SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(177L)
RE:412
夜。

路地裏の古びた住宅街。
塀の上を一匹の大きな猫が、けだるそうな様子でノソノソと歩いている…

路地の突き当りの一軒の家。
勝手口が開けられており、中からテレビの音が漏れている…

台所と思しき窓には、白熱電球の明りが点っている。

室内。
古びた台所。
白熱電球の明りの下、小さなテーブルを挟んで高校生位の少年と、その母親が夕食の最中。
低い食器柵の上に乗せられた小型テレビには、先程タナカ家で流れていたのと同じテレビ番組が映し出されている…

少年、先程からテレビ番組にすっかり夢中になっている。
茶碗をもったまま、テレビに見入っている…

テレビ。
画面にラピッド・スターが映し出される。

レポーター
「…さて、この飛行機なんですが、えぇ、ココを良く御覧下さい。(ラピッド・スターの機体がアップになる)…お解りになりますでしょうか?何とですねぇ腕が…飛行機なんですが、腕が付いているんです…この腕を使って…御覧下さい!この様に、まるで人間の様な動きが出来る訳なんですねぇ!」

すっかり画面につり込まれている少年。

と、突然少年の頭が週刊誌で叩かれる!
我に戻る少年。母親が週刊誌を手に少年を睨んでいる。

少年
「イテ!何すんだヨ!!」

母親
「またこの子はッ!すっかり手の方がおルスになってんだからネ!早く食べちまいなヨ!」

少年
「チェッ!いいじゃんか、面白れぇんだから!!」

母親
「(立上り、そそくさと片付けを始めながら)いつまでもそんな風にテレビ観ながらカタマってられたんじゃ、全然片付かないんだヨ!母ちゃん忙しいんだからネ!」

少年
「(ヤケ気味に)いいよ、分かったよッ!!」

猛然とご飯を掻き込み始める少年!あっと言う間に夕食を食べ終える。
どうだと言わんばかりの勢いで、茶碗と箸を音を立ててテーブルの上に置く。

口一杯にご飯を詰め込み、喋れない少年。
呆れ顔でその様子を見る母親。

母親
「(呆れて)…全くナニ考えてんだかネェ?やるコトが極端なんだヨ、お前は。」

少年
「(口をモグモグさせながら)…フガフガ!」

母親
「(また少年の頭を週刊誌で叩き)コレッ!全く、お前に付けるクスリってのはないモンかねェ?母ちゃん情けないヨ。」

少年
「(抗議する様に)フガフガ!!」

母親
「(ため息をつく)フーッ………」

呆れて夕食の片付けを始める母親。
再びテレビを見る少年。

と、ラピッド・スターのコクピットが大写しになっている。
先日のシュトゥルムとの対決の際に撮影された映像の様である。

デジタルビデオ映像が拡大されており、ぼんやりと操縦者の姿が映っている。
前部座席には少年の様な姿が、そして後部座席には少女の様な姿が映っている…

少女は学校の制服を着ている様に見える…

無理矢理にご飯を飲み込む少年。胸につまって苦しむ。胸を叩く。
慌てて湯のみを取り、お茶で流し込む。

少年
「(ホッとした様に息をはく)フー、クッソ!死ぬかと思ったゼ!」

テレビに映し出されるラピッド・スターのパイロットの姿…
その姿に少年の眼が吸い寄せられる。

少年
「…ん?あの服……(思い当たる)…あれって、ひょっとして…」

テレビ。

レポーター
「…えぇ、何とパイロットは子供達の様に見えるんですが…ちょっとこの映像ではハッキリしませんねぇ…」

テレビを見つめている少年…
何事か考え込んでいる様子…

少年の部屋。
少年が部屋に入ってくる。

本棚にズラリと並んだ推理小説や探偵小説の数々…
壁には「こちらレッドムーン探偵社」や「ロッククライスラーの事件メモ」のポスターが貼られている…

読みかけのペーパーバックが散乱しているベッドに横になる。
天井を見つめながら、何事か考えている少年…

天井。
古びた木の天井に出来た染みが、不可思議な文様を描き出している…
その文様を見つめている少年…

少年
「(決断がついた様子)…やっぱりそうだ!…どう考えたってあの服、ウチの学校の制服にそっくりだ!」

ベッドの上に起き上がる少年、腕組みをして考え込む。

少年
「…それにこの前、学校の近くにロボットが出た時、確かあの飛行機、学校の近くを低空で…」

少年の脳裏に浮かぶイメージ。
避難する生徒達。と、周囲に轟音が轟き、避難する生徒達の上を、校舎の屋上すれすれを霞める様に、ラピッド・スターが超低空で横切る。

轟音を上げて急角度で上昇してゆくラピッド・スター…
眼を見張り、その光景を見つめる生徒達。その中に少年の姿もある…

少年の部屋。
考え込む少年…

少年
「…って事はだゾ、状況証拠から判断するとだ、あの飛行機のパイロットはウチの学校の生徒って事に?」

再び考え込む少年…しかし、フッと気が抜けた様に、ゴロリと横になる。

少年
「(苦笑して)…まさか。…あ〜あ、ナニ考えてんだか。オレもヤキが回っちまったのかなぁ?」

枕元に転がっているペーパーバックを取り上げ、パラパラと読むでもなくページをめくる。
が、何時の間にか上の空になっている様子。

ページをめくる手が止まる…

少年
「だけど…」

海中。
深海に規則的なソナー音が響く…
彼方に黒い影が現われ、ゆっくりと接近してくる…
海中を進行するドクター・ジャンクの大型潜水母艦ブラウザスの姿…

艦内。
薄暗い艦内。装飾を施した重厚な木製のデスクが置かれている。

デスクの上には、キーボードと透明な板ガラス状のディスプレイのついたターミナルが置かれており、ドクター・ジャンクが先程から忙しげにデータの解析を行っている。ガラス状のディスプレイに、次々にグラフや模式図が表示される…

ジャンク
「(イラついた様子で)これも違う!…奴のビームに凄まじい威力がある事は分かっている!私が欲しいのはそんな分かりきった結果ではないのだ!!」

ディスプレイ。
ラピッド・スターのエネルギー感知グラフが表示される。

一定して高いレベルを示していたグラフの線が、あるところから一気に低下している。
その後、ゆっくりしたペースで回復をみせるグラフの線…

ジャンクの目が、そのグラフの線に引き寄せられる。

ジャンク
「(つぶやく様に)…このエネルギーレベルの変化は?…一体どのタイミングだ?」

キーボードを操作し、他の情報をディスプレイに呼び出す。
ディスプレイ上に次々に別のグラフが表示される。

ジャンクがグラフ上の、急激にエネルギーレベルの低下している箇所を指定すると、他のグラフも連動して、次々に対応する部分が表示される。

その表示をしばし見つめるジャンク…

そのジャンクの表情が、何かを掴んだ様に不敵な微笑みを浮かべる。

ジャンク
「(笑みを浮かべながら)…成る程、そういう事か…」

机の脇に置かれたコミュニケーションシステムのスイッチを入れるジャンク。
ディスプレイに映るタバタ。

ジャンク
「タバタ、ロボットの建造準備に入る。すぐにロボット建造システムの準備を!」

タバタ
「(うやうやしく頭を下げ)かしこまりました…」

コミュニケーションシステムを切るジャンク。
再びターミナルのディスプレイ、表示された様々なグラフを見る。

急カーブを描いて低下しているラピッド・スターのエネルギーレベル…
ディスプレイを見つめるジャンク…

ジャンク
「見つけたぞ、お前の弱点をな…」

不敵な微笑みを浮かべながら、ディスプレイ上のグラフを見つめるジャンク…


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.07.16 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018