【ご挨拶にかえて】〜「SFXボイジャー」を書いていたあの頃〜



 SFXボイジャー



【ご挨拶にかえて】〜「SFXボイジャー」を書いていたあの頃〜


『御町内特撮救助隊SFXボイジャー』作者  おおしま

『御町内特撮救助隊SFXボイジャー』は、まだインターネットが一般に普及する以前の1994年4月、当時全盛期を迎えていたパソコン通信サービス『Nifty Serve(ニフティ・サーブ)』の特撮フォーラム内にあったフリートーク電子会議室『喫茶アミーゴ』で連載を開始した、特撮ファンのためのオンライン・エンターテインメント小説です。

NIfty Serveでの連載当時には、Niftyのデータライブラリに本作の連載データやキャラクター画像が掲載され、リアルタイムに連載をお読み頂けなかった方にも物語をフォローして頂ける環境がある程度は整っていて、本サイトでのストーリー紹介でも「物語をお読みになりたい方はNiftyのデータをご覧ください」みたいな書き方をしていたのですが、そんなデータも2006年のNifty Serveの終焉と共に散逸してしまいました。

元々、本サイトでは開設当初からNIfty Serveのライブラリをフォローする意味合いで、SFXボイジャーのコーナーを設けていたのですが、2006年以降は基になるライブラリ自体がなくなってしまったので、読むべき物語にたどりつけない行き止まり状態になっていました。

本サイトでの連載ライブラリ化についても、Niftyのライブラリに掲載されていた連載データが途中のエピソードまでだった関係で、当初から考えてはいた訳なんですが、何より作品自体が未完のまま中断していましたので、自分的にライブラリ化にいまいち踏み切れない状態が続いていて、ずるずると今日まで来てしまいました(いやはや…)。

ところが先日ふとしたことで昔の連載データが記録された保存用MOを発掘し、気がつくと懐かしさの余り結構夢中で読みふけっていた自分がいたりした訳です(いやはや…)。

さすがに15年も前の作品ですので、細部の描写には現在の目から見ると古い処もあったりするのですが(当時はこんなに携帯電話が普及するとは思ってなかったので、劇中ではちょっと懐かしいテレビ電話が主流です)、物語の中に自分なりの信条というか熱気みたいなものも感じられて、なんだか現代に蘇らせてみたい誘惑に強くかられてしまったのです。

そんな出来事もあって、丁度良い機会と15周年を契機に全話ライブラリ化に着手することにしました。本作については、過去に一部エピソードを電子ブック化して本サイトで公開していた事もありましたが、全体については未公開のままでしたので、その意味でもここらでまとめておきたいという訳です。

データの掲載については、さすがに一気に全話公開はキツイので、何回かに分けて公開していく予定です。サイトの方も少し今風のテイストを盛り込もうと(いやはや…)、スタイルシートを導入し、iPhone、iPod Touchでのモバイルアクセスにも対応してみました(本コンテンツのみの対応です(いやはや…))。

当時は確か、Appleの初代PowerBookシリーズだったMacintosh PowerBook100(これは異様にキータッチが良いマシンで、原稿を打つときのマシンとの一体感が最高でした)を相棒に、これまた懐かしいエディタソフトであるシステムソフトエディタで原稿を打っていました。

当初は連日掲載とか随分無茶な事もしていましたが、さすがにこれは大変で、その後は大体週末に物語を書いて掲載するようになりました。でもこのペースでも維持するのは結構大変で、週末はウンウンうなりながらアイディアをひねり出しては少しずつ物語を紡ぐ日々が続いていました。

連載自体は、実は結構軽い気持ちでスタートしたのですが、連載を続ける内に色々と欲が出てきて、場面の描写やストーリーの構成も段々と凝った物を狙うようになりました。

反面、ストーリーに凝り出して話のスケールが大きくなって来ると、張っておいた伏線の処理を忘れそうになったり、登場していたメカの台数を間違えたりと、自分でも物語の流れが把握できなくなってきたので、途中からはInspiration(インスピレーション)という、ダイアグラム形式で文章の構成を練ることができるアウトライン・プロセッサソフトを使ってストーリー構成(シナリオの箱書きみたいなもの)を作り、物語が迷走しないように骨組みを作って書くようにしていました(それでもストーリーをうまく収束させるのに、大分苦労していた思いがありますが…)。

物語の中では、後半になるとラピッド・スターの航行機器に関する描写とか、コクピット内のディスプレイの英語表記とかが大分細かくなってきますが、連載の舞台裏では航空機の構造や航法に関する本を読んだりとか、電子辞書や英文法ソフトを導入するとか、結構大変でした(いやはや…)。

キャラクターの面で言うと、主人公のタナカ家というのは、実は自分にとって家族の理想像みたいなものが投影されていたのかも知れません。連載当時でも既にノスタルジーを感じさせるような一体感のある家族の描写に、リエやケンタが少し羨ましいような思いを感じながら物語を書いていました。

主人公的な位置づけで、ちょっと気が強くて機転の利く女子高生のリエ。正義感の強い快活な弟のケンタ。ギャグメーカー的な要素を持ちながらも要所では物語に深みを与えるゲンザブロウ。マスオさん的な悲哀を感じさせつつも、家族思いの言動がキラキラ光るショウイチ。時にお姉さん的な視線で子供たちを支えるユキコ。キャラクター的にもバラエティ豊かで物語の幅を広げやすいタナカ家の設定は、自分なりに今でも気に入っています。

こんなホームドラマ的な側面として、劇中では食卓でのタナカ一家のやりとりがよく出てくるのですが、こういうシーンは自分でも書いていて楽しく、結構ノッて書いていた記憶があります。後半になるとストーリーも若干ヘビーな展開になって来ましたので、休憩の意味を含めて(いやはや…)ギャグっぽいシーンを意識的に挿入したりしていました。

物語が未完であるのは、実は休載とほぼ同時期に、本「おおしま電脳花卉店」がオープンした事と無関係ではありません(いやはや…)。ずっとフリートーク掲示板で連載していたものが、専用の創作会議室に移ってちょっと隔離されたというか、読者の方の反応が届きづらくなっていたことや、インターネットの台頭でNifty自体が閉塞感を感じさせるような状況になったこともあって、自分の中の興味が徐々にスライドしていったという部分はあります。そんな訳で、物語は結末を迎えることなく現在に至っているのですが…

ただ、今の自分の目で改めて当時の連載を読んでみると、リエやケンタ達と一緒になって物語のうねりに巻き込まれながらも、自分なりに精一杯書いていたなぁという気がします。ちょっと死力を尽くしているみたいに思える時もあります(いやはや…)。今より少し若くてピュアな自分がそこには確かにいたのです。何だか気恥ずかしいけれど、でも少し誇らしいような、不思議な感覚です。

…何だかとりとめもない思い出話になってしまいましたが、現代に蘇った『御町内特撮救助隊SFXボイジャー』、私と一緒にお楽しみ頂けましたら幸いです。

さぁ、ご一緒に西暦2020年の未来の世界へ…

2009年4月 作者敬白





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