SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(214L)
RE:313
シュトゥルムの放った強烈なビームを受けてしまったラピッド・スター!
きりもみ状態に陥り、黒煙を噴き上げながら、まっ逆さまに墜落している…

シュトゥルム操縦席。
モニターに煙を噴き上げながら墜落するラピッド・スターの姿が映し出されている。
その様子を見つめながら満足気な表情を浮かべるドクター・ジャンク。

ジャンク
「フッフッフ、見たかシュトゥルムの力!」

八重洲通り。
空を見上げているオオツカとイマイズミ。

イマイズミ
「(空を指さし)警部、飛行機がッ!!」

オオツカ
「あのままじゃ墜落するぞッ!!」

コクピット。
強烈な振動に襲われているコクピット。リエが真剣な表情で操縦捍を握り、機体のコントロールを回復させようと必死の努力を続けている…

リエ
「何とかしなきゃ、このままじゃ!…」

小刻みに操縦捍を動かし、バランスを取ろうとするリエ。
足元のペダルを踏み込み、片側のヴァーティカル・ジェットを噴射させる!

リエ
「コイツッ!!」

調子が悪く、間欠的に噴き上がるヴァーティカル・ジェット。
その度に、ジェットの噴射音がコクピット内に響く!

徐々に機体の回転が減速してゆく…
ガタガタと大きく揺れ出す機体!

リエ
「…もう少しッ!!頑張ってラピッド・スターッ!!」

祈るような表情を見せるリエ。
必死の操縦で、何とか態勢を立て直す!

残ったサブコンソールをチラと見るリエ。
メインドライブの出力低下を警告するアラームが点滅を続けている!

正面、油で汚れたキャノピーガラス越しに、眼下に広がる町並みがぐんぐん近付いてくる!

リエ
「(ハッとして)ダメだわッ!もっと…もっと減速させなきゃ!!」

機体後部。
外装が殆ど吹き飛んでいる。

メインドライブの1基が大きく破損しており、後部の大きな亀裂から黒煙が噴き
出している!

急激な降下は一向に衰える気配がない。
操縦席脇のレバーを思いきり引き、フラップを最大に引き出して減速を試みる。
ペダルを踏み込み、ヴァーティカル・ジェットを噴射させる!

主翼。
格納されていたフラップが最大まで引き出され、まるで翼を広げた鳥の様に見える。

主翼の先端からは空気との摩擦で、白い煙が一筋尾を引く。

翼の上では機体のあちこちから噴き出す煙が渦を巻き、目に見えぬ気流の道をその流れで描き出している…

コクピット。
サブコンソールに降下率を表示するデジタルメーターが、目まぐるしくその表示を変えている。
その横で、進入角度を警告するアラームが点滅する!

額に汗をにじませ、必死に操縦を続けるリエ。
ビルの屋上がすぐ眼下に迫る!

リエ
「お願いラピッド・スター、私に力を貸してッ!!」

思わず目を閉じ、思いきりペダルを踏み込むリエ!
ヴァーティカル・ジェットを最大出力で噴射させる!

間欠的に噴射されるジェットの炎!
しかし減速しきれず、そのままの態勢で大きなビルの屋上に突っ込む!

凄まじい衝撃がコクピットを襲う!!
大きくバウンドし、屋上のコンクリートを削り取りながら滑るラピッド・スター!

屋上の鉄柵を跳ね飛ばし、隣のビルの屋上に落下する!
更に滑る機体!!

リエ
「キャーッ!!」

コンクリートの破片を飛び散らせ、土煙を上げながら、屋上を滑るラピッド・ス
ター!

尾翼部分のエアブレーキ装置がグッと起き上がる!
ドリフトする様に機体が横滑りを起こす!

再び真っ白な土煙が立ち、ようやく停止するラピッド・スター…

コクピット。
周囲では僅かに残ったサブコンソールで、アラームが点滅を続けている…

操縦席、気絶しているリエ…

八重洲通り。
再び前進を開始するシュトゥルム。
再び強烈なビームを発射する!前方のビルが轟音を上げて倒壊する!

シュトゥルムの機体にミサイルが次々に炸裂する!
しかしそれをものともせず、ゆっくりとした動きで前進を続けるシュトゥルム。

操縦席。
シュトゥルムの性能に満足気なジャンク…

ジャンク
「見たか、最早このシュトゥルムの前に敵はないッ!…(嘲る様に)…シュトゥルムに心があるなど、私とした事が…所詮取り越し苦労に過ぎぬか…」

八重洲通り。
シュトゥルム目がけ、次々にミサイルを発射するワンディム、サーディー。
と、上空から轟音が響いて来る。見上げるワンディム。

ワンディム
「(驚いて)あれは…一体?…」

ゆっくりと降下してくるアース・ムーバー。

ランド・チャレンジャー操縦席。
モニターを見ているショウイチとケンタ。

ショウイチ
「(不安気に)…リエ…」

と、横のモニターに見入っていたケンタが突然大声を上げる。

ケンタ
「父ちゃん、爺ちゃん、アレ!ラピッド・スターだッ!!」

ケンタの声にモニターに寄るショウイチ、ゲンザブロウ。
ビルの屋上に不時着しているラピッド・スター。
後部から微かに煙を噴き上げている…

ゲンザブロウ
「メインドライブの一部に被弾しておるようじゃ。…(噴き上がる煙を見て)…どうやらまだドライブが完全に停止しておらん様じゃ。」

ショウイチ
「いかん!(コミュニケーションシステムのスイッチを入れ)…リエ、リエ!応答しなさいッ!大丈夫なのかッ!!」

ケンタ
「(ショウイチを見て)父ちゃん、オレが行く!高度を落してくれ!」

ショウイチ
「いや、私が行く。ケンタはここで待機するんだ。」

ケンタ
「父ちゃんがいないとランド・チャレンジャーが攻撃できないゾ。それに…(自慢気に)オレはラピッド・スターのコーパイなんだからナ。」

ケンタを見るショウイチ。
ケンタもまた、真剣な眼差しでショウイチの目を見ている…

ショウイチ
「ケンタ…(うなづき)…頼むぞ。(コミュニケーションシステムのスイッチを入れ)…ユキコ、高度を下げてくれ。」

モニターに映るユキコ。

ユキコ
「分かったわ。…(心配そうに)…あなた、リエは?」

ショウイチ
「まだ応答がないんだ。とにかくシュトゥルムに注意しながらゆっくり降下してくれ。ラピッド・スターへはケンタに行ってもらう。」

ユキコ
「分かった。…(ケンタを見て)…頼むわよ、ケンタ。」

ケンタ
「まかせとけって!」

屋上。
アース・ムーバーがゆっくりと降下してくる。舞い上がる土埃。
地面すれすれで停止するとハッチが開く。ケンタが飛び降りる。

舞い上がる土埃の中、顔をしかめながらアース・ムーバーに向って手を振り、合図するケンタ。
再びゆっくりと上昇を開始するアース・ムーバー。

コンクリートの大きな塊を乗り越えながら、ラピッド・スターに向って走るケンタ。
前方に微かに煙を噴き上げているラピッド・スター…

ケンタ
「(不安気に)姉ちゃん…」

機体に駆け寄るケンタ。操縦席によじ登る。

外装があちこち破損しており、操縦席に近い機体の亀裂から、真っ黒な油がキャノピーガラスまで跳ね飛んでいる…

コクピットを覗き込むケンタ。
気絶しているリエ…

ケンタ
「姉ちゃん…姉ちゃん、姉ちゃん!!」

キャノピーガラスを拳で力一杯叩くケンタ!必死にリエを呼ぶ!
しかし、ぐったりしたリエに反応はない…

その様子に焦るケンタ。必死にガラスを叩き続ける!

ケンタ
「姉ちゃん、しっかりしてくれ!目を開けてくれヨ!!姉ちゃん、姉ちゃん!!」

必死にガラスを叩くケンタ。と、ぐったりしていたリエ、微かに体を動かす。
その様子に更にリエを呼ぶケンタ!

ケンタ
「姉ちゃん起きろッ!オキローッ!!」

体を動かすリエ、ゆっくりと目を開ける。

ケンタ
「(嬉しげに)…姉ちゃんッ!!」

コクピット。
ゆっくりと目を開けるリエ。どこからか何かを叩く様な鈍い音が響いてくる…
周りを見回す。見ると、キャノピーガラスをケンタが必死に叩いている。

リエ
「ケンタ?……私、一体?…」

ゆっくりと体を起こし、キャノピーガラスの開閉スイッチを押す。
ゆっくりと開いて行くキャノピーガラス。
ケンタが嬉しそうに覗き込む。

ケンタ
「姉ちゃん!…良かったぁ、生きてたゼッ!!」

リエ
「何言ってんのよ、まったく!(ニッコリと)…こんな事くらいで、やられたりするもんですか!……でも…ありがと、ケンタ。」

ケンタ
「(照れた様に)ウン…」

と、上空から轟音が響く!思わず見上げる二人。
ランド・チャレンジャーがシュトゥルムに向って大型砲を発射している!

リエ
「(つぶやく様に)…みんな、気をつけて…アイツ、只のロボットじゃないわ…」

凄まじい爆発に包まれるシュトゥルムの機体!


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.02.26 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018