SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(246L)
RE:863
八重洲通り。
パトカー前のオオツカ警部、イマイズミ、そしてキャムロン。
上空で展開されるトゥースとシュトゥルムの戦闘を見守っている…

空中のトゥースの攻撃に加え、地上からのワンディム、サーディーの援護も加わり、シュトゥルムは猛烈な集中攻撃を受けている。
凄まじい爆煙に包まれるシュトゥルムの機体!

集中砲火を受け続けるシュトゥルムは、大きく円を描きながら徐々にその高度を下げ、隅田川方向に向ってゆっくりと降下を続けている…

シュトゥルム操縦席。
操縦席のドクター・ジャンク。

先程から必死にシステムの回復を図ろうとコンソールの調整を続けているが、アラームは鳴り続けたまま止まらない。

ジャンク
「…どうした!…一体どうなっているッ!?」

イラつきながらスクリーン上に次々と制御サブウィンドーを開き、シュトゥルムのチェックを続ける…

スクリーンを真剣な表情で見つめるジャンク。
ふと視線をそらし、操縦席脇のレバーを見る。制御回路コネクターのレバー。
それに手を伸ばそうとするジャンク。しかし、思い止まる。

ジャンク(心の声)
「(悔し気に)クッ…飛行中では制御システムを切り放す事はできん…」

しばし考え込むジャンク…が、何か思い当たった様な表情。

ジャンク(心の声)
「…もしや、シュトゥルムの奴、私が飛行させる時を待っていたのか?…」

畏怖にも似た表情がジャンクの顔をよぎる。
前方に広がる亜全周スクリーン、その彼方を見つめるジャンク…

ジャンク(心の声)
「シュトゥルム…お前は一体?…」

点滅しているエラーメッセージ。
そのディスプレイ表示を見つめる…
しかし、次の瞬間、自分の深読みに苦笑するジャンク…

ジャンク
「(苦笑しながら)…まさかな……私とした事が…下らぬ。」

再びチェックに戻るジャンク。

ジャンク
「…仕方がない。自動照準システムを解除して、武器のコントロールを手動に…」

サブウィンドーから照準モードを選択、手動に変更しようとする。
しかし、新たなアラームが鳴り、

『Access refusal...』

のディスプレイがスクリーン中央に点滅する!
そのディスプレイに緊張するジャンク…

ジャンク
「…バカな…アクセス拒否だと!」

再びジャンクの表情に恐怖にも似た動揺が、さざ波の様に走る…

虚空を見上げ、たった一人の操縦席で叫ぶ!

ジャンク
「…何故だ…何故だシュトゥルム!後一歩…後一歩ではないか!?後ほんの数発の攻撃で、我々の復讐は完成するはずだ!!なのにお前はそれを認めんと言うのか!?お前と…そしてこの私が受けた屈辱!お前はそれを晴らしたくはないのかッ!答えろシュトゥルムッ!!」

声を限りに叫ぶジャンク!…

と、不思議な沈黙が操縦席に訪れる。
先程まで鳴り響いていたアラームが何時の間にか鳴り止んでいる…

虚空を見つめるジャンク…

思い出した様に、短い電子音が鳴る。ハッとした様にスクリーンを見るジャンク。
と、そこにメッセージが…

『I disallow all interferences...』(私は総ての干渉を拒絶する)

そのメッセージをしばし呆然と見つめるジャンク…
スクリーンの片隅で小さく点滅を繰り返しているメッセージ…

ジャンク
「(呆然と)…シュトゥルム…やはり…お前は…」

空。
もうもうたる爆煙に包まれながら、シュトゥルムの機体は、尚もゆっくりと大きく円を描きながら徐々に降下を続けている…

そのシュトゥルムに向って尚も空中から攻撃を続けるトゥース。
シュトゥルムに至近距離からアームバルカンを連射する!
遂に機体から煙を噴き上げ出すシュトゥルム。

トゥース
「よおし!大分効いてきたぞ!」

と、トゥースのコミュニケーションシステムが鳴る。
ワンディムの声。

ワンディム(声)
「トゥース、気をつけろ!右前方に高層ビルだ!!」

トゥース
「(カメラヘッドを巡らせ)…何ッ!(ハッとして)しまった!!」

高度を下げながらゆっくりと下降を続けるシュトゥルム、その前方に2棟の超高
層ビルがそびえている…

パトカー前。
ガルウィング・ドアを跳ね上げたパトカーの前。
助手席に装備されたコミュニケーション・ターミナルの映像を見つめ、真剣な表情のオオツカ警部。その周りを取り囲む様にイマイズミとキャムロン。

コミュニケーション・ターミナルの映像。
付近の地図が表示されており、その上にシュトゥルムの位置と予想進行コースがディスプレイされる。

イマイズミ
「(オオツカを見て)…警部!」

オオツカ
「(ターミナルを見ながら)…ああ。シュトゥルムの奴、このままでは国際病院ビルに突っ込むぞ!…(インカムを取り)トゥース!」

上空。

トゥース
「ハイ、こちらトゥース!」

オオツカ(声)
「何とかシュトゥルムの飛行コースを変えるんだ!奴の右翼エンジンに照準!ミサイル発射態勢で待機!」

トゥース
「了解!」

パトカー前。

オオツカ
「ワンディム!」

築地本願寺前。築地四丁目交差点。
上空に向けて、背中のバズーカ砲を構えているワンディム、サーディー。

ワンディム
「ワンディムです。」

オオツカ(声)
「お前とサーディーはそのまま晴海通りを直進、勝鬨橋北詰からシュトゥルムの右翼エンジンを狙え!上空のトゥースと同時に一点攻撃だ!」

ワンディム
「解りました!」

オオツカ(声)
「それから…」

ワンディム
「はい?」

オオツカ(声)
「現場での指示はお前に任せる。トゥースとサーディーの指揮を頼む!」

ワンディム
「…(力強く)了解!!」

体勢を低くし、ホバリングを開始するワンディム、サーディー。
脚部のバーニアが巻き起こす旋風が、すぐ脇の舗道に停められていた自転車を次々に吹き倒す。
周囲に土煙が立つ。
ゆっくりと機体を浮遊させるワンディム。脇のサーディーを見る。

ワンディム
「進路を変更させる為には、同一タイミングでの攻撃が必要だ。タイミング・コーディネーションは頼んだぞ、サーディー!」

サーディー
「任せて下さい!」

ワンディム
「(うなづき)よし!…行くぞ!!」

発進する2機…

上空。
空中で静止しているアース・ムーバー。そのすぐ脇にラピッド・スターが並ぶ。
破損した機体が痛々しいラピッド・スター…

ラピッド・スターコクピット。
コミュニケーションシステムが鳴る。スイッチを入れるリエ。
モニターに映るショウイチ。

ショウイチ
「…よく頑張ったな、二人とも。」

リエ
「お父さん…」

ショウイチ
「(微笑んでうなづく)…(真顔になり)だが、まだ終わった訳じゃない。喜ぶのは総てが終わってからだ。」

リエ
「(真剣な表情でうなづき)…そうだね。」

ショウイチ
「ケンタ、準備はいいか!?」

前部操縦席。

ケンタ
「待ってましたッ!!この時のタメにとっといたんだゾ!」

ショウイチ
「よおし、その調子でちゃんと決めろよ!(微笑み)…外したら承知しないぞ!」

ケンタ
「(ムッとして)オレの腕前にフマンがあるのカ!?父ちゃんは!」

ショウイチ
「え?…いや別にそういう意味じゃないんだが…まぁなんだ…しっかりやれってコトだ!」

ケンタ
「(悪戯っぽく笑いながら)まかせとけって!」

ランド・チャレンジャー操縦席。
コミュニケーションシステムを切るショウイチ。
と、別のモニターを見ていたゲンザブロウが振り向く。

ゲンザブロウ
「…シュトゥルムの機体が、隅田川の上空に差し掛かった時がチャンスじゃ。」

ショウイチ
「解りました。」

ゲンザブロウ
「…但し、現在シュトゥルムは国際病院ビルに向って進行しておる。警視庁のロボット達がビルへの衝突を阻止する為に攻撃を準備しておる様じゃ。場合によってはシュトゥルムの進路が大きく変わるかも知れん、シュトゥルムの動きには充分注意してな。」

ショウイチ
「はい!…(キーボードからメッセージを入力する)」

ラピッド・スターコクピット。
ケンタの操縦席、キャノピーガラスに映し出されたディスプレイにランド・チャレンジャーからのメッセージが表示される。

ケンタ
「来たッ!…ラピッド・スターはシュトゥルムの右側へ…えーと…」

リエ
「展開?」

ケンタ
「ウン、それそれ!…エッと…シュトゥルムがスミダガワの上空に出たら…えーと…アーッ!…姉ちゃん字が分かんないゾ!」

リエ
「(イラつき)もう、何やってんのよ!…(メッセージを自分のディスプレイにも表示させる)…(ヤケ気味に)シュトゥルムが隅田川の上空に出たら、腹部ジョイントに同時攻撃ッ!…もう、ケンタったら、ちゃんと漢字覚えときなさいよ!」

ケンタ
「(不満気に)…だっていっつも、こんなの使わないんだモン!」

リエ
「とにかく!…(アラームが鳴る。コンソールを操作する。)…シンクロ・シグナルを受信したわ。ランド・チャレンジャーの攻撃タイミングは、こっちに合わされるからね!」

ケンタ
「(緊張した表情で)ウン!!」

リエ
「行くわよッ!!」

ゆっくりとスロットルレバーを操作するリエ。
展開を開始するラピッド・スター…


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.05.28 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018