SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(143L)
RE:102
東京上空。
全速力で海へ向うラピッド・スター。
そのすぐ後ろ、ヴォルカティックの巨大な機体がラピッド・スターを追撃する!
ヴォルカティックの巨大なメインエンジンが噴射するジェットの炎が、周囲の雲を吹き飛ばす!
ラピッド・スターに被い被さる様に、ヴォルカティックの巨体が迫る!
ヴォルカティックは徐々にラピッド・スターとの距離を縮めて行く…
ヴォルカティック操縦席。
ラピッド・スターの発射した消火弾の為に、ヴォルカティック操縦席の強化ガラスは、殆ど視界を遮られている。
操縦席のタバタ、覗き込む様に僅かな隙間から外を見ながら操縦している。
タバタ
「もう逃しませんでございますよ!(ニヤリとして)…こうなればポッド達にも攻撃させて、今度こそ撃墜して差し上げますッ!」
ポッドの現在位置を脇のモニターで確認する。
しかし、そこにポッドの反応は全くない…
タバタ
「ん?…おかしいでございます…ポッド達の反応が一つもございません…(ハッとして)…もしや!」
キッとして正面のラピッド・スターを睨むタバタ。
タバタ
「(引きつった笑いを浮かべながら)…少しばかり…あなた様方を侮っておった様でございますね…(キッとして)…しかし!、勝負は既についております!あなた方は最早、このヴォルカティックの掌中から逃れることは出来ないのでございますッ!」
コンソールパネルのボタンを力任せに叩き込むタバタ!
ヴォルカティックの両肩の装甲が、「ボン!」と音を立てて開き、機体から大型のビーム砲が姿を現わす!
と、一瞬の沈黙の後、凄まじい音を立ててビームが発射される!
ラピッド・スターコクピット。
操縦席のメインモニターに、ドライブ出力低下を警告するアラームが点滅する。
必死に出力を上げようと計器を調節しているリエ。
速度表示はマッハ0.7を示している…
リエ
「ダメだわ、どんどん出力が低下してる…このままじゃ追い付かれちゃう…」
と、前部操縦席のケンタ。
ケンタ
「(モニターを見ながら)後方から熱反応接近!(後ろを振り返り)姉ちゃん、避けろッ、下だッ!!」
そのケンタの声に、反射的に操縦捍を倒すリエ!
次の瞬間、ラピッド・スターの機体を霞める様に、強烈なビームの光が空を切り裂き、凄まじい衝撃波がラピッド・スターを直撃する!!
リエ
「ウウッ!!」
ケンタ
「姉ちゃんッ!!」
海上。
低く垂れ込めた雲海の下に、アース・ムーバーが静止している…
操縦席のユキコ、レーダーモニターを見ながら、気が気ではない様子。
モニターには直進してくるヴォルカティックと、そのすぐ前ですばしこく動いているラピッド・スターの反応が表示されている…
ユキコ
「(コミュニケーターのスイッチを入れ)あなた、このままじゃリエ達が!私達もすぐ発進を!」
モニターのショウイチ、一瞬ためらう様な表情を見せるが、それを押し隠す。
冷静な口調で。
ショウイチ
「ユキコ、奴の爆発が東京に影響を与えない為には、最低でもここまで誘き出すしかない…今は…リエ達の力を信じるんだ…」
ユキコ
「(訴える様に)でも!!」
ショウイチ
「(明るく)…心配するな、アイツの操縦は天下一品だ。ジャンクのロボットなんかにやられるもんか…」
ふっと視線をそらすショウイチ、一瞬苦痛の表情を見せる…
ユキコ
「(その様子を見て)あなた……分かった…(明るく)あたしもあの子達を信じる。…そうよね、親のあたし達が信じてあげなくちゃね…」
ショウイチ
「(大きくうなずく)うん!!」
ランド・チャレンジャー操縦席。
ゲンザブロウ
「(ショウイチを見て)いいか?冷凍弾はかなり近距離から、集中的に使用しないと効果が充分に発揮できんぞ。充分引き付けるんじゃ。」
ショウイチ
「分かりました。」
照準スコープを覗き込むショウイチ。
と、はるか彼方に小さな黒い点が現われる。
それはみるみる大きくなり、やがてヴォルカティックの巨体と…
その前に小さなラピッド・スターの機体。
エンジンから煙を噴き上げているラピッド・スター。
ショウイチ
「リエ!ケンタ!」
ラピッド・スターコクピット。
コンソールのモニターには各部の損傷状況が表示され、画面のあちこちで機体の不調を知らせる警告表示が点滅を繰り返している…
リエ
「ダメだわ、いよいよ出力が落ちてきた…(悔し気に)後、もうちょっとなのに…」
ケンタ
「まただ!後方から熱反応ッ!」
リエ
「ダメだわ、機体が思う様に反応してくれないッ!!」
ケンタ
「姉ちゃん、来るぞッ!」
リエ
「ダメ、間に合わないッ!!」
思わず目を閉じるリエ!
その瞬間、ラピッド・スターの機体のすぐそばで、凄まじい発光が起こる!
ヴォルカティックの発したビームを、もう一つの強力なビームが迎え撃つ!
ビームとビームの衝突が、凄まじい光と衝撃波を周囲に生み出す!!
リエ
「キャーッ!!」
ケンタ
「ウワーッ!!…ウグッ!!…(まぶしさをこらえながら、もう一方のビームが発射された方向を見る)…あ…(表情が輝く)…やったあ!ランド・チャレンジャーだッ!!」
ヴォルカティック操縦席。
前方を見ているタバタ。前方のランド・チャレンジャーを見る。
タバタ
「やはり、いらっしゃいましたね…いよいよ勝負でございますッ!!」
ラピッド・スターコクピット。
コミュニケーターが鳴る。スイッチを入れるリエ。
モニターにショウイチが映る。
ショウイチ
「(微笑み)…良く頑張ったな…さあ、早くランド・チャレンジャーの後ろへ下がりなさい。後はお父さん達にまかせるんだ。」
リエ
「お父さん…(一瞬、その瞳に感情の揺らめきが現われるが、それを隠して明るく)…ウン!(ケンタを見て)…あともう一息、行くわよッ!」
ケンタ
「リョーカイッ!!」
後ろを向き、握り拳から親指を突出し、リエに合図するケンタ。
にっこりと微笑む。リエも笑顔でそれに応える。
力を振り絞り、出力を上げるラピッド・スター。
遂にランド・チャレンジャーの横をすり抜ける!
〜 つづく 〜
~ 初出:1994.09.25 Nifty Serve 特撮フォーラム ~