SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(172L)
RE:405
空。
渦巻く雲の波の中、ヴォルカティックが、その巨大な姿を空中にそびえさせている…

操縦席。
正面の大型モニターには、排熱ポッドの状況が逐一ディスプレイされている。
と、先の1機に続いて3機のポッドのシグナルが相継いで消える。

その様子に驚くタバタ。

タバタ
「…またヤラれたのでございますか……(虚勢を張る様に引きつった笑いを浮かべる)…ううむ、仲々おやりになりますな…ならば一気に!」

残りのポッドを一斉にラピッド・スター迎撃に向わせようと、コンソールパネルを操作するタバタ。

と、脇のディスプレイに温度上昇が低下している事を表示する警告メッセージが表示される。ハッとしてディスプレイを見る。

タバタ
「…ウゥ…しまったでございます、私とした事が、少しばかりお遊びが過ぎた様でございます。」

キーボードを叩き、温度上昇のシミュレーションをする。
モニター上にグラフが表示され、ポッドの数と温度の上昇の関連を表示する。

タバタ
「(グラフを見ながら)…これ以上排熱ポッドが配置を離れると、温度を上昇させる事が出来なくなりますでございます…」

レーダーモニターを見る。
レーダー上にラピッド・スターの位置が、刻々と表示されている…

タバタ
「…運の強い方でございます…」

空。
再び高度をとり、雲海の上に出たラピッド・スター。

上空には真夏の太陽が照りつける紺碧の青空が広がっているが、足元に広がる雲海の彼方には、巨大な渦を巻く様に雲のうねりが立ち、その中心に巨大な積乱雲が不気味な姿を覗かせている…

コクピット。

リエ
「(ケンタを見て)どう?まだ接近して来る反応はある?」

ケンタ
「(ディスプレイを見ながら)大丈夫、反応なし!」

リエ
「(ため息をつき)…ふぅ〜っ…何とか切り抜けたみたいね。」

コクピットにほっとした空気が流れる。
コクピットの外、巨大な積乱雲を見つめるケンタ。

ケンタ
「何とかしなくちゃ…」

ケンタの声にリエも巨大な積乱雲を見る。
時折雲の下方で何か強烈な光が瞬く。

リエ
「…そうね、これ以上あんな勝手な真似はさせて置けないわ。」

と、コミュニケーターが鳴る。
スイッチを入れるリエ。モニターにショウイチが映る。

ショウイチ
「(ホッとした様に)…おぉ、リエ、良かった、無事だったか。さっきから何度も呼んでたんだぞ!…(覗き込む様な仕草で)…ケンタは?…無事か?アイツ、恐くてションベン モラしてないか?」

と、ケンタが前の操縦席から体を乗りだし、リエの操縦席のモニターを覗き込む。

ケンタ
「(憤慨して)何言ってんダ!父ちゃん、オレを甘く見るなヨ!!」

ショウイチ
「(苦笑しながら)…いやぁ、こりゃ済まなかったな。…(リエを見て)…大丈夫か?」

リエ
「…(微笑みながら)…ええ、こっちは無事よ。でも、危ないトコだったわ。小型のボールみたいな装置が攻撃して来たの…多分あの大きなロボットを取り巻いてる奴ね。何とかやっつけたけど、機体が大分破損して、エネルギーレベルが60%ダウンしてるの。」

リエの言葉に一瞬心配そうな表情を見せるショウイチ。
しかし、それを隠す様に明るく…

ショウイチ
「とにかく無事で良かった。こっちは今、事務所を発進した。…収集したデータを転送してくれ、こっちで分析してみる。」

リエ
「分かったわ。(ケンタを見て)…ケンタ、データの転送を!」

ケンタ
「うん!」

操縦席の前にあるパネルを操作するケンタ。
キャノピーガラスに表示されているモニター画面に『Operational mode: Analyzed-data transmission』の表示。更にパネルを操作し、収集したヴォルカティックのデータを、ランド・チャレンジャーに向って送信する。

ゆっくりと上昇しているアース・ムーバーとランド・チャレンジャー。

ランド・チャレンジャーの操縦席、ゲンザブロウとショウイチがラピッド・スターが送信したデータをモニターで確認している。

モニターには、収集されたデータが次々に表示されて行く…

ショウイチ
「…(モニターを見ながら)…凄い発熱量だ…こんなのが上空にいたんじゃ、東京は…」

真剣な表情でモニターを見つめるゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「…どうやらあのロボット本体と、リエ達が襲われた小型の『取巻き』達の連携で、排熱効果を倍増させる構造になっておる様じゃな…」

ショウイチ
「…機体の表面温度も随分高いですね…400度近くもある…」

ゲンザブロウ
「奴は体全体が巨大なヒーターじゃからな…まともに当っては…(考える)…!(思い付く)…そうじゃ、冷凍弾を使ってみるかの?」

ショウイチ
「冷凍弾?」

ゲンザブロウ
「(うなずく)…そうじゃ。奴の機体表面温度は、異常な程の高温じゃ。これを一気に冷却すれば、機体にかなりのダメージを与える事ができようて。」

ショウイチ
「なるほど、うまく行けば、機体が耐え切れず自爆を起こせるかも知れない…(考える)でも、お父さん、奴は街の上にいるんですよ、あんな処で爆発されたら、街にどんな被害が出るか…」

ゲンザブロウ
「何とか、奴を街から連れ出せればいいんじゃが…」

考え込むゲンザブロウ。と、モニターからリエの声。

リエ
「…お爺ちゃん、あたし達がアイツをおびき出すわ。」

その言葉に驚いてモニターを見るゲンザブロウとショウイチ。

ショウイチ
「待ちなさい、ラピッド・スターは破損がひどすぎる。それに、奴の周りにはまだ『取巻き』が随分残ってる。とても無理だ!」

リエ
「でも、このままじゃ…お願い、お父さん、あたし達にまかせて!」

ショウイチ
「リエ…」

モニターを見るショウイチ。
モニターの中では、リエがニッコリと微笑んでいる。

と、上から体を乗り出したケンタがカメラを覗き込む。

ケンタ
「父ちゃん、オレ達を甘くみるなヨ!」

にっこりと微笑むケンタ。
モニターを見つめるショウイチ。

ショウイチ
「ケンタ…」

ゲンザブロウがショウイチの肩に手をかける。

ゲンザブロウ
「ショウイチ…」

ゲンザブロウを見るショウイチ。

ショウイチ
「…(再びモニターを見て)…(こらえる様に無理に笑顔を作る)…そうだな…甘く見ちゃ…失礼だよな…(決意する)……頼むぞ!」

リエ
「(にっこりと)まかせといて!」

ラピッド・スターコクピット。
操縦席のリエ、彼方にそびえる巨大な積乱雲を見つめる。
前のケンタも又、真剣な眼差しで積乱雲を見ている。

ケンタ
「(つぶやく様に)…甘く見るなヨ…」

シートに座り直し、正面を向くリエ。

リエ
「行くわよケンタ!?」

ケンタ
「まかせろッ!」

スロットルレバーを引くリエ。
ラピッド・スターは一直線に積乱雲に向って発進する!


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.09.15 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018