SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(220L)
RE:306
室町ランプ。
暗渠になった高速道路からもうもうたる白煙が噴き上がり、低周波の轟音が、周囲のビルをブルブルと震わせる!

シュトゥルムがその背中にジェットブースターを大きく広げ、上空のアース・ムーバーを追撃すべく、ゆっくりと上昇を開始している。

ジェットブースターの想像を絶する出力が、周囲に凄まじい旋風を巻き起こす…

八重洲通り。
パトカー前のオオツカ警部達。

シュトゥルムのジェットブースターが巻き起こす凄まじい旋風と轟音に、思わずパトカーに掴まるオオツカ達。

イマイズミ
「(巻き起こる土煙と旋風に顔をしかめながら)け、警部ッ!!…凄いでスね、コレ!?…(唾を吐き)ペッペッ!口ん中砂だらけッスよ…(シュトゥルムの方を見る。指をさす)あーッ!警部!見てください、ロボットが上昇をッ!!」

キャムロン
「(上空を見上げ)…あの巨大メカニック、まるでロボットを挑発している様だ…(オオツカを見て)警部、彼らロボットを誘き出そうとしているのでは?」

キャムロンをチラと見るオオツカ。
と、パトカーのコミュニケーションシステムからワンディムの声。

ワンディム(声)
「警部、命令を!ロボットを攻撃させて下さい!!」

インカムを手にするオオツカ。
命令を下そうとするが、躊躇する。

オオツカ
「(つぶやく)…どうする…攻撃するか?…ロボットと…そして彼らの行動は?…」

空を見上げるオオツカ。
アース・ムーバーを追い、上昇を続けるシュトゥルムの巨体が日の光に輝く。

再び、コミュニケーションシステムからワンディムの声。

ワンディム(声)
「警部、攻撃を!」

その声にインカムを取るオオツカ。

オオツカ
「攻撃待て!臨戦態勢のまま待機!」

ワンディム(声)
「(不満気に)警部!…納得できません!今、あのロボットの注意は大型メカニックに集中しています。今ならロボットの不意を突いて攻撃可能です!」

オオツカ
「いいから待機しろッ!これは命令だ!!」

ワンディム(声)
「(不承不承)了解…」

八重洲通り。
大通りの中央、攻撃態勢をとったまま、上空のアース・ムーバーとシュトゥルムを見上げるワンディム、それにサーディー…

ワンディムの機体のあちこちで、パイロットランプが目まぐるしく点滅を繰り返している。
まるで、感情の高まりを現わしているかの様である…

ワンディム
「(つぶやく)何故だ…何故攻撃をしてはいけない…」

と、背後から突然誰かの声がする。


「残念ですがワンディム、あのロボットは前回の戦闘データを基に、かなり的確な強化が行われている様です…」

振り向くワンディム。と、そこには分析を終えたサーディー。

ワンディム
「サーディー…(ハッとして)じゃあ分析が完了したんだな!何処なんだ、奴の…あのロボットの弱点はッ!」

しかし、サーディー、カメラヘッドをゆっくりと横に振る。

ワンディム
「バカな!どこにも弱点がないというのか!?」

サーディー
「(冷静な口調で)…ワンディム…そうではありません。構造解析の結果、腹部ジョイントの構造に若干、構造上の無理が認められます…」

ワンディム
「ならば、そこを集中的に攻撃すれば!」

サーディー
「(再びカメラヘッドを横に振り)…しかし、それとて他の部分の強度と比較しての事です。現在我々の搭載している装備では、仮にその部分を集中攻撃したとしても、余り効果は期待できないと思われますが…」

ワンディム
「クソーッ!!…私は…私はッ!!」

ビルの壁面に拳を叩き付けるワンディム!
その力にビルの壁面が大きな亀裂を生じて陥没する!

その激しさに、驚いた様子でワンディムの様子を見つめるサーディー。

ワンディム
「…我々の使命は何だ、サーディー?…市民の安全を守る事ではないのか?なのに私は……私に…私にもう少し力があれば…」

サーディー
「ワンディム…」

サーディー(心の声)
「ワンディムが…怒っている…我々の中にも、あんなに激しい感情があるというのか?…」

まだパイロットランプを慌ただしく点滅させ続けているワンディム。
そしてそのワンディムを見つめるサーディー…

上空。
轟音を立てながら、最大出力で垂直上昇を続けているアース・ムーバー。

ランド・チャレンジャー操縦席。
モニターを覗き込んでいるショウイチ。

ゲンザブロウ
「どうじゃ、シュトゥルムは?」

ショウイチ
「(モニターを見つめたまま)…こちらに向って全速で上昇して来ます。」

ゲンザブロウ
「ラピッド・スターは?リエ達はこちらの援護に廻れるかの?」

横のサブモニターを見るショウイチ。

ショウイチ
「大丈夫、シュトゥルムを追って急速上昇中です。あと約2分でシュトゥルムを捕捉可能。」

ゲンザブロウ
「よし。…(つぶやく様に)…頼むぞリエ、シュトゥルムを引き付けるには、ラピッド・スターの援護が不可欠なんじゃからな…」

モニターの映像、シュトゥルムとラピッド・スターの位置が刻々とディスプレイされている。
それを見つめるゲンザブロウ…

と、突然、操縦席全体に激しい振動が走る!

ゲンザブロウ
「シュトゥルムか!?」

ショウイチ
「ハイ!後部格納スペースを貫通!直撃です!」

ゲンザブロウ
「高度は!?」

ショウイチ
「現在、高度900メートル!上昇率は1分間に600メートルです!」

ゲンザブロウ
「…高さが足りん。せめてあと600メートルは…」

と、再び激しい振動!天井の配線がショートし、火花が散る!
操縦席内部にアラームが鳴り響く!
コミュニケーションシステムにユキコが映る。

ユキコ
「ヴァーティカル・ジェット3号エンジンに被弾しました!推力低下、16.5%。上昇率が1分間500メートルまで低下しています。」

ショウイチ
「お父さん…(決意する)…攻撃しましょう!これ以上被弾すると機体がもちません!」

ゲンザブロウ
「待て…ギリギリまで待つんじゃ…」

モニターを見るゲンザブロウ、それにつられ、ショウイチもモニターを見る。
ランド・チャレンジャーの機体が噴き上げる黒煙を潜り抜け、シュトゥルムが徐々に接近し続けている…

シュトゥルム操縦席。
操縦席のドクター・ジャンク。前方のスクリーンには、煙を噴き上げながら上昇を続けるランド・チャレンジャーの姿。

ジャンク
「(ニヤリとして)まんまと私を誘き出したつもりだろうが、そうは行かんぞ。お前の企んだ高度にたどり着く前に、撃墜してやるッ!!」

空中。
再びランド・チャレンジャー目がけビーム砲を発射するシュトゥルム!
アース・ムーバーの左翼を貫通するビーム!

ビームの貫通した左翼が小爆発を起こし、新たな煙を噴き上げ始める!

急角度で上昇を続けるラピッド・スター。

コクピット。

ケンタ
「見えたぞ!シュトゥルムだ!!…(ハッとして)あっ、ランド・チャレンジャーがッ!!」

煙を噴き上げているランド・チャレンジャー…
シュトゥルムが執拗にビームを浴びせかけている…

ケンタ
「ちっきしょーッ!!やめろーッ!!」

パルスビームを発射するケンタ!
シュトゥルムに命中するが、しかし殆ど効果はない…

ケンタ
「姉ちゃん、このままじゃ、父ちゃん達がッ!!(座席から身を乗りだし、後部操縦席のリエを振り返る)…オレ達、一体どうしたらいいんダ!?」

リエ
「…とにかく一刻も早くランド・チャレンジャーと合流するの。…(正面を見る。つぶやく)上から回り込まなきゃ無理そうだわ…(再びケンタを見て)ケンタは出来るだけシュトゥルムの注意を引き付ける様に、攻撃を続けて。…いいわね?」

ケンタ
「ウン!!」

再び操縦席に着くケンタ。
リエは正面のシュトゥルムとランド・チャレンジャーを見つめる…
尚もビームを発射し続けているシュトゥルム…

リエ
「みんな…」

視線を手元に転じ、リミッターロックのかかったスロットルレバーを見つめる…

リエ
「ラピッド・スター…あなたならきっと、私の願いに応えてくれるわよね…だって、あなたは世界で一番素敵な飛行機なんですもの…」

決意した様に、スロットルレバーのリミッターロックを外すリエ。
スロットルレバーを握り締める。

リエ
「ケンタ、衝撃に備えて!極超音速飛行に入るわ!!」

ケンタ
「(驚いて)エッ!? 無茶だよッ!こんな状態で極超音速なんて!!」

リエ
「他に方法がないの!それに、このままランド・チャレンジャーがやられちゃってもいいのッ!?」

ケンタ
「…姉ちゃん…(決意する)分かった。…オレもコイツを信じるゼ!」

いとおしむ様にラピッド・スターのコンソールを触るケンタ…

リエ
「(嬉し気に)ウン!…(正面を向き)…行くわよッ!!」

一気にスロットルレバーを一杯まで押し上げるリエ!
凄まじい勢いでジェットの炎を噴き上げるラピッド・スター!!


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.04.16 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018