睡眠不足を解消したわい。」

ショウイチ
「(憤慨して)…お父さん、みんながボイジャーのエアコンは使うまいって我慢してるのに、何なんですか、ソレ!?」

ゲンザブロウ
「なんなんですか?って何じゃソレは?ワシはボイジャーのエアコン使っちゃイカンなんて言っとらんがのお?」

ショウイチ
「え?だってお父さんが!…ん?」

と、ユキコがショウイチをつついている。

ユキコ
「あなたってば!」

ショウイチ
「(ユキコを振り返り)…何だ?…(思いだしハッとする)あ、そうだ!(ゲンザブロウを見て)…大変なんですよ!!」

ゲンザブロウ
「(良く分からない様子で)…何じゃぁ?」

雲海。
雲海の下面ぎりぎりに、ラピッド・スターが全速力で直進して来る。
と、それまで編隊を組んで直進して来た3機の排熱ポッド、3方向にパッと散開する。

コクピット。
操縦席のリエ、首を巡らせ、散開したポッドの位置を瞬時に確認する。

リエ
「思った通り!…(ケンタを見て)…行くわよッ!!」

ケンタ
「リョーカイッ!!」

一斉にラピッド・スター目がけ、ビーム砲で攻撃をしかけるポッド!
ラピッド・スターの機体を霞めて炸裂するビームの閃光!

ラピッド・スターは、見事な操縦で巧みにその砲撃をかわすと、擦れ違いざまにミサイルを連射、ポッドの1機を破壊する!

海上で爆発するポッド!
破片が飛び散る!

そのまま宙返りするラピッド・スター!
機体を反転させたまま、高度を下げ、残りのポッドを追撃する!

コクピット。
逆さまになったコクピット。
キャノピーガラスの上では、海面が凄まじい速さで後ろへ流れて行く…

リエ
「ケンタ、ミサイルは?」

ケンタ
「…今日はアレしか積んでないんだ。…今ので使い切っちゃった。」

リエ
「(決心してうなずく)…もうまるっきり素手ってわけね。…(考える)…じゃ、マニピュレート・アームでアイツを捕まえて!もう一機にぶつけるのよ!!」

ケンタ
「(一瞬とまどって)…えっ!?…(決意する)…分かった!」

更にスピードを上げる。徐々に一機のポッドに追い付く。

ケンタ
「よおし!」

マニピュレート・アームを伸ばし、ポッドを掴もうとするケンタ。

と、その瞬間、ポッドのレーザー砲がクルリと向きを変え、ラピッド・スター目がけてビームを発射する!

とっさにアームを縮め、ビームを避けるケンタ。

ケンタ
「うわっ!…こいつッ!」

尚もビームを発射しようとするポッドのビーム砲を、アームで叩き飛ばすケンタ!
一方、操縦席のモニターには警告表示が点滅し始める。

リエ
「ケンタ急いで!もうあんまり無理出来ないわ!」

ケンタ
「分かってるって!」

マニピュレート・アームを伸ばし、ポッドをガッシリと掴む!
アームに掴まれて、ポッドの外装がギシギシと変形する!

ケンタ
「(チラリと後ろを見ながら)…いいゾ!」

ケンタの合図に機体をロールさせ、正常な体勢に戻すリエ。
そのまま急上昇する!急角度で上昇するラピッド・スター。

と、残った1機のポッドがビームを発射しながらラピッド・スターを追撃してくる。コクピットのリエは、その攻撃を避けながらタイミングを計る…

徐々に接近するポッド…

ケンタも又、真剣な表情でタイミングを計っている…

リエ
「今よ、アイツにぶつけてッ!!」

ケンタ
「コノォーッ!!」

思いきり、掴んでいたポッドを接近して来るもう1機のポッドに投げつける!
衝突するポッド!

パッと破片が飛び散り、次の瞬間、爆発を起こす!!


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.09.13 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018