SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(147L)
RE:059
ブラウザス艦内。
ドクター・ジャンクの大型潜水母艦、ブラウザスの艦内にあるロボット工場。

今、正に完成したロボットが、ゆっくりと大型クレーンで釣り下げられ、発進カタパルトにセットされて行く…

ナレーション
「タバタを残し、一人バカンスに出かけてしまったドクター・ジャンク。ジャンクに置き去りにされ、はかないバカンスの望みも打ち砕かれたギャリソン・タバタは、製作中だった灼熱ロボット『ヴォルカティック』を使い、自らの怒りを、何の罪もない人々に向けようとしていた…」

カタパルトにゆっくりと降ろされるヴォルカティック。
その機体がカタパルトにセットされると、カタパルトの固定システムが作動、ヴォルカティックの機体を固定する。

ヴォルカティック操縦席。
タバタが操縦席に付けられた、5台の小型モニターに映し出される機体各部の様子をチェックしている。

タバタ
「カタパルトへのセッティングは完璧でございます。…(手元のスイッチを押す)…ヴォルカティック、射出位置まで下降。メインハッチ、オープンでございます。」

ヴォルカティックを乗せたカタパルトがゆっくりと下がり始める。

カタパルトが下がると、ヴォルカティックの機体の上部で、ブラウザスの圧力隔壁ゲートが、ゆっくりと閉じられて行く…

海中。
海中に静止しているブラウザスの機体。その前面下部が大きく開き始める。
大型の射出用カタパルトシステムが姿を現わす。

ヴォルカティック操縦席。
モニターを見ているタバタ。モニターには機体各部の様子が映し出されている。

1台のモニターには、カタパルト上の機体位置がディスプレイされており、刻々とカタパルトが下降して行く様子が表示されている。

タバタ
「発進位置まで下降完了致しました。…(脇のモニターを見て)…カタパルト制御システムとのシンクロも順調の様でございますね。…(前方を見て)…良うございますね?それでは、いよいよヴォルカティック発進でございますッ!」

両手でスロットルを一杯に引くタバタ。
ヴォルカティックの胴を取り巻く様に付けられたロケットエンジンが、轟音と共に一斉に炎を噴き上げ、その瞬間、カタパルトが凄まじい勢いで、ヴォルカティックの巨体を海中に撃ち出す!

海中に気泡の尾を引きながら、ヴォルカティックが物凄いスピードで撃ち出されて行く…

ヴォルカティック操縦席。
振動に襲われる操縦席。

タバタ
「そろそろ海上に浮上致しましょう。」

徐々に浮上を開始するヴォルカティック。

海上。
巨大な水柱を噴き上げ、ヴォルカティックが空中に飛び出して行く!

タナカ鉄工所事務所。
相変わらず強烈な真夏の日差しが辺りを包んでいる。
蝉時雨が幾重にも、熱気に揺らめく街を取り巻いている…

と、ケンタがサッカーの練習から帰ってくる。

ケンタ
「ただいまーっ!」

事務所で電話番をしていたユキコ、おや?と言う様な表情でケンタを見る。

ユキコ
「アラ、さっき出かけたばっかりだと思ったのに、もう終ったの?」

ケンタ
「ウン。練習、中止になっちゃったんだ。ニッシャビョウになるんだって、外にいると。」

ユキコ
「(呆れた様に)…近頃じゃスポーツの世界も軟弱になったモンだわ。夏は暑いに決ってるじゃない。」

ケンタ
「(不満気に)…そんな事オレに言うなよ!オレは練習やりたかったんだゾ!カワシマカントクが、タクヤのおばさん達に文句言われてさぁ。」

ユキコ
「タクヤ君って、3丁目の薬局の子よねェ?」

ケンタ
「ウン。…アイツのおばさんおっかねぇんだ。カワシマカントクもビビっちゃってさ。」

ユキコ
「ふ〜ん、オバサンパワーには、さすがの監督もかなわなかったってワケかぁ。でもどうするの、練習?」

ケンタ
「ソーチョーレンシュウするんだって。」

ユキコ
「え?何よソレ。…って事は、早起きしてお弁当作らなきゃいけないワケ、あたし?」

ケンタ
「(にっこりと)ウン!頼んだぜ母ちゃん!」

ユキコ
「頼んだぜって…冗談じゃないわよ、まったく…トホホ」

ケンタ
「ヘヘエ。…ところでさぁ、クーラーっていつ来るの?」

ユキコ
「え?…ああ、クーラー?さっきシラハタさんからテレコがあって、午後取り付けに来るんですって。」

ケンタ
「ホントッ!?やったぜッ!クーラークーラー!」

歓声を上げて部屋に入って行くケンタ。それを微笑みながら見送るユキコ。

ユキコ
「…ま、ようやくウチにもクーラーが入るんだもんね。(思い出した様に)…そういえば、お父さんったらドコ行っちゃったのかしら?姿が見えないけど…」

工場の片隅。ランド・チャレンジャーの操縦席に照明がついている。

操縦席。
ゲンザブロウがのんびりとスポーツ新聞を読んでいる。

ゲンザブロウ
「ムフフ、ボイジャーのメカには空調システムが付いておるからな。夏はやはりココが一番じゃて。…ファ〜〜ッ」

大きなあくびをするゲンザブロウ。ウトウトし始める。

東京上空。
ヴォルカティックが轟音を轟かせながら飛行して来る。

操縦席。
メインモニターに映し出される東京の街。

操縦席のタバタ、ヴォルカティックをゆっくりと東京上空で静止させる。

タバタ
「いよいよ作戦開始でございます!」

コンソールの大きな操作ボタンを押すタバタ。
静止したヴォルカティックの機体下面がゆっくりと開き始める。

中から姿を現わす巨大な排熱装置。
と、同時に機体側面のハッチが開き、内部から数十機の小型の排熱装置が、白煙の尾を引きながら真夏の青空に飛び出して行く。

小型の排熱装置はヴォルカティックを中心に、まるで都心を囲む巨大な円を描く様に、等間隔の位置に静止して行く。

操縦席のモニター。
ヴォルカティックを中心に、排熱装置の配置状況がディスプレイされている。

刻々と大きな円が形成されて行く…

タバタ
「…さて、そろそろ準備が整った様でございますね。…それでは、皆様方、快適な夏をお過ごし下さいませ!」

排熱装置を作動させるタバタ。
ヴォルカティックの巨大な排熱装置がうなりをあげ、猛烈な熱気を街に向って吹き出し始める!

ナレーション
「遂に開始されたタバタ恨みの一大作戦!果して東京の運命は!?」


〜 つづく 〜

~ 初出:1994.08.14 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018