SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(227L)
RE:
勝鬨橋。
ワンディムがテラスの様な堤防にゆっくりと降りる。
脚部から固定用のアームが現われ、ワンディムの機体を地面に固定する。
機体に搭載された全装備を露出するワンディム!

その彼方では、サーディーが勝鬨橋の中央部で一斉砲撃態勢に入っている…
先程の現場指揮官を見るワンディム。

ワンディム
「これから全装備での一斉砲撃を行います。砲撃音で鼓膜を痛める可能性があります。申し訳ありませんが、皆さんに注意を。」

警官
「分かりました!(コミュニケーションシステムに向い)…各員、耳を塞ぎ、砲撃音に備えろ!」

一斉に身構え、耳を塞ぐ警官達…

ワンディム
「(サーディーを見て)サーディー、タイミング・コーディネーション!カウント5からスタート!」

勝鬨橋中央。
一斉砲撃態勢のサーディー。
センサーシステムが規則正しい電子音を響かせている…

サーディー
「了解!タイミング・シグナルシンクロ!カウント…5…」

勝鬨橋。
パトカーが着く。降りるオオツカ、イマイズミ、キャムロン…

サーディー
「…4…」

ゆっくりと耳を塞ぎ、この様子を見守るオオツカ…

サーディー
「…3…」

空中。
静止し、発射態勢に入っているトゥース。

サーディー
「…2…」

空を行くシュトゥルム…

サーディー
「…1…」

ワンディム
「砲撃ッ!!」

凄まじい轟音と衝撃が周囲の空気を震わせる!!
隅田川の川面が一瞬白く波立つ!

無数の軌跡が空に描かれ、次の瞬間、上空で凄まじい爆発音が轟く!!
シュトゥルムの右翼エンジンが巨大な火柱を噴き上げる!!

大きく機体を傾かせ、シュトゥルムの進路が右へ急角度でそれる!
国際病院ビルの壁面にシュトゥルムの機体が影を落す。

ビルを霞める様に隅田川方向へ方向転換するシュトゥルム!!

勝鬨橋。
様子を見守っていた警官達から歓声が上がる!
拳を振り上げ、大喜びのイマイズミ。

イマイズミ
「やったーっ!!シュトゥルムがそれたッ!!」

シュトゥルム操縦席。
凄まじい衝撃に襲われる操縦席!

ジャンク
「クッ!最早これまでかッ!!」

スクリーンを見るジャンク。
と、サブウィンドーに一つのディスプレイが点滅している…

『You can use "Cockpit ejection system".』

ジャンク
「脱出システムが使用できる?…」

ディスプレイを見つめるジャンク…

ジャンク
「シュトゥルム………」

顔を伏せるジャンク…

空中。
空中で大きく態勢を崩し、腹部を見せながら一気に高度が下がるシュトゥルム。

ラピッド・スターコクピット。
ケンタが一心にシュトゥルムの機体に照準を合わせている。
機体が川の上空に差し掛かるのをひたすら待つ…

緊張のあまり汗びっしょりのケンタ…
手の甲で汗をぬぐう。後部操縦席、心配そうにケンタを見守るリエ…

スコープ。
目まぐるしくその位置が変わるシュトゥルムの機体。
ターゲット・ポインターがそれに同調し、小刻みに位置を変える。

ランド・チャレンジャー操縦席。
モニターを固唾を飲んで見守るショウイチ、ゲンザブロウ…

ショウイチ
「ケンタ…」

アース・ムーバー操縦席。
祈る様な表情を見せるユキコ…

ラピッド・スターコクピット。
一心に照準を合わせるケンタ…

空中。
シュトゥルムの機体、遂に隅田川の上空に出る!

ランド・チャレンジャー操縦席。
ショウイチが思わず叫ぶ!

ショウイチ
「ケンタ、今だーっ!!」

ラピッド・スターコクピット。
思いきり発射ボタンを押し込むケンタ!!

ケンタ
「ウワーッ!!」

ラピッド・スター、ランド・チャレンジャーから、同時に目映いばかりの光の奔
流が、一気にシュトゥルム目がけて押し寄せる!!
一瞬、シュトゥルムの周囲で大気が大きく湾曲する!!
周囲の風景が陽炎の様に歪む!!

一瞬の沈黙……

腹部ジョイントが大音響を上げて大破する!!
機体を大きく屈曲させ、つんのめる様に隅田川に落下するシュトゥルム!!
川の中を転がる様に突き進み、そのまま佃大橋の橋脚に激突する!!

爆発を起こすシュトゥルム!!

周囲に大波が巻き起こり、爆発が巻き上げた川の水が雨の様に降り注ぐ…
勝鬨橋周辺は大量の水滴が巻き上がり、爆発の熱気で水蒸気となって深い霧に包
まれる…

太陽の光に七色の反射を見せる霧…

ラピッド・スターコクピット。
呆然と、シュトゥルムの巻き起こした爆発を見つめているケンタ…
そっと顔を伏せる。何やら腕で頻りに眼をぬぐう……

ケンタ
「姉ちゃん…やったんだね、オレ達…シュトゥルムをやっつけたんだね…」

その様子を優しく見守るリエ。

リエ
「ケンタ…(感無量の面持)…(明るく)そうよ、やったのよ、私達!!」

まるで感傷的な気分を断ち切るかの様に、大げさに手で顔をぬぐい、リエを振り返るケンタ。嬉しそうに微笑む…

ケンタ
「(力強くうなずく)ウン!!」

ランド・チャレンジャー操縦席。
大喜びのショウイチ。

ショウイチ
「やった、凄いぞケンタ、リエ!!」

ふとゲンザブロウを見る。
モニターに映し出されているシュトゥルムの様子を見つめているゲンザブロウ…

ショウイチ
「お父さん…」

ゲンザブロウ
「(ショウイチの視線に気付く。眼はモニターに向けたまま)…これで、良かったのかのぅ?…ワシの決断は、これで…」

ショウイチ
「お父さん…(微笑み)…良かったんですよ、これで…」

勝鬨橋。
橋のたもと、晴海通りの中央に、轟音を立てながらゆっくりとトゥースが着陸する。その側に寄るワンディム、サーディー。

トゥース
「(ワンディムを見て)…色々ご心配おかけしましたが、この通り無事に復帰しました!」

嬉しそうにカメラヘッドを伸ばすトゥース。

ワンディム
「今回は君の活躍に助けられたよ。ありがとう、トゥース!」

トゥース
「(照れた様に)いや、ワンディム…それ程でも…」

と、横からサーディー…

サーディー
「それでは整備されたので、かの任務より自分の興味を優先する思考パターンも、補正されたという訳ですね?」

トゥース
「何ッ!?(ムキになり)サーディー、私はだなッ!!」

大げさなジェスチュアでトゥースの言葉を遮るサーディー。

サーディー
「…あの、これはいわゆる『冗談』とよばれる言い回しですが?」

トゥース
「?」

呆気に取られるトゥース。その横で笑い出すワンディム。
それにつられ、笑い出すトゥース、サーディー…

隅田川河畔。
彼方、まだ煙を噴き上げているシュトゥルムの残骸を見つめるオオツカ、イマイズミ、それにキャムロン…先程の霧も何時しか晴れている…

川風に吹かれながらシュトゥルムを見つめる…

キャムロン
「…終わったのですね、これで…」

オオツカ
「(チラとキャムロンを見て)…ええ。」

キャムロン
「…ですが、私にはまだ仕事が残っています。作品の完成という大きな仕事がね…」

オオツカ
「(キャムロンを見て)ミスター・キャムロン…」

キャムロン
「(明るく)見ていて下さい、警部。きっと私の代表作にして見せますよ。…それが、真の『青銅の巨人』、シュトゥルムへの、一番のはなむけでしょうからな…」

うなずくオオツカ。と、隣でイマイズミの声。

イマイズミ
「(空を指さし)警部、彼らが!!」

その声に空を見上げるオオツカ。

ランド・チャレンジャーとラピッド・スターがゆっくりと高度を上げ、帰投態勢に入っている。

イマイズミ
「一体、彼ら、何者なんでしょうね?…」

その言葉に無言でうなづくオオツカ。
メインドライブに点火し、発進する2機。

隅田川堤防。
それを見上げるワンディム達。
姿勢を正し、敬礼の姿勢をとる。

夕暮れの中、真っ白な飛行機雲を引きながら、空に消えて行くランド・チャレンジャー、ラピッド・スター…

秋の夕暮れ空がどこまでも広がっている…

究極の特撮映画編 〜完〜

~ 初出:1995.06.11 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018