SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(177L)
RE:452
空中。
ラピッド・スターが凄まじい勢いでジェットの炎を噴き上げ、急角度で上昇して来る!

コクピット。
凄まじい轟音と振動に包まれているコクピット。
急激な加速による重圧が、コクピットのリエ達を襲う!

凄まじい振動の中、しかしリエの手はスロットルレバーをしっかりと握り締め、レバーを一杯まで押し上げ続けている…

必死に操縦捍を握っているリエ。

モニター。
ドライブシステムの異常高温を警告するアラームが点滅している。

リエ
「(苦しげにモニターの表示を見つめる)…急がないと…これ以上はドライブがもたないわ…」

しかし、尚も速度を緩めないリエ。

前部操縦席のケンタ、加速度の重圧に顔をしかめながら、前方を見る。
キャノピーガラスに表示されているデジタルスピードメーターが、小刻みに上昇を続けている。だが、徐々にその表示がにじみ出す…
腕で頻りに眼をぬぐう。

ケンタ
「…くそぉ、目が…」

激しい加速に血液の流れが阻害され、貧血状態に陥っているケンタ。
メーターの表示がにじみ、コクピット内部の風景がグラグラと揺れ始める。
再び眼をぬぐう。

その様子に心配そうなリエ。

リエ
「…ケンタ…大丈夫?…もうちょっとよ、頑張って…」

ケンタ
「…平気だゼ、この位!…姉ちゃん…スピード落してみろ…承知しないゾ!」

リエ
「ケンタ…」

加速度の重圧を必死でこらえるケンタ…

正面。シュトゥルムの機体がみるみる内に接近して来る。
尚も前方のランド・チャレンジャーに向って執拗にビーム砲の攻撃を続けている。

その様子に、まるで気持ちを奮い立たせる様に、再び眼をぬぐうケンタ。
重圧に逆らい、照準システムを作動させる。

キャノピーガラス。
ガラス上のモニターにターゲットスコープが浮び上がり、照準ポイントが目まぐるしく動きながら、シュトゥルムに照準を合わせ続けている。

発射レバーを握るケンタ。ターゲットスコープに全神経を集中する。

正面。
スコープの映像越しに、攻撃を続けるシュトゥルムの姿が見える。
しかし時折その光景がにじむ。

イラつく様に眼をぬぐうケンタ。再びスコープを見る。
発射レバーを小刻みに動かし、照準をシュトゥルムに合わせて行く…
スコープの照準がシュトゥルムにロックされる。

照準ポイントが標的捕捉を示して点滅している。
尚も攻撃を続けているシュトゥルム…

ケンタ
「一撃…たった一撃でいいんだ!頼むッ!!…(発射ボタンを押し込む)…行けーッ!!」

小型ミサイルを発射するラピッド・スター!
シュトゥルム目がけ、2条の白煙が一直線に伸びる!

シュトゥルムの背中、炎を噴き上げるジェットブースターに相次いで命中!
パッと小さな火花の様な爆発が輝く。

次の瞬間、周囲に轟音が轟き、シュトゥルムのジェットブースターが巨大な炎を噴き上げる!

一瞬ひるんだ様な仕草を見せるシュトゥルム。
そのシュトゥルムの脇をすり抜けるラピッド・スター。
ラピッド・スターが急角度の弧を描き、空を駆け登って行く!

コクピット。

ケンタ
「やったーッ!!」

大喜びのケンタ。リエもケンタを嬉しそうに見る。
が、同時にリエの操縦席のモニターには新たな警告メッセージが!

『DANGER! Driving-unit is abnormal heating.
 Cut off Hypersonic flight mode!』

そのメッセージにハッとするリエ。
スロットルレバーを戻そうとするが、その瞬間、機体後部で小爆発が起こる!

ケンタ
「ウワーッ!!」

リエ
「クッ!ドライブがッ!!」

慌ててメインスロットルを通常飛行モードに戻すリエ。
スイッチを操作し、ドライブのブースターをカットする!

しかし操縦席のモニターには、ドライブの数十箇所に異常が発生している事を示す警告表示が点滅を始め出す!
急激に速度が落ちるラピッド・スター。

シュトゥルム操縦席。
メインスクリーンに映るラピッド・スター。すっかり速度が低下している。

ジャンク
「…しぶとい奴め。だが、その位の攻撃ではこのシュトゥルム、びくともせんぞ!…(ニヤリとして)まずお前からとどめを刺してやる!」

空中。
シュトゥルムの姿勢制御ジェットが小刻みに噴射をし始める。
ラピッド・スターの追撃態勢に入るシュトゥルム。

ゆっくりとスピードを上げ始める…

ラピッド・スター前部操縦席。
ケンタもスクリーン上にドライブ・コントロールパネルを開き、ドライブを調整し始める。懸命にドライブを制御しようとするが、既に半分以上のパワーゲージは全く反応しない。

ケンタ
「…ダメだ、半分死んじゃってる…(リエを振り返り)姉ちゃん、もう超音速飛行は無理だ…亜音速飛行モードでしか飛べないゾ!」

リエ
「そんな…それじゃぁアイツに追い付かれちゃう!」

レーダーモニターを見るリエ。
一つの反応がゆっくりと、しかし確実にラピッド・スター目指して接近している…

リエ
「来た…(前部操縦席のケンタを見て)ケンタ、できるだけ応戦するのよ!むざむざやられてたまるモンですか!」

ケンタ
「分かった!」

照準システムをセットしようとするケンタ。と、

『CAUTION! Laser cannon system is out of condition!』

のメッセージが表示され、照準システムが起動しない。
慌てるケンタ。

ケンタ
「(驚き)エッ!?…オイしっかりしろよッ!!…(コンソールを調整する)…ダメだ、やっぱり反応しない…(リエを振り返り)姉ちゃん大変だ!レーザーキャノンがッ!!」

リエ
「何?どうしたのッ!?」

ケンタ
「レーザーキャノンの照準システムが起動しないんだ!…どうしよう…」

リエ
「…さっきのショックで回路が破損したのかしら?…(ハッとして)…しまった!シュトゥルムは!?」

レーダーを見るリエ。シュトゥルムは尚も接近を続けている…

ケンタ
「(困った様に)どうしよう…」

訴える様な表情でリエを見るケンタ。
悔しそうな表情で考え込むリエ…

リエ(心の声)
「…ランド・チャレンジャーからも離れ過ぎてる…この位置じゃ援護射撃も不可能だわ…それにこっちはスピードが音速を切ってる…このままじゃ確実に追い付かれる。…どうする?…一体どうすれば…」

考えるリエ。
と、その様子に決意するケンタ。

ケンタ
「姉ちゃん、グラン・マキシマイザーを使おう!グラン・マキシマイザーならきっと!」

リエ
「待って!今の状態じゃグラン・マキシマイザーは、今チャージしてる分を使ったらもう発射できないわ。アイツを倒すには、ランド・チャレンジャーと同時に発射しなきゃ!」

ケンタ
「じゃあ、姉ちゃんはこのままムザムザやられるって言うのかッ!?」

リエ
「そんな事言ってないわ!…でも…」

レーダーに眼をやるリエ。
シュトゥルムの反応が着実にラピッド・スターを捕捉しようとしている…

リエ(心の声)
「どうしたら…どうしたら切り抜けられる…」

レーダーを見つめるリエ…


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.04.23 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018