SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(191L)
RE:654
八重洲通り上空。
シュトゥルムと相対し、臨戦態勢のまま沈黙を続けるアース・ムーバー。

シュトゥルムもまた、そのアース・ムーバーと正対したまま沈黙している…
街に不気味な沈黙が流れる…

八重洲通り。
通りの真ん中で待機しているワンディム、サーディー。

アームガンと背中の対戦車バズーカをシュトゥルムに向けて構えたまま、シュトゥルムとアース・ムーバーの挙動を、まるで息を飲むかの様に見守っている…

サーディーの機体のあちこちからはセンサーアンテナが伸びており、一部はゆっくりと回転している…

サーディーを見るワンディム。

ワンディム
「どうだ、サーディー?分析の状況は?…」

サーディー
「…待って下さい…情報が多すぎて…処理に…時間が…」

ワンディム
「(心配そうに)…大丈夫か、サーディー?MPUの言語コントロール回路まで解析に回している様だが…」

サーディー
「(力強く)大丈夫!…このまま…続けさせて下さい…必ず…奴の弱点を…」

ワンディム
「サーディー…(決意する様に)…分かった。お前の反応が鈍った分は私がカバーする、だからこのまま分析を続けるんだ!」

ワンディム、機体を前進させ、サーディーを庇う様に前に出る。

サーディー
「(嬉し気に)ありがとう…ワンディム…」

分析を続けるサーディー…

パトカー前。
シュトゥルムの様子を固唾を飲んで見守っているオオツカ警部、イマイズミ刑事、それに警官隊の面々。

オオツカ
「一体何が起こっているんだ…彼らの間で、何かのやり取りがなされているのか?…」

チラと腕時計を見るイマイズミ。

イマイズミ
「…けど、もうすぐ5分でスよ、警部?…いくら何でも少しヘンじゃないでスか?」

オオツカ
「ああ…(インカムを取り)…ワンディム、サーディー油断するな。少しでも不審な動きがあれば何時でも攻撃出来る様に、応戦態勢は継続させておけ!」

ワンディム(声)
「了解!」

再びシュトゥルムとアース・ムーバーの動きを見つめるオオツカ…

上空。
空中に静止しているアース・ムーバー。

大型のヴァーティカル・ジェット・エンジンの低い排気音が、却って周囲の沈黙を感じさせている…

ランド・チャレンジャー操縦席。
モニターに映し出されているドクター・ジャンク。
その映像を前に沈痛な表情のゲンザブロウ、そしてショウイチ…

ゲンザブロウ
「…何故だ、ウォルフシュタイン…君の目的は…実験は結果が出たのではないのか?達成された筈ではないのか?…ならば、ならば何処に、これ以上の破壊を続ける必要があると言うのだ?…」

モニター。
目を閉じ、ゲンザブロウの言葉に耳を傾けているドクター・ジャンク…

ゲンザブロウ
「答えてくれ、ウォルフシュタイン!」

モニター。
ゆっくりと目を開くドクター・ジャンク。

ジャンク
「ゲンザブロウ…まだ君との勝負が決着していないからだ…」

ゲンザブロウ
「(驚き)なんじゃと…」

八重洲通り。

【イメージ】
大通りの中央で不気味な沈黙を続けるシュトゥルム。
視点はそのシュトゥルムに吸い寄せられる…

鋼鉄の機体を通り抜け、操縦席、亜全周スクリーンを前にしたドクター・ジャンクの姿を映し出す。

シュトゥルム操縦席。
ゆっくりと顔を上げるドクター・ジャンク。正面を見据える。

ジャンク
「ゲンザブロウ、私はロボット工学の道を志した時から、常に世界最高の研究者を目指して来た…私は自分の頭脳と…何よりこの並外れた技術力に絶大な誇りを持ち続けて来た!…(顔を伏せる)…だがその私の誇りを常に傷つけ、曇らせて来たのが、ゲンザブロウ、お前だ…あんな地味な研究をしながら、何故だ、何故お前はあれ程の賞賛を受け、この私があれ程の屈辱を受ける!(感情を高ぶらせ)…認めんッ!!…私は決して認めない!…お前の才能!お前の研究!…私は否定する!お前の進む道をッ!!」」

モニター。
アース・ムーバー操縦席のゲンザブロウが映っている。
ジャンクを見つめるゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「ウォルフシュタイン…」

ゆっくりと顔を上げるドクター・ジャンク…

ジャンク
「…(不敵な笑みを湛えながら)…だがな…長年のこの恨みも、遂に晴れる時が来た様だ。……フッフッフ、既に君のメカニックが1機、このシュトゥルムの力の前にひれ伏した。…可愛らしいお嬢さんが操縦していたな(嘲る様に)……ひょっとすると、あれは君のお孫さんだったのかな?」

ランド・チャレンジャー操縦席。
ドクター・ジャンクの言葉に、怒りをあらわにするゲンザブロウ!
モニターのジャンクを睨み付ける!

ゲンザブロウ
「ウォルフシュタインッ!!」

シュトゥルム操縦席。
スクリーンに浮かぶアース・ムーバーの姿を見つめているドクター・ジャンク。

ジャンク
「…後はそのメカニックを破壊しさえすれば、私の復讐は完成する。このシュトゥルムが勝利する時、それは同時に私の、君に対する勝利でもあるのだ…」

ランド・チャレンジャー操縦席。
モニターを見つめていたゲンザブロウ、顔を伏せる…

ゲンザブロウ
「…では……では、どうあっても…このまま…立ち去る事は出来ぬと……」

モニター。

ジャンク
「…残念だが、ゲンザブロウ。我々の間には既にどうしようもない隔たりが出来てしまっているのだ。我々の間に最早和解という言葉はない。勝利か敗北か…そのどちらかがあるだけだ…」

ゲンザブロウ
「…ウォルフシュタイン…」

屋上。
不時着したラピッド・スター。
ドライブシステムのカバーを外し、ケンタが中にもぐり込んで何やら一生懸命修理をしている。リエは心配そうにそのケンタの修理の様子を眺めている…

リエ
「(心配そうに)…ケンタ、ホントに大丈夫なんでしょうね?いきなり爆発なんて私、イヤだからねッ!」

ドライブシステムに体半分突っ込んだケンタ、そのままの態勢で応える。

ケンタ
「(不満気に)…ナニ言ってんダ!姉ちゃんがドーしてもって言うから、コーやって修理してやってんのにッ!…そんな事言うんだったら、修理してやんないゾッ!」

リエ
「(慌てて)あ、ソンなつもりじゃないんだってバ!…ヤだなぁ、ケンタったら怒っちゃって。冗談よ、冗談。」

危うげな照れ笑いをするリエ。

ケンタ
「ホントか?…姉ちゃんは、そういうしゃべりかたする時は、大体ホンネだゾ。オレの目はゴマカせないゾ!」

ケンタの鋭い分析にたじろぐリエ…

リエ
「………」

ケンタ
「…よーし、出来たゾ!」

リエ
「ホント!?ホントに直ったの!?」

ドライブシステムから体を抜き出すケンタ。

ケンタ
「(自慢気に)…当り前だぜッ!…でもホントに応急だからナ。ドライブの反応をムリヤリ固定するように調整してるんだ。無理は全然出来ないし、出力の調整もダメだからね。…スゲーアブナいけど、今はこれが精一杯なんだ…」

リエ
「(うなづき)…分かった。…感謝するわ、ケンタ。…ありがとう。」

ケンタ
「オレはラピッド・スターのコーパイだゾ。当り前の事だゼ!」

リエ
「(嬉しそうにうなずき)…じゃ、行くわよッ!!」

ケンタ
「ウン!爺ちゃん達を助けに行こうゼ!!」

応急修理の終わったラピッド・スターに乗り込むリエとケンタ。

上空にはアース・ムーバーが依然として沈黙を守ったままシュトゥルムと相対している…  


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.03.09 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018