SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(155L)
RE:NON
上空。
機体の各部から煙を噴き上げながら、降下を続けるシュトゥルム。
その機体は反撃の様子も見せず、沈黙を続けている…
そのシュトゥルムの機体の脇を、トゥースの機体がすり抜ける。
シュトゥルムから離れ、前方にそびえる国際病院ビルの周囲を巡る。
国際病院ビル。
避難する人々で大混乱に陥っているビル内。
廊下。
続々と避難する人々でごった返す廊下。アナウンスが繰返し流れる…
館内アナウンス
「(興奮気味に)…ロボットがこちらに向って接近しています!館内の皆さんは落ち着いて職員の誘導に従い、安全な場所へ避難して下さい!」
ロビー。
エレベーター前のロビー。
避難する人々がエレベーターに乗ろうと集まっている。
と、窓の外から轟音が聞こえてくる。一斉に窓に寄る人々。
男
「(指をさし)あれを見ろッ!!」
窓。
窓に寄り、一心に外の様子を見つめる人々。
轟音が一際大きく轟き、人々の上に巨大な影が広がる。
窓ガラスに機影が反射する。
ジェットの炎を噴き上げながら飛び去るトゥースの機体!
ブルブルと震える窓ガラス!
人々の目が一斉にトゥースの機体を追う…
空中。
国際病院ビルの周囲を飛行するトゥース。ビル内に残った人々に気付く。
機体を大きく傾け、ビルすれすれに飛行する。
ビルの窓にトゥースの機体が映し出されている…
ジェットパックの出力を上げ、上昇する。
トゥース
「…まだあんなに人が残っているのか…(コミュニケーションシステムをつなぎ)…ワンディム!」
勝鬨橋。
晴海通りを前進して来るワンディムとサーディー。
既に橋のたもとでは待機していたパトカーが、勝鬨橋周辺の交通を遮断している。
装甲車の車体越しにその機体を覗かせるワンディム。
コミュニケーションシステムが鳴る。ハッとした様に空を見上げる。
ワンディム
「ワンディムだ!」
空中。
飛行しているトゥース。
高度をとりながら国際病院ビル上空を旋回する。
カメラヘッドを上げ、シュトゥルムの様子を見る。
相変わらず不気味に沈黙したままゆっくりと国際病院ビルに向って進行してくるシュトゥルム…
再び、ビルの窓、不安気に様子を眺めている人々を見るトゥース。
トゥース
「国際病院ビルの避難はまだ完了しませんか!?…(シュトゥルムを気にして)…もう時間が!」
勝鬨橋。
国際病院ビルの方向を眺めるワンディム。
ビルの周辺には多数の救急車が停められ、患者達が次々に運び出されている。
次々に避難を続ける人々の列が続いている…
足元の警官を見下ろすワンディム。
警官は現場指揮官らしく、大型のコミュニケーターで状況を確認している。
ワンディム
「避難の状況は?大分時間がかかっている様ですが?」
警官
「(ワンディムを見上げ)…患者の避難にかなり手間取っている様です。(困惑して)…それに避難者がエレベーターに集中して、エレベーターが輸送能力を超えてしまっている様で…」
ワンディム
「(サーディーを見て)シュトゥルムの進行状況は?」
サーディー
「スピード、降下率共状況に変化ありません。現在のコースを進行した場合、約4分20秒でA棟40階付近に衝突します。」
ワンディム
「…仕方がない…(コミュニケーションシステムを接続し)トゥース、時間がない!現状では避難完了まで待てない!直ちに作戦を実行する!」
空中。
飛行しているトゥース。
トゥース
「了解!!」
トゥースの機体。
側面にミサイルランチャーが露出している。
ランチャーのパイロットランプが慌ただしく点滅を開始する。
スコープ映像。
飛行中のシュトゥルムを映し出すターゲットスコープ。
移動するシュトゥルムの右翼エンジンにターゲットがロックされている…
スコープの片隅のエネルギーメーター。既に残量が30%を切っている…
エネルギー残量を警告するディスプレイが点滅を始める…
トゥース
「…いかん。少し滞空時間が長過ぎたか…失敗すればやり直すだけの時間はない…」
空中。
飛行を続けるシュトゥルム…
操縦席。
亜全周スクリーンには、国際病院の2棟の超高層ビルがゆっくりと迫っている…
操縦席のドクター・ジャンク。
既にいつもの冷静さを取り戻している。
ゆっくりと接近するビルを見つめながら、ジャンクはシュトゥルムに語りかけている…
ジャンク
「…私は…やはり私は間違っていたと言うのだな?シュトゥルムよ…」
スクリーンを見つめるジャンク。
ジャンク
「…20年前のあの出来事で、私は気付くべきだったと、お前は言いたいのだな。…そうだろう……臆面もなく、お前の心を踏みにじったのだからな、私は。……そればかりか、眠りについていたお前を、無理矢理この汚濁の世界に引きずり出し、再び木石の様に扱おうとする…お前の心の存在を実験によって証明しようとまでしたのだからな…(自嘲する様な笑みを浮かべ)…今日と言う今日は、全く我ながら自分の愚かさに愛想が尽きた…」
スクリーンに映し出される青空…
ジャンク
「…お前は知らんかもしれんがな…『青銅の巨人』の最後は…やはり科学者の死によって閉じられている……(スクリーンを見上げ、微笑む)…古今、迂濶に『心』を弄ぶ者は、必ずその報いを受けねばならんと、どうやら相場が決っておる様だな…」
スクリーンを見つめるジャンク…
空中。
グラン・マキシマイザー発射態勢のまま、空中で静止しているラピッド・スター。
コクピット。
照準を調整しているケンタ。何時にも増して真剣な表情である。
キャノピーガラスのスクリーン上にはサブウィンドーが開き、ランド・チャレンジャーのモニター映像が同時に転送されている。
コンソールを操作し、双方の照準を合わせて行くケンタ。
リエ
「(サブモニターを見ながら)…ランド・チャレンジャーも位置に着いたわ。…(ケンタを見て)…随分緊張してるみたいね?大丈夫?」
ケンタ
「(ムキになって)…そんなコト言うなよッ!!もっとキンチョーするじゃん!!リエはカワイイ弟コマらせてタノシイのかッ!?」
リエ
「(吹きだし)クッ!」
ケンタ
「(ふくれて)何フいてんだヨ!真剣なんだゾ、オレ!」
リエ
「(笑いながら)…ゴメンね。だって…ケンタったら…言い方…何かヘンなんだもん。」
ケンタ
「チェッ!!」
気を取り直して再びスコープを覗くケンタ…
〜 つづく 〜
~ 初出:1995.06.11 Nifty Serve 特撮フォーラム ~