SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(216L)
RE:NON
八重洲通り。
ラピッド・スターの発射したエア・ハードナーに、その機体を固着させられてしまったシュトゥルムが立ち尽くしている。

その機体からは、尚も激しい化学反応の名残である白煙がうっすらと立ち上っている…

突然の出来事に、その様子を呆然と眺めるオオツカ、イマイズミ、それに警官達。

イマイズミ
「(呆然としながら)…警部、こ、コレは一体?…す、凄い…(我に返り)そうだ!飛行機…警部、あの飛行機はッ!?」

オオツカ
「(空を見上げ)…また…彼らか…」

イマイズミ
「(怪訝そうにオオツカを見て)…彼ら?…警部、一体あの飛行機、どこの所属なんでス?それに誰が操縦しているんでス?」

オオツカ
「(前方を見つめたまま)…私にも分からん。…ただ、これだけは言える。…(イマイズミを見て)…彼らは…我々の味方だ。」

イマイズミ
「味方…」

空を見上げるイマイズミとオオツカ。
その視線の先を、ラピッド・スターが機体を日差しにきらめかせて横切る…

ラピッド・スターコクピット。
機体を傾け、静止したシュトゥルムの上空を旋回するラピッド・スター。

キャノピーガラス越しにシュトゥルムの様子を見ているリエ。
さすがにほっとした表情。

リエ
「どうやらうまく固まってくれたみたいだわ。もう大丈夫!」

空間。
球形に歪んだ空間に、一つの人影が浮かんでいる…
周囲の空間には、青空と町並みが映し出されている。
その風景を凝視しているその人影…

シュトゥルムの亜全周スクリーンを見つめる操縦席のドクター・ジャンク。
シュトゥルムの周囲を旋回している、ラピッド・スターの映像を見つめる。
その口元に不敵な笑みが浮かんでいる…

ジャンク
「フッ、ゲンザブロウのメカめ…(ニヤリとして)…このシュトゥルムにエア・ハードナーだと?……」

ゆっくりと腕を動かすジャンク。
そのジャンクの周囲で何組ものセンサー・ヘッドが、レーザースキャナの点滅を輝かせながら、そのジャンクの動きをスキャンして行く…

八重洲通り。
機体をエア・ハードナーで固着させられ、動きを封じられたシュトゥルムが交叉点の真ん中に立ち尽くしている…

その機体のあちこちで、微かに何かが剥落する様な音がし始める…
徐々に音は大きくなり、やがて機体のあちこちで、表面を被っていたエア・ハードナーにひびが入り、破片が地面に落下し出す。

オオツカ
「何ッ!!」

イマイズミ
「警部、ロボットがッ!!」

上空。
シュトゥルムの周囲を旋回しているラピッド・スターのコクピット。
モニターを見ているリエ。

モニターには地上のシュトゥルムの機体がアップで映し出されている。
その機体のあちこちで、表面を被っているエア・ハードナーがバラバラと崩れ出
している…

その様子に驚くリエ。

リエ
「エア・ハードナーがッ!!…」

八重洲通り。
更に剥がれ出すエア・ハードナー。大きな破片が次々に落下する。

エア・ハードナーをものともせず、ゆっくりと腕を動かすシュトゥルム。
バラバラと落下するエア・ハードナーの破片!

遂にシュトゥルムの腕が自由になる!

オオツカ
「(驚愕して)…なんて奴だ…あの状態から抜け出すとは…(我に返り、パトカーのコミュニケーション・システムのインカムを取る)…ワンディム、サーディー、迎撃体勢!奴が抜け出したら即時攻撃をッ!」

ワンディム、サーディー(声)
「了解!!」

八重洲通り。
通りの中央に並んだワンディムとサーディー。アームガンを構えている。
その背中の対戦車バズーカに、砲弾が装填される。

凄まじい力で地面に固着されている脚部を引き抜くシュトゥルム!
脚を被っていたエア・ハードナーがアスファルトの路面ごと持ち上がる!

大きな塊となって剥落する脚部のエア・ハードナー!

遂に自由になったシュトゥルムは再びゆっくりと前進を始める。
その足音が地鳴りとなって周囲のビル街を震わせる!

パトカー前。
コミュニケーション・システムの前のオオツカ。インカムから指示を出す。

オオツカ
「(シュトゥルムを見ながら)攻撃ッ!!」

ワンディム、サーディー(声)
「了解!!」

八重洲通り。
シュトゥルムに向って一斉攻撃を開始するワンディム、サーディー!
周囲に凄まじい轟音が轟き、もうもうたる硝煙が立ち込める!

次々にシュトゥルムの機体に炸裂するワンディム達の攻撃!
しかしシュトゥルムはその攻撃を全く受け付けない。

サーディー
「ワンディム、ダメです!奴はこの間よりも装甲がかなり強化されている様です。我々の攻撃も殆ど効果がありませんッ!」

ワンディム
「弱音を吐くな!奴とて何処かに必ず弱点があるはず。探すんだ!」

サーディー
「了解ッ!!」

攻撃を続行しながら、一斉にセンサーシステムを作動させるサーディー。
総てのシステムを使い、シュトゥルムの機体を探査し始めるサーディー…

ワンディム達の攻撃を受けながら、尚も前進を続けるシュトゥルム…
その胸部のビーム砲が再び輝き始める。ビームの発射態勢に入るシュトゥルム。

ゆっくりと前進するシュトゥルム…
攻撃を続けながらも、じりじりと後退するワンディム、サーディー…

オオツカ
「いかんッ!(インカムを近付け)注意しろ!奴め、またビームを使うつもりだぞッ!!」

輝きを強めるシュトゥルムの胸部ビームユニット…
じりじりと後退するワンディム、サーディー…

その瞬間、凄まじい衝撃音と共に、突然シュトゥルムが吹っ飛ぶ様にバランスを崩す!
ビルに倒れかかるシュトゥルム!頭からビルに突っ込む!

ガラスと鉄材で被われたビルの壁面が、シュトゥルムの重さに耐え切れず、ガラガラと崩れる!
周囲に凄まじい土煙が巻き起こる!

その煙の中、ジェットの炎を白く輝かせながら、マニピュレート・アームを突き出したラピッド・スターが空を駆け登って行く!

シュトゥルム操縦席。
スクリーンに映し出されるラピッド・スター。
怒りもあらわにそれを見つめるジャンク。

ジャンク
「おのれッ、もう許さんぞッ!!」

ビル街。
倒れた態勢のまま、突如強烈なビームを上空に向けて発射するシュトゥルム!
凄まじい旋風が周囲に渦を巻く!

周囲に立ち込める煙をその旋風で吹き散らし、轟音と共に空を貫くビームの輝き!

上空。
尚も急角度で上昇を続けるラピッド・スター!

コクピット。
凄まじい重力加速度にラピッド・スターの機体が小刻みに震え続けている。
キャノピーガラスの外を、綿雲が次々に飛び去って行く…

突然、周囲が閃光に包まれる!
ラピッド・スターの機体をかすめる様に、強烈なビームの輝きがよぎる!

次の瞬間、凄まじい衝撃がラピッド・スターを襲う!!
バランスを崩す機体!

リエ
「キャーッ!!」

必死に操縦捍を握るリエ。
必死に機体を立て直そうとする。
コンソールのあちこちでアラームが鳴り響く。

ビル街。
倒れたシュトゥルム、狂った様に上空に向けてビームを連射する!!

操縦席。
腕を一杯に伸ばし、手の甲に貼り付けられたシールの様な電極をタッチするジャンク。
電極に取り付けられたLEDが、ジャンクが触れる度に輝く。

それに合わせてスクリーンの外では、シュトゥルムのビームのきらめきが周囲を閃光で満たす!!

ジャンク
「今日こそ、今日こそとどめを刺してやるッ!!」

上空。
機体をロールさせながら空をよぎるラピッド・スター。
一瞬その機体が日の光を受けてキラリと輝く。

その直後、ラピッド・スターを追いかけ、シュトゥルムの強烈なビームの輝きが
空に光の弧を描く!

ラピッド・スターコクピット。
スロットルを全開し、最大速度で飛行するリエ。
コクピットを霞める様に、閃光が機体の至近距離をすり抜ける!
一瞬遅れて凄まじい衝撃がコクピットを襲う!!

リエ
「クッ!!」

必死に操縦捍を引き、出力を更に上げるリエ!
主翼の先端が凄まじい加速に、白い煙の尾を引き始めている…
コンソールのあちこちで、機体の性能限界を警告するアラームが点滅し始める!

リエ
「お願い、頑張って!!」

連続的に襲いかかる強烈なビーム!
必死にそれをかわすリエ!

しかし突然、機体全体に衝撃が走り、キャノピーガラスにパッと油が飛び散る!
一瞬の後、機体後部で凄まじい爆発音が轟く!!

リエ
「キャーッ!!」

機体のコントロールを失い、機体後部から真っ黒な煙を噴き上げながら、まっ逆さまに墜落を始めるラピッド・スター!

コクピット。機体の損傷を警告するアラームや、失速を警告するアラームがうるさいほど鳴り響いているコクピット。操縦席のモニターは半分ほど使用不能になっている。

必死に態勢を立て直そうとするリエ!
しかし、そのリエの努力も空しく、機体はきりもみ状態に陥る!

リエ
「このままじゃ…このままじゃ墜落しちゃう!!」

油で汚れたキャノピーガラス越し、眼下に広がる町並みがぐるぐると渦を巻ながら凄い勢いで近付いて来る…

真っ黒な煙を噴きながら落下してゆくラピッド・スター…


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.02.19 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018