SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(145L)
RE:427
幕張発電所。
増加する電力需要は発電所の能力を越え、遂にあちこちで停電が発生し始める。

制御室の壁面に設けられた大型のパネルスクリーンには、発電所管轄地区の配電状況が刻々と表示されており、そのスクリーンのあちこちで電圧低下の警告表示が点滅をしている。

大混乱の発電所中央制御室。
室内には発電機の能力限界を知らせるアラームが鳴り響き、あちこちで所員達が慌ただしく動き回っている。

その喧噪の中に発電所所長と主任技師のマキムラ。二人の表情は険しい。

マキムラ
「…(正面の大型パネルを見上げ)…所長…」

所長
「始まったか…遂に…」

マキムラ
「(パネルを見つめながら)…下町地区を中心に、各所で電圧低下による大規模な停電が発生しています。それに、このままの状態では発電機ももちません。」

所長
「…都知事に連絡をとってくれ。緊急時特別条例の発令を依頼する。」

マキムラ
「(所長を見て)…所長…(うなづく)…分かりました。」

手元のコミュニケーション・システムのスイッチを入れるマキムラ。

タナカ家の居間。
動かないクーラーを前に、呆然とたたずむショウイチ、リエ、ケンタの3人。

ショウイチ
「まいったな、停電とは…」

リエ
「ホント、最低よッ!」

ケンタ
「(思い付く)…そうだ!(ショウイチを見て)ねェ父ちゃん?」

ショウイチ
「あ?…何だ?」

ケンタ
「ボイジャーの自家発電装置使おうよ、アレつなげれば停電なんて関係ないゾ!」

ショウイチ
「(顔を輝かせ)そりゃいいアイディアだ!…(頭を振り)いや、いかん!…(急に真顔になりケンタを見る)…いいかケンタ、よく聞くんだ。」

ケンタ
「何だよ父ちゃん?」

ショウイチ
「お爺ちゃんがいつも言ってるだろ?ボイジャーのメカは私達家族の為じゃなく、困っている人達を助ける為にあるんだって。」

ケンタ
「ウン…」

ショウイチ
「だから、私達は空調のあるボイジャーのメカに目もくれず、今まで扇風機でこのクソ暑い夏をしのいで来た訳だ。ここで自分達の為に自家発電装置を使うのは、この考えに反すると思わないか?」

ケンタ
「…(考える)…ウン…(ショウイチを見て)…分かったよ、ゴメン父ちゃん。」

そのケンタの言葉を聞き、満足気ににっこりとうなずくショウイチ。
と、ケンタに横からリエが入れ知恵。

リエ
「…だからぁ、次は家用の自家発電機買ってもらえばいいのよ。」

ケンタ
「(顔を輝かせ)あ、そっか!(ショウイチを見て)父ちゃん頼むゼ!」

ショウイチ
「(ムッとして)お前達…」

と、ユキコが事務所から慌てて居間に駆け込んでくる。

ユキコ
「あなた、大変よ!」

ショウイチ
「どうしたんだ、そんなに慌てて?停電ならもう知ってるぞ。」

ユキコ
「(頭を振りながら)違うのよ、レーダーに変な物体が!」

ショウイチ
「変な物体?」

ユキコ
「ええ、まるで都心を取り囲むみたいに、大きな円を描いて数十個の物体が反応してるの。」

ショウイチ
「何だって!?…お父さんは?」

ユキコ
「あたしもさっきから捜してるんだけど。角の喫茶店にも居なかったし…」

ショウイチ
「しょうがないなぁ、こんな時に…(一同を見て)…とにかく事務所へ行こう。」

居間を出て行く一同。

ランド・チャレンジャー操縦席。
空気清浄器からは、心地よい涼風が吹き出している…

操縦席のシート。
背もたれを一杯に倒し、顔に読みかけのスポーツ新聞を乗せたまま、ゲンザブロウが大いびきをかいて眠っている…

鉄工所事務所。
事務所の片隅、壁面に収納されていたレーダーシステムが引き出されている。

そのコンソールには、都心上空に円を描く様に配置された、ヴォルカティックと小型排熱装置の機影が反応となって現われている。

ディスプレイに見入る一同。

ユキコ
「(ショウイチを見て)…何かしら、一体…」

ショウイチ
「分からないが…さっきからの異常な暑さの原因に、何か関係がありそうだな…」

リエ
「(ディスプレイを見ながら)この位置なら家からも見えるんじゃない?」

ショウイチ
「ああ。…よし、外へ出てみよう。」

鉄工所前の路上。
一同が出てくる。

既に周囲は凄まじい熱気に包まれている。その熱気に顔をしかめる一同。

ショウイチ
「…うわっ、凄いなこれは。」

リエ
「う〜、体が溶けそう。」

ケンタ
「父ちゃん、アレ見て!」

空を指さすケンタ。
その声に促され、空を見上げるショウイチ達。

見ると空には異常に発達した積乱雲が、真っ青な空に不気味な雲の城を築いている。その雲の下方、真っ黒に陰った部分では、時折何かがキラキラと光を発している…

ユキコ
「あんな雲初めて見たわ…何だか気味が悪い…」

ショウイチ
「ああ…どうやら、あの雲には何か秘密がありそうだな…」

リエ
「秘密?」

ショウイチ
「(うなずく)恐らく、人工的に作られたものじゃないかな?」

リエ
「人工的って、お父さん…(ハッとする)…まさかこの暑さは!?」

ショウイチ
「あの雲の中にある何か。さっきの、レーダーが捉えている物体が原因じゃないかと思う。…とにかくあの雲を調べて見よう。(リエとケンタを見て)…頼んだぞ!」

リエ
「分かったわ!…(ケンタを見て)行こッ!」

ケンタ
「ウン!!」

工場へ走って行く2人。
その二人を見送るショウイチとユキコ。

再び空を見上げるショウイチ。

ショウイチ
「また、ジャンクのメカなのか?…」



〜 つづく 〜

~ 初出:1994.08.28 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1994, 2018