SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(234L)
RE:NON
空。
秋の青空の中、眼下に点在する綿雲を見下ろしながら、リエの操縦するラピッド・スターが一直線に飛行している。

日差しを受け、時折その機体がキラキラと輝いている…

コクピット。
正面のメインモニターを見ているリエ。

モニターのディスプレイには、機首のモニターカメラが捉えた映像が表示されている。その周囲には、様々なディスプレイ・ウィンドーが、機体各部のセンサーが送り出す情報を刻々と表示し続けている…

操縦席脇のコミュニケーション・システム。

先程から頻りに呼出しのコール音が鳴り続けており、
『Communication signal arrival』
のメッセージがディスプレイに点滅を繰り返している。

しかし、リエは一向に応答しようとしない。
思い詰めた様な表情で前方を見つめるリエ…

リエ(心の声)
「ごめんね、皆んな…」

正面に煙がもうもうと立ち上っているのが見える。
その煙の中、時折強烈なビームのきらめきが、まるで稲妻の様に光っている…

その煙の中から姿を現わすシュトゥルム。
その姿を見るや否や、リエの表情が厳しさを増し、思いきり操縦捍を切る!

日差しにその機体をきらめかせ、身を翻しながら、シュトゥルム目がけて一気に
急降下するラピッド・スター!

タナカ鉄工所。
事務所。

片隅のコミュニケーション・システム・コンソールの前で、先程からショウイチとユキコが、必死にラピッド・スターのリエを呼び出している。

しかし、ラピッド・スターからは一向に応答がない…

ショウイチ
「ダメだ、全然応答がない…」

ユキコ
「(つぶやく様に)あの子、やっぱり納得してくれてなかったんだわ…」

ショウイチ
「リエの奴…全く頑固さにかけちゃ、お父さん以上だからな…」

黙って顔を見合わせるショウイチとユキコ。
と、外からゲンザブロウが帰って来る。

ゲンザブロウ
「(ショウイチ達の様子を見て)どうした?どうやら何かあった様じゃな?」

ユキコ
「あ、お父さん。それが、リエが一人でシュトゥルムに…」

ショウイチ
「済みません、私達がいながら…」

ゲンザブロウ
「リエが…そうか…(考え)…仕方あるまい、リエももう子供ではないんじゃからな…しかし、このままリエを一人でシュトゥルムに立ち向わせる訳にはいかん。(二人を見て)…ワシらもすぐに発進じゃ!」

ショウイチ
「分かりました。(ユキコを見て)ユキコ、すぐにアース・ムーバーの発進準備を!」

ユキコ
「(うなずき)分かったわ!」

工場へ向うユキコとショウイチ。その二人の後ろ姿を見送るゲンザブロウ。
ふと、遠くを見る様な目付きをする…

と、ケンタが大慌てで事務所に駆け込んでくる。

ケンタ
「(息を切らせて)爺ちゃん大変だッ!ジャンクのロボットが!!」

ゲンザブロウ
「(ケンタを見て)おお、ケンタ帰って来たか!(疑いの眼差しで)…ん?それはそうとお前、こんな時間に帰って来るとは…学校はどうしたんじゃ?」

ケンタ
「(ゲンザブロウの視線に気付き)…ウ、爺ちゃんオレが学校サボったって思ってんだろ!(ムキになって)…ちがうゾ!キンキュウゲコウだゾ!ロボットがこっちに向って来るんだってバ!」

ゲンザブロウ
「(微笑む。真顔になりうなずく)ウム。…さあ、お前も一緒に来るんじゃ!」

ケンタ
「ウン!!」

工場へ向う二人。

街。
凄まじい勢いで空に向けてビームを連射するシュトゥルム!
そのビームを危うくかわしながら急上昇するラピッド・スター!

コクピット。
衝撃に襲われるコクピット!

必死に操縦捍を引き、最大角度で急上昇を続けるリエ。
コクピットに失速を警告するアラームが鳴り続けている。

ブルブルと機体全体に振動が走る。
加速による重圧がリエを襲う!

リエ
「グッ!!」

尚も上昇を続けるラピッド・スター。
その機体を霞めてシュトゥルムのビームの閃光が走る!

ラピッド・スターの機体を襲う激しい衝撃!

やっとの思いでシュトゥルムのビームを振り切る。
黒煙を潜り抜け、上昇するラピッド・スター。

上空。
危うく態勢を立て直したラピッド・スター。上空を高度を取りながら旋回する。

コクピット。

リエ
「ダメだわ、このままじゃ近付けない…」

コンソールパネルを操作するリエ。
メインモニターに搭載装備のリストが表示される。

『Additional equipment:Anti-radar missiles (5 bullets)/
Air-hardener (10 capsules)/ Luminescent bullet (10 bullets)』

リストを見ていたリエ、何か思い付いた様子。
コンソールパネルを手慣れた手つきで操作する。

リエ
「見てなさい、いま動きを止めてやるわッ!」

メインモニター。
前部カメラの捉えた映像上に、ターゲットスコープが浮び上がる。
コンソールパネルを操作するリエ。

モニター上に表示されたメニューから発光弾を選択する。

操縦捍を一気に倒すリエ。
ラピッド・スターが機体を翻しながら急降下してゆく!

昭和通り。
通りは周囲に渦巻く煙に被われ、すっかり見通しが悪くなっている。
その煙の中、何台ものパトカーや警官隊の乗ったトラックが、サイレンを鳴らしながら到着する。慌ただしく配置につく警官達。

遅れて一台のパトカーが到着する。
ガルウィング・ドアを跳ね上げ、降り立つオオツカ、イマイズミ。
と、彼らの後方、煙の中に2つの大きな影が現われる。

ワンディムとサーディーの姿。

イマイズミ
「(前方を見上げ)け、警部…ス、凄いでスよ、アイツ。前よりも強力になってるみたいでスよ。」

百貨店の建物の影から姿を現わすシュトゥルム。
再び上空に向けて強烈なビームを発射する!
その姿を見上げるオオツカとイマイズミ。

オオツカ
「(うなずき)…ああ。(ワンディム達を振り返り)頼むぞ、ワンディム、サーディー。今奴を止められるのは、お前達をおいて他にはいないんだからな。」

オオツカを見下ろすワンディム。

ワンディム
「分かっています警部。今度こそ必ず奴を追い詰めてみせます。」

オオツカ
「頼むぞ!」

ワンディム、サーディー
「了解!!」

と、イマイズミがワンディムを見上げる。

イマイズミ
「(心配そうにワンディムを見上げ)…なぁ…」

ワンディム
「(イマイズミを見下ろし)はい?」

イマイズミ
「…あんまり…無茶な事するなヨ…」

ワンディム
「(イマイズミを見て)イマイズミさん…(嬉しげに)ありがとうございます!」

脚部のバーニア・カバーを開き、体勢を下げ走行形態を取るワンディム達。
周囲に砂塵が巻き起こる。ホバリングを開始、走り出すワンディムとサーディー。
その姿を見送るオオツカとイマイズミ。

イマイズミ
「頑張れーッ、ワンディム、サーディーッ!!」

裏通り。
ドライブをサイレンスモードにし、地上すれすれをゆっくりとホバリングしながら進むラピッド・スター。そのジェット噴射が紙切れや砂塵を巻き上げる。

コクピット。
キャノピーガラスに周囲の雑然とした町並みが、歪みながら映っている。
ゆっくりとその景色が動いて行く…

モニターに周囲の探査情報がディスプレイされている。
シュトゥルムとの相対位置を調べているリエ。

リエ
「(モニターを見ながら)…この交差点なら!」

操縦捍を右に切り、大通りに出る。
その瞬間、地上すれすれで小型ミサイルを発射するラピッド・スター!
白い航跡を引きながら、ミサイルが彼方のシュトゥルム目がけて一直線に飛ぶ!

リエ
「行くわよッ!!」

次の瞬間、ヴァーティカル・ジェットを一気に最大噴射すると、殆ど機体を横転
させながら再び先程の裏通りに戻るや、スロットルを全開するリエ!

メインドライブを全開し、地上すれすれを、凄まじいスピードで疾走するラピッ
ド・スター!

交差点。
地上すれすれを疾走して来たラピッド・スター、ビルの壁面を駆け登る程の勢い
で、その機体を道なりに急転回させる!
ビルの窓ガラスが衝撃でブルブルと震える!

コクピット。
凄まじい重力加速度がリエを襲う!
その加速度に必死で耐えながら、限界まで操縦捍を引き寄せるリエ!!

八重洲通り。
ビルの影から八重洲通りに姿を現わすシュトゥルム。

と、その瞬間、突然シュトゥルムの足元を二条の航跡がすり抜け、殆ど直角に上昇!
シュトゥルムの背後で凄まじい閃光を発する!!

突然の閃光にシュトゥルムも思わず閃光の方向を振り向く。

その時、交差点の角から凄まじい勢いでラピッド・スターが飛び出す!!

コクピット。

リエ
「行けーッ!!」

思いきり発射ボタンを押し込むリエ!

機体。
カプセルを打ち出すラピッド・スター!!

八重洲通り。
背後を振り向いていたシュトゥルム、気配に気付いて振り向こうとする。

その瞬間、シュトゥルムの機体のあちこちでラピッド・スターの打ち出したカプセルが破裂、
中の液体が飛び散る!
空気と反応し、激しく煙を噴き上げる液体!忽ち硬化するエア・ハードナー!

そのシュトゥルムの横をすり抜ける様に、機体を日にきらめかせ、殆ど直角に上昇するラピッド・スター!!

コクピット。
操縦捍を一杯に引き続けるリエ!
横を見る。

リエ
「やった!うまく行ったわッ!!」

嬉しそうなリエ。


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.02.03 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018