SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(228L)
RE:099
タナカ鉄工所。
小走りに走りながら、リエが鉄工所に駆け込んで来る。

事務所の入口。
ガラス戸を開けるのももどかしく、事務所に飛び込むリエ。

事務所。
片隅に置かれたレーダーコンソールの前、ゲンザブロウを中心にタナカ家の全員が集まっている。真剣な表情でレーダーの反応を見つめている…

事務所に飛び込んで来るリエ。
その物音に一同が振り向く。

リエが戻らず不安気だったケンタはホッとした表情。

ケンタ
「(ホッとした様にリエを見て)…姉ちゃんッ!」

リエ
「(ゲンザブロウを見て)お爺ちゃん!」

リエの声に無言でうなずくゲンザブロウ。

その様子に状況を察するリエ。
やはり無言でうなずき、事務机のスチール椅子を引き寄せる。
静かに腰を降ろす…

ゲンザブロウ
「(リエを見て)…橋桁を運んでおるジェットヘリに、故障が起きたらしい。」

リエ
「(驚き)あのジェットヘリが!?…」

ゲンザブロウ
「(レーダーのディスプレイを見て)…これを御覧、進路がどんどんズレておる。今やジェットヘリは橋桁を釣り下げたまま都心の上空を飛行中じゃ。」

レーダーコンソールのディスプレイ。
大きく進路がそれ、広尾から渋谷方面に向っているジェットヘリ。
ディスプレイに電子音と共に、最新の座標が表示される。

ショウイチ
「(リエを見て)…管制官とヘリの通信によると、4機の内、1機のコントロールが不能らしい。…ただ、今の処情報が少なくて現場の状況が良く分からないんだ。とにかく、私とお母さんとですぐアース・ムーバーの発進準備をする。リエはケンタと一緒に現地へ先行して状況を報告してくれ。」

リエ
「(うなずき)分かったわ。」

ゲンザブロウ
「…それから、独断先行はいかんぞ。判断が必要なら必ず連絡するんじゃ。」

リエ
「(微笑み)…もう、お爺ちゃんったら心配症なんだから。(大げさに)ちゃんと連絡します!…(ケンタを見て)…行こッ!」

ケンタ
「ウン!」

勢い良く事務所を飛び出して行く二人。
その後ろ姿を見送るゲンザブロウ、ショウイチ。

ゲンザブロウ
「(呆れた様に)…大丈夫かの、ホントに?…」

ショウイチ
「(自信なさそうに)…ええ、まぁ…」

顔を見合わせる二人…

工場。
リエとケンタが駆け込んで来る。
工場の片隅にカタパルトにセットされたラピッド・スターが待機している。
ほの暗い工場の中で、その機体が周囲の明りを映し、艶やかに輝いている…

走りながら、腕にはめたコミュニケーターのボタンを押すリエ。
と、無人のコクピット、操縦席の計器が一斉に起動する。
同時にドライブシステムが鈍い排気音をたて始め、イグニッション・モードに入る。
メインドライブから薄い排気煙が噴き出し始める…

コクピットのメインモニターに

『ALL SYSTEMS ACTIVATED』

のディスプレイ。

その表示が消えると、機体各部のセルフチェック・インフォメーションが次々に表示され始める…

ゆっくりとキャノピーガラスが開いて行く。
コクピットに乗り込むリエとケンタ。シートベルトを締める。
計器のチェックをするリエ。

ケンタ
「(ホッとした様子で)姉ちゃん戻ってきて助かったゼ、オレだけでどーしようかって。」

計器をチェックしているリエ。

リエ
「(苦笑して)何情けないコト言ってんのよ、男の子でしょッ。…(計器を確認して)…発進するわよ!」

ケンタ
「(シートに深く座り直し)…いいゾ!」

ゆっくりとキャノピーガラスが閉まってゆく。
それと同時にラピッド・スターの乗ったカタパルトが真横にスライドし始める…

運河。
鉄工所裏の運河。機械の鈍い作動音と共に、運河に面した鉄工所の建物の壁がゆっくりと開いてゆく。同時にその前の堤防も下がって行く。

モーターのうなる様な音と共に、工場の中からトラス構造の移動用レールが運河の水面まで伸びて停止する。

鉄工所の内部から、カタパルトに固定されたラピッド・スターが姿を現わす。
レールの上をゆっくりと移動し、運河に降ろされて行く…
着水するラピッド・スター。

コクピット。
リエの操縦席。正面のメインモニターには、機首のカメラが捉えた運河の映像が、水面すれすれの視点で映し出されている。モニターの片隅に、メインドライブの推力ゲージがデジタル表示されている。徐々にアップして行く数値…

やがて

『Driving system start up : COMPLETE』

のメッセージが表示される。

メッセージを確認し、コンソールパネルを操作するリエ。
と、ディスプレイ内容が変わり、高度、速度等を表示する主飛行表示計(PFD)と、
位置、レーダー情報を表示する航法表示計(ND)が表示される。

操縦席右脇のサブ・コンソールのスイッチを入れる。

リエ
「こちらラピッド・スター、リエ。発進準備完了。」

モニターに映るゲンザブロウ。

鉄工所事務所。

ゲンザブロウ
「(モニターをみながら)…ちょっと待っておくれ、今、障害物の確認をする…」

ゲンザブロウ、コンソールパネルを操作し、レーダー表示を切り替える。
運河上の障害物を確認する。

運河の地図が表示され、あらかじめ登録された障害物のチェックが行われる。
次々に障害物の情報が表示されてゆく…

『No unknown obstruction』

のディスプレイが点滅する。
確認するゲンザブロウ。

コクピット。
サブ・コンソールに映ったゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「…よし。未登録障害物なし、発進OKじゃ!」

リエ
「了解!…ドライビング・ユニット、出力マキシマム。」

モニター上、エンジン出力が最大値を示して点滅する。

リエ
「(操縦席脇のスイッチを入れ)…ドライブ・コネクト!ラピッド・スター、発進!!」

運河。
着水しているラピッド・スター、ドライブシステムを全開する。

全力噴射するメインドライブが、運河に大きな水柱を噴き上げる!
周囲に巻き上げられた飛沫が霧となって漂う…

水面を滑るように滑走するラピッド・スター。
運河上の杭や橋脚を巧みに避けながら一気に加速、離陸してゆく…

道。
トシヒコが自転車を押しながら歩いている…
と、頭上を轟音と共にラピッド・スターが離陸してゆく。

その機体が日差しにキラキラと輝いている…
その光景を見上げるトシヒコ。

トシヒコ
「…頑張れ、タナカ…」

空。
東京上空を飛行するラピッド・スター。
眼下に東京の町並みを見下ろしながら、機体を翻し、ジェットヘリを追尾する。

コクピット。
ケンタの操縦席。キャノピーガラスにレーダーコンソールが映し出されている。
ディスプレイを確認しているケンタ。

ケンタ
「(ディスプレイを見ながら)…このまままっすぐだ。今の速度なら1分30秒で追い付ける。」

リエ
「分かったわ。」

飛行するラピッド・スター…

広尾上空。
巨大な橋桁を釣り下げたまま、4機の超大型ジェットヘリが飛行を続けている…
前方には高層ビルが林立する渋谷の街が広がっている…

1号機操縦席。
憔悴した表情の副操縦士がぐったりとシートに座っている。
その横で、パイロットはまだ諦めてはいない様子、毅然とした態度で操縦捍を握っている。

パイロット
「(副操縦士を見て)…どうした、スズキ元気がないじゃないか?」

副操縦士
「(呆れた様にパイロットを見て)…元気がないって、タカノさん、こんな状況じゃ、誰だってそうですよ。」

パイロット
「(苦笑して)…まぁ、そうかも知れんが…だが、やれるコトは総てやったんだ、あとは救助がくるのを落ち着いて待つしかない。…違うか?」

副操縦士
「随分冷静じゃないですか?(不満気に)…どーせボクはタカノさんみたいに悟れてませんからね。それに救助ったって、こんな状況、どうやったら打開できるっていうんですッ!?」

パイロット
「まぁ、そう怒るな。…(計器を見て)…まだ燃料にも余裕がある。取り敢えず3号機もオートパイロットまではイカれてない様だしな。ココはひとつ落ち着いてハラを決めた方が得策ってモンだぞ。ひょっとしたら…いい知恵だって浮かぶかも知れんしな…」

パイロットを見る副操縦士…

空。
飛行するラピッド・スター。

コクピット。
目を凝らして前方を見つめていたケンタ、何かを発見した様子。

ケンタ
「(前方を向いたまま)…姉ちゃん見つけたゾ、ジェットヘリを肉眼で確認!」

リエ
「分かった!…(コミュニケーターのスイッチを入れ)…こちらラピッド・スター、リエ。ジェットヘリを肉眼で確認。これから接近します。」

モニターに映るゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「分かった…くれぐれも慎重にな。」

リエ
「ウン…(顔を上げ)…ケンタ、行くよッ!」

ケンタ
「リョーカイッ!」

速度を上げ、ジェットヘリに接近するラピッド・スター…


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.09.17 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018