SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(203L)
RE:567
空中。
真っ白な飛行機雲を引きながら、ラピッド・スターが飛行している…
と、その背後に巨大な機体が被いかぶさる様に接近して来る。
巨大な鋼鉄の機体が陽の光にまばゆく輝く…シュトゥルムだ。
ラピッド・スターコクピット。
前部操縦席のケンタ。
キャノピーガラスに映し出されたレンジ・ファインダー(距離測定器)の情報を、真剣な表情で見つめている。
ディスプレイされている一つの反応。
その反応は着実に接近を続けている…
ケンタ
「(ディスプレイを見つめながら)来たぞ!…(ディスプレイの反応に気づく)ア!レーザービーム反応を検知!アイツ、オレ達に照準を合わせてるゾ!」
しかし、リエはまだ考え込んでいる。
仲々決心がつきかねている様子。
その様子にイライラするケンタ。
ケンタ
「姉ちゃん!考えてる場合かヨ!もう他に方法ないんだゼ!!」
シュトゥルム操縦席。
正面のスクリーンに映し出されているラピッド・スター。
その機体に照準が合わされて行く。
その映像を見つめ、満足気な表情を浮かべるドクター・ジャンク。
ジャンク
「…まだだ。まだとどめは刺さん…(ニヤリとして)野ウサギは充分追い立ててから仕留めるのが、狩の醍醐味というもの…」
スクリーンを見つめるジャンク。
片隅に表示された距離表示が徐々に縮まって行く…
ジャンクの指が手の甲の電極に近付いて行く…
ラピッド・スターコクピット。
ケンタ
「クソー、姉ちゃん何迷ってるんダ!…もうイイッ!!こうなったらオレだけでも!」
グラン・マキシマイザーの照準ユニットを作動させるケンタ。
その様子にハッとするリエ。
同時にその指がグラン・マキシマイザーのマスタースイッチをカットする!
ケンタの操縦席の前方、キャノピーガラスに浮び上がっていたターゲットスコープが消える。
ケンタ
「(怒って後ろのリエを振り向き)姉ちゃんッ!!何するんダ!!」
リエ
「ケンタ、やっぱりダメ!グラン・マキシマイザーは最後の最後まで我慢するの!」
ケンタ
「バカ言うな!今だってオレ達、サイゴのサイゴだゾ!!」
その言葉にケンタの眼を見つめるリエ。その表情には決意の色が見える…
リエ
「…私に考えがあるの…まかせてくれる?…」
しかし、まだ納得いかない様子のケンタ。リエを見つめる。
ケンタ
「………」
リエ
「どうなの?ケンタ?…」
ケンタ
「(渋々うなずく)……分かった…」
リエ
「いいわね?席について。衝撃に備えるのよ!……(レーダーモニター、シュトゥルムの反応を見つめ)見てなさいッ!」
しっかりと操縦捍を握り締めるリエ…
空。
機体のあちこちからもうもうと煙を噴き上げているアース・ムーバー、ランド・チャレンジャー。
ランド・チャレンジャー操縦席。
あちこちでアラームが鳴り響き、天井の一部からは破損した電気系統が火花を降らせている…
モニター、ラピッド・スターとそれを追うシュトゥルムの反応が映し出されている。その様子を覗き込むショウイチ、そしてゲンザブロウ。
ショウイチ
「くそぉ、シュトゥルムの奴、ラピッド・スターを追い詰めるつもりだ!(コミュニケーションシステムのスイッチを入れ)…ユキコ、スピードは?もっと早くならないのか!?」
ユキコ
「無茶言わないでよ!ドライブが損傷して推力が下がってるのよ!今だって過負荷で過熱してるんだからネ!」
ショウイチ
「しかし、このままじゃラピッド・スターが!」
ゲンザブロウ
「(悔し気に)…シュトゥルムめ、こちらとラピッド・スターをまんまと分断してしまいおった…この位置からではラピッド・スターの援護もできん…」
ショウイチ
「(モニターを見つめ)リエ、ケンタ…」
モニター上の表示。
座標位置を示すディスプレイが、短い電子音をたてて変化する…
その表示が、空を行くラピッド・スターの姿にオーバーラップする…
ラピッド・スターコクピット。
モニターでシュトゥルムとの相対位置を確認するリエ。
こめかみを一筋汗が流れる…
リエ(心の声)
「…コレをやるのは、今の機体の状態じゃかなり危険だわ。でも、何とかランド・チャレンジャーに合流しなくちゃ…」
操縦捍をロックし、手を離す。
片手をスロットルレバーに、もう一方の手を噴射バランスコントロールパネルにそっと置く。
両足はペダルを踏み込む態勢に入っている…
深呼吸するリエ。
その間も眼は、一瞬もモニターのシュトゥルムの反応から離れない…
リエ
「ケンタ、歯を食いしばって!行くわよッ!!」
その声に全身に力を込め、踏んばるケンタ。
それと殆ど同時に、リエはスロットルレバー、噴射バランスコントロールパネル、ヴァーティカル・ジェットを同時に操作する!
ラピッド・スターの前方2基のヴァーティカル・ジェットが噴き上がり、一瞬、
ラピッド・スターの機首が垂直に真上を向く!
機体全体が白い霧を噴き上げる!次の瞬間、メインドライブが全開される!
炎を噴き上げ、空を駆け上がるラピッド・スター!
殆ど直角に機体をターンさせる!!
シュトゥルム操縦席。
操縦席のジャンク、ラピッド・スターの信じられない様な行動に驚く!
ジャンク
「バ、バカな…亜音速で直角にターンだとッ!?し、信じられん…」
ラピッド・スターコクピット。
信じ難い重力加速度がリエ達にかかる!機体がミシミシと悲鳴をあげている!
リエ
「ウウウ……」
ケンタ
「く、クソー…」
加速度に抵抗しながらゆっくりと手を操縦捍に伸ばすリエ。
操縦捍のロックを解除する。更に操縦捍を引き、機体を反転させる!
リエ
「(苦し気に)…このまま…このまま合流をッ!」
ランド・チャレンジャー操縦席。
モニターを見つめるショウイチ、ゲンザブロウ。
モニター上に表示されるラピッド・スターの座標の変化に驚く。
ショウイチ
「何ッ!?…(ゲンザブロウを見て)お父さん、ラピッド・スターの座標がッ!!」
ゲンザブロウ
「(驚き)これは……信じられん……(微笑み)リエの奴…素晴らしいパイロットじゃよ、アイツは…」
ショウイチ
「(感動して)お父さん…」
ゲンザブロウ
「(うなずき)ウム。…よし!すぐに全砲門発射態勢じゃ!!」
ショウイチ
「ハイ!!」
コンソールパネルの調整を開始するショウイチ。
シュトゥルム操縦席。
ジャンク
「あのお嬢さんが、あの操縦を?…(慇懃に)素晴らしい操縦だ。心からの賛辞を送らせて頂きますぞ。…(ニヤリとして)だが、そろそろこのゲームも終り…残念ですな…」
スクリーン上のメニューから、ビーム砲のターゲットスコープを起動する。
シュトゥルム機体。
大きく旋回し、ラピッド・スターの追撃態勢に移るシュトゥルム。
機体各部のビーム砲、次々に照準が合わされる。
次の瞬間、一斉にビームを発射するシュトゥルム!
幾筋もの目映い光の矢が、光速の速さで空を切り裂く!
雨の様にラピッド・スターに降り注ぐビーム!
ラピッド・スターコクピット。
シュトゥルムのビームが間断なく降り注ぎ、周囲が目映いばかりの閃光に満たされている。
衝撃がラピッド・スターの機体を翻弄する!!
ケンタ
「ウワーッ!!姉ちゃんッ!!」
リエ
「クッ!…大丈夫、大丈夫だって!!」
ラピッド・スターの周囲に降り注ぐビーム…
空。
一機の大型V-TOL輸送機が飛行している…
機内。
暗い機内で、誰かが交信をしている様子。
声
「…そうです、彼らの飛行機です…ハイ、このままではロボットに……大丈夫です、短時間なら空中でも………分かりました。」
どうやら交信が終わった様子。
と、その声の主とは別に、機長と思しき人物が来る。
声
「キャプテン、許可がおりました。カタパルトシステムの準備をお願いします。すぐに出ます。」
機長
「分かりました…(コミュニケーターのスイッチを入れ)…アサギリ君、カキヌマだ。すぐにカタパルトの準備を!」
アサギリ(声)
「分かりました!」
機長
「(声の主を見て)いよいよですな、頑張って下さい。」
声
「ありがとうございます、キャプテン。」
〜 つづく 〜
~ 初出:1995.05.05 Nifty Serve 特撮フォーラム ~