SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(170L)
RE:NON
東京、西暦2020年…

ナレーション
「西暦2020年の東京。新宿では老朽化した超高層ビルの建て替え工事が行われ、東京湾の臨海新都心には、既に数十万人の人々が働く人工海上都市が出現し、東京は日々その姿を変貌させ続けていた…」

東京上空からの映像。
建ち並ぶ超近代的な高層ビル群。その間を縦横に走るハイウェイには未来的なフォルムの自動車が行き交い、リニアモーターカーが駆け抜けて行く。

地上からの映像。
建ち並ぶ高層ビル。そして、その高層ビルを見下ろす様にそびえる超高層ビル。

ナレーション
「東京都千代田区霞が関1丁目1番地。国連映像文化局の映像保存センターである。国連の付属機関として設立された国連映像文化局は、世界中のテレビ、映画映像の収集、保存を行っており、最新設備を誇るこの映像保存センターには、現存する古今東西ありとあらゆる映像が保存されていた…」

館内の保管倉庫。
見渡す限り並ぶフィルムの缶。
時折天井のレールをロボット・アームが動き、必要な映像を取り出して行く。

ナレーション
「特に、このセンターの特撮関連映像コレクションは、世界屈指の規模と内容を誇っており、このセンターに来館することは世界中の特撮ファン達の憧れであった。しかし…」

突然、上空に巨大な飛行メカニックが出現する。
ずんぐりした真紅のボディに、2本の巨大なハサミのついた腕をもったカニの様な形。センターの上空で静止するメカニック。

ロボット
「映像保存センターの諸君、私は全特撮界の支配者、ドクター・ジャンクだ。諸君等の保管しておる世界一の特撮映像コレクション、譲り受けに来た。おとなしく引き渡せば良し、さもなくばこの万能メカ、「メカニカニ」で残らずジャンクしてやる!」

ハサミをチョキチョキするメカニカニ。

映像保存センターオフィス。
警備用モニターに映し出されているメカニカニ。
この突然の緊急事態に大混乱のオフィス。

センター責任者
「一体、奴は何者なんだ!?とにかく、至急警察に連絡を!!」

所員
「はいっ!!」

警察に連絡を入れようと電話を取る所員、しかし、回線が切れており、連絡できない!

所員
「…ダメですっ!デジタル通信回線が切られています!」

責任者
「何っ!?…しかし、あれだけ巨大な機体だ、警察もきっと気付いてくれるに違いない。もう少しの辛抱だ!」

センター外部。
メカニカニの腕が開き、中からレーザー・ブラスターが出る。

コンパスで円を描く様にレーザービームを発射、センターの外壁に穴を開ける。
砕け散る外壁!

同じ頃…

センターから少し離れた東京の下町。
この辺りは昔と変わらず、ゴチャゴチャとした町並みが続いていた。

古びた町工場。
オンボロの看板に
「タナカ鉄工所」の文字。

と、クラクションを鳴らしながら、世界的な物流会社「EHL」の最新型 大型トレーラー・トラックが狭い下町の道をやって来る。しかし、鉄工所の直前で路地を曲り切れずつっかえてしまう。クラクションを鳴らすトラック。

鉄工所 から一人の老人と、壮年の男性が駆け出し、トラックに向う。
タナカ鉄工所の創 設者タナカ・ゲンザブロウと、その息子で2代目のタナカ・ショウイチである。

ゲンザブロウ
「見ろ、言わんこっちゃない。あんな大型のトレーラーなんぞで運びおって。やっぱりあの横町でつっかえおった!」

ショウイチ
「でも、いよいよですよお父さん。…ああ、あれはちょっと曲れませんね。仕方ない、私、ジャッキー持って来ます。あそこで荷物を降ろしてもらいましょう。」

ゲンザブロウ
「おお、頼んだぞショウイチ。ワシは運転手に文句言ってやる!」

引き返すショウイチ。
鉄工所内部。入口の事務所から顔を出しているショウイチの妻、ユキコ。
その息子で小学4年生のケンタと飼い猫のニャンコ。

ユキコ
「イギリスからの荷物、届いたみたいね。」

ショウイチ
「ああ、トラックが、つっかえた。…ジャッキーだ。」

ユキコ
「あそこの曲り角、道が細くなってるからね。いっつもトラックがひっかかっちゃって。…ご苦労様。」

ケンタ
「頑張れ、父ちゃん!」

それに手をあげて応えるショウイチ。

工場の片隅に停めてある、古ぼけた高さ5メートル程の作業用ロボット、ジャッキーに乗り込む。エンジンを始動させる。

排気管からもうもうたる煙をあげるジャッキー。
ウインカーを点滅させながら工場の外に歩き出す。

ジャッキー
「ヒダリヘ マガリマス。ヒダリヘ マガリマス。」

その脚元、事務所から顔を出しているユキコ。

ユキコ
「ホント、ひと騒動だわ。…あっ、あなた、気を付けて!自転車潰す気!?」

ケンタ
「あ〜っ!オレの自転車!!」

ケンタの自転車を引っかけたまま、道へ出て行くジャッキー。

映像保存センター。
駆けつけた警官隊が大型高性能ライフルで応戦するが、メカニカニのボディには傷もつかない。

メカニカニは口から吸引装置を出すと、センターの外壁の穴から、保管されているフィルムケースをかたっぱしから吸い込み始める!

現場指揮を執っているオオツカ警部。

オオツカ
「なんて奴だ、全く歯が立たん!…(側の警官を見て)ロボット機動隊はどうした!?まだ到着せんのかっ!?」

警官
「ハイ、まもなく到着の予定ですっ!!」

オオツカ
「さっきから何回おんなじ事を言ってるんだ、どっかの出前じゃないんだぞ!」

と、パトカーのすぐ脇に巨大な脚が降りてくる。あわてて避ける警部。
警視庁に最近導入された最新型のロボット機動隊である。

ロボット機動隊
「お待たせしました警部!我々が到着したからにはもう大丈夫です。安心して御覧になっていて下さい。」

ロボットを見上げる警部。

オオツカ
「おお、頼んだぞ!」

ロボット機動隊
「無許可の飛行ロボットに告げる。直ちに破壊活動を停止したまえ。この警告を無視した場合、そちらの機能を停止させてでも逮捕する!」

メカニカニに向けて大型のバズーカ砲をかまえるロボット機動隊。

タナカ鉄工所。
工場の中に巨大な梱包が幾つも運び込まれている。

その箱には「ブレインズ科学サービス」の文字。
ジャッキーが最後の梱包を運び込む。

ゲンザブロウ
「ショウイチ、荷物はこれで全部かの?」

ショウイチ
「ええ、こいつが最後の1個です。いやあ、結構な量ですね。」

ジャッキーを降りるショウイチ。ゲンザブロウと並んで梱包の山を眺める。
ユキコとケンタ、それにニャンコもそのそばにやって来る。

ケンタ
「すっげえ〜!これでいよいよアイツ達、動けるようになるんだね。」

工場の片隅を指さすケンタ。
その指さす方向には、動力系の取り付けを待つばかりの3機のメカニックが。

ゲンザブロウ
「ああ、イギリスの天才科学者、ブレインズ教授に特にお願いして秘密裏に開発して頂いた、この動力ユニットを取り付ければ、いよいよ完成じゃ。」

と、その時遠くから爆発音が聴こえて来る。
はっとする一同。人々がみな映像保存センターの方を指さしている。

ショウイチ
「まさか!?…(ゲンザブロウを見る)…お父さん!」

ゲンザブロウ
「(うなずく)…始まったな、遂に…とりあえず出動ができれば良い、ユニットの取り付けを急ぐぞ!」

ショウイチ
「解りました!…(ユキコとケンタを見る)…お前達も手伝ってくれ!」

うなずく2人。

ゲンザブロウ
「いよいよ始めおったの、ドクター・ジャンク…」

動力ユニットのないメカニックを見つめるゲンザブロウ。



~ 初出:1994.04.09 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018