SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(154L)
RE:187
空。
雲の間を小さな黒い物体が飛行している。
ドクター・ジャンクのコウモリ・ロボットである。

操縦席。
操縦席正面の自動操縦モニターに、航路図が表示され、そのロボットの座標を示す表示が、刻々とその位置を変えている。

操縦席のジャンク。
操縦を自動操縦装置に任せ、前方の空を暫く見つめる。

ふと、脇のシートに手を伸ばす。
シートの上には古びた数冊のノートや、設計図が置かれている。

設計図を手に取るジャンク。
古びて変色したその設計図はロボットのものである…

設計図を見つめるジャンク。

と、自動操縦装置が目的地への接近を知らせ、アラームをあげる。
遠くに白雪を頂く山脈を望む、一面の針葉樹林が眼下に広がっている…

その針葉樹林を見つめ、つぶやくジャンク。

ジャンク
「再び此処に来ようとはな…」

自動操縦を解除し、操縦捍を倒しながら、一気に高度を下げて行くジャンク。
コウモリ・ロボットは機体を翻し、針葉樹林へ降下して行く…

針葉樹林。
森の中に、少しばかりの野原が開けている。
と、周囲の森から、数羽の小鳥が鳴きながら飛び立つ。

一瞬の沈黙の後、微かにジェット音が聴こえ始める。
音は徐々に大きくなり始め、やがてジャンクのコウモリ・ロボットが、野原の中央にゆっくりと垂直降下して来る。

野原の草が、ジェット噴射の巻き起こす風で、まるでさざなみの様に波打つ。
着地するロボット。

そのエンジンが停止すると、辺りは再び静けさを取戻し、うららかな日の光が降り注ぐ野原には、何処からか鳥のさえずりが聴こえて来る…

ロボットの機体の扉がゆっくりと開く。
降り立つジャンク。ゆっくりと森の中に入って行く…

森の中。
ジャンクが手にノートや設計図を抱えてやって来る。
周囲から少し盛り上がった、小さな丘の裾野に出る。

その少し木陰になった中に、雑草に埋もれながら、腰の高さ程の一本のクロームの円柱が、木漏れ日を浴びてキラキラと輝いている…
その円柱の表面には

『"Sturm" 2000.10.23』

の碑銘…
円柱を見つけたジャンク。円柱に近付くと、雑草を払い除ける。

懐から円柱と同じく、クロームの小さな円盤を取り出すジャンク。
円盤の表面には、何か幾何学的な文様が、びっしりと細かく刻印されている。

その円盤を暫く見つめる…

円柱の先端部、斜めにカットされた断面に手を置くと、小さな音を立てて側面のハッチが開く。
その中のホルダーに手にした円盤をはめ込む。

と、円盤の周囲のメカニズムが複雑な動きを見せ、LEDがチカチカと瞬き始める。
それに一瞬遅れて、丘の裾の一部がゆっくりと沈み始め、入口が現われる。

中に入って行くジャンク。

暗い空間。
照明の少ない、薄暗い空間が広がっている。

内部はあちこちに鉄骨がむき出しになっており、丁度、巨大な格納庫内部を思わ
せる雰囲気である。

その薄闇の中に、何か巨大な物体が見える…
暗い照明に反射して、その物体の表面が鈍い光を発している…

暗闇の中に浮び上がったのは、壊れた古ぼけた巨大なロボットである…

鉄の扉がきしむ様な音を立てて開く。
格納庫の中に入って来るジャンク。

薄暗い空間にたたずむロボットを見上げる。

ジャンク
「戻って来たぞ、シュトゥルム…」

ロボットは薄闇の中、鈍く機体を輝かせながら、佇んでいる…

晴海埠頭。
キャムロン達の大規模な撮影が行われている埠頭の倉庫街。
そこから少し離れた倉庫の脇に、パトカーが停まっている。

その後ろに警視庁科学捜査一課のロボット・チームの姿。
辺りは撮影に使われる火薬の爆発音が、時折周囲の空気を震わせる様に響いている。

オオツカ警部がロボット達に指示を与えている。

オオツカ
「(見上げて)…いいか皆んな、これだけの台数のダロスが集結するのは、アメリカ国外ではこれが初めてだ。もし万が一、ダロスが奪われる様な事にでもなれば、その後の事態は予測がつかない。…それに、ドクター・ジャンクの動きも心配だ。アイツの事だ、この機会を見逃すとは思えん、きっと何か仕掛けて来る筈だ。充分注意して警備に当ってくれ。」

ロボット・チームのリーダー機、ワンディムがオオツカを見下ろす。

ワンディム
「判りました、警部。ダロスは我々が必ず守ります!」

オオツカ
「(うなずく)…頼んだぞ。」

ホバリングを開始、配備に付く為に、移動を開始するロボット達。

オオツカはドアを開けてあったパトカーのシートに座り、インカムを付けると、ターミナルを操作する。

オオツカ
「…それでは、各員に警備位置を指示する。」

ターミナルのキーボードを叩くオオツカ。

ターミナルのモニターに、付近の地図が表示され、撮影現場の周囲を囲む様に、
3機の配置位置が表示される。

オオツカ
「ワンディム、お前は貿易センター正面ゲート前から1号機をガードしてくれ。」

ワンディム
「判りました。」

オオツカ
「トゥース、サーディー、お前達は西洋倉庫脇と晴海三丁目交差点脇で、それぞれ2号機、3号機をガードだ。」

トゥース/サーディー
「了解!」

オオツカ
「周囲は建物が密集していて見通しが利かない。各員はアクティブ・スキャナを使用、常に警備対象を確認する様に。」

一同
「了解。」

オオツカ
「…それから、くれぐれも撮影の邪魔はするな。(ニヤリとして)特にトゥース、お前は任務を忘れるんじゃないぞ。」

トゥース
「(不満気に)…警部!私は別に…」

オオツカ
「応答は?…了解したのか!?」

トゥース
「(不満気に)…了解!」

と、横を平行してホバリングしていたサーディー。

サーディー
「(いたずらっぽく)…どうやら先手を打たれてしまった様ですね、トゥース?」

トゥース
「何言ってるんだ、私は任務と個人的な興味を混同する様な事はしないぞ!」

サーディー
「そうでしょうか?最近のあなたの行動パターンを分析すると、個人的な興味が、任務に優先したと思われる事例が3件…」

トゥース
「(サーディーの言葉を遮り)ゴチャゴチャ言うな、うるさいぞ!」

ワンディム
「お前達、私語を謹め!今は任務遂行中だぞ!」

トゥース/サーディー
「了解!」

大通りから3方に別れ、それぞれ待機地点に向うロボット達…

パトカーのオオツカ、モニターでワンディム達の位置を確認する。
予定の位置につくロボット達。

腕組みをし、顎を撫でながらつぶやくオオツカ。

オオツカ
「…来るなら来てみろドクター・ジャンク、今度こそお前を追い詰めてやる!」


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.10.23 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018