SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(242L)
RE:131
渋谷上空。
ゆっくりと飛行を続けているジェットヘリ…
その後方を、ぴったりと寄り添う様に、ラピッド・スターが飛行している。

徐々にスピードを上げ、ジェットヘリに接近を開始するラピッド・スター…

1号機操縦席。
エンジンの排気音が低く響く操縦席内部。
その音が、操縦席内にかえって不安な静寂を作り出している…

時折、ケーブルのきしむ音が、まるで不安さを掻き立てるかの様に、不気味に響いてくる…

パイロット、チラと副操縦士の様子を見る。
黙り込んでいる副操縦士。すっかり気力を失っている様子…

機外。
橋桁を釣り下げているケーブル。
先程のジェットヘリ同士の衝突に巻き込まれ、ケーブルがあちこちで傷ついている。一部ではケーブルを構成する細いワイヤーがほつれ、切れたワイヤーがキュルキュルと風に鳴っている…

傷ついたケーブルが、不安気な音を立てている…

1号機操縦席。
重苦しい沈黙に包まれている操縦席…

と、後方から別のエンジン音が響いて来る。
力なく座り込んでいた副操縦士、その音にハッとする。

表情に生気が戻り、操縦席から身を乗り出す。
音のする方向を眺める。

操縦席の窓。
副操縦士が顔を覗かせる。音の方向を探す。
と、その顔に驚きの表情が現われる。

その副操縦士に被いかぶさる様に、窓ガラスに別の機体が影を落し始める…
ジェットヘリに接近したラピッド・スターの機体。

副操縦士
「(外を眺めたまま)タカノさん!アレ!!」

その声に外を見るパイロット。
やや上方から、ゆっくりと降下して来るラピッド・スター。
1号機と並ぶ。

パイロット
「(驚き)…あれは…一体?…」

副操縦士
「(顔を輝かせ)す、すげー…(コクピットの方向を指さし)…見てください、子供だ!子供が操縦してる!!」

パイロット
「アレは…(副操縦士を見て)オイ、スズキ!あれ、もしかしてこないだテレビでやってたヤツじゃないのか!?」

副操縦士
「謎の防衛隊…そうだ!そうですよッ!!…すっげえぇ!」

と、コミュニケーションシステムが鳴る。
その音に一瞬ためらうパイロット。

副操縦士
「(うながす様に)タカノさん…」

うなずくパイロット。コミュニケーションシステムのスイッチを入れる。
モニターに

『接続モード:音声通話』

のメッセージが表示される。

パイロット
「…こちらJA-1208A、ヘリ1号機。」

と、コミュニケーションシステムから少女の声が響く。


「…こちらはSFXボイジャー、ラピッド・スターです。あなた方の救助に来ました。そちらの状況を教えて下さい。」

その声に思わず顔を見合わせるパイロットと副操縦士。
パイロット気を取り直して応える。

パイロット
「…パイロットのタカノだ。君等から見て中央左側の3号機がシンクロナイザーの故障を起こしてる。それにオートパイロットの方も変調している様で…とにかくこちらのコントロールを全く受け付けない状態だ。」


「シンクロナイザーのリセットは試しましたか?」

パイロット
「ああ、やってはみたが状況は改善しなかった。」


「…分かりました。…燃料の残量はどの位ですか?」

パイロット
「…(計器を見て)…あと1時間は大丈夫だ。しかし、もうケーブルが…」


「…分かっています。これから橋桁を下から支え上げてみます。それで少しは時間が稼げるはずです…」

パイロット
「(驚き)無茶を言うな!そんな小さな機体であの橋桁を!?」


「もうすぐ別の機も合流します。それまで持ちこたえられれば…」

機外。

その瞬間、数本のケーブルの細いワイヤーが甲高い金属音を上げ、次々に切れ始める!切れたワイヤーが、まるで意志を持つ生き物の様にのたうつ!

ワイヤーが空を切る異音が、周囲に響く!
ワイヤーが次々に断裂し、見る見る細くなって行くケーブル…
周囲を飛び交うワイヤー…

遂に太いケーブルが数本、ブッツリと切れる!
ガクリと傾く橋桁!
その周囲をバラバラと落ちて行くケーブルの切れ端…
荷重バランスが崩れ、周囲のケーブルも次々にちぎれ始める!

1号機操縦席。
再び凄まじい衝撃が操縦席を襲う!
エンジンを全力噴射させるパイロット!しかし、荷重バランスが崩れた橋桁は、強大な力でジェットヘリを引っ張る!

パイロットはスロットルを一杯に押し込む。
足元の噴射バランスペダルを小刻みに踏み込み、機体を安定させようとする!

パイロット
「クッソーッ!!」

しかし、ガックリと高度が下がるジェットヘリ!橋桁の重量に引っ張られている!
1号機に寄り添っていたラピッド・スター、一瞬機体を離し距離をとる。

ラピッド・スターの横で、1号機は大きくバランスを崩し、殆ど直立している。
橋桁の重さに徐々に高度が下がり始める…
エンジンを全力噴射している1号機。

ラピッド・スターコクピット。

ケンタ
「(ジェットヘリを見て)姉ちゃん、もう時間がッ!!」

リエ
「ケンタ、センサーグラブ!!」

ケンタ
「分かった!!」

ラピッド・スターの機体下部。
格納されていたマニピュレート・アームがガクリと下がる。

それと殆ど同時に、ドライブ出力を一気に絞り込み、殆ど垂直にまるで落下する
様に高度を下げる!

橋桁の下側に回り込むラピッド・スター。
ヴァーティカルジェットを思いきり噴射し、高度をとる。
そのまま橋桁の下に入る。

コクピット。
リエとケンタの頭上、キャノピーガラス全面に、まるで空一面を被い尽くすかの
様に、巨大な橋桁の鉄骨が拡がっている…

ケンタ
「行くぞッ!!」

思いきり腕を上にあげるケンタ。
ラピッド・スターがそのケンタの動きに合わせて、マニピュレート・アームを一
杯に上にあげる!

ヴァーティカルジェットの推力を上げるリエ。そのまま橋桁に突っ込む!
ガッシリと鉄骨を掴むマニピュレート・アーム!

ケンタ
「今だッ!!」

リエ
「ドライブ、最大出力!!」

スロットルレバーを一杯に押し込むリエ!
メインドライブから凄まじいジェットの炎が噴き上がる!!
渾身の力を込めて、ラピッド・スターが巨大な橋桁を支えあげる!

1号機操縦席。
ミシミシと機体が悲鳴を上げている。
高度計を見ている副操縦士。
降下率を示すデジタル表示、徐々にスピードが落ち、やがて0となる。

副操縦士
「す、凄い…(パイロットを見て)…あの小さな飛行機、橋桁を支えてます!」

パイロット
「信じられん…凄い出力だ……奴等、一体?…」

橋桁を支えるラピッド・スター…
メインドライブから凄まじいジェットの炎を噴き上げている…

コクピット。
凄まじい振動に襲われているコクピット。

リエの操縦席のメインモニターには、ドライブの過負荷を警告するアラームが点滅している…

必死に出力を維持しようとしているリエ。
前部操縦席では腕を一杯に上げたケンタが必死に橋桁を支えている。

ケンタ
「…(困った様に)…姉ちゃん、コレ、スゲー疲れるゾ。」

リエ
「後少しよ、頑張って!」

と、コミュニケーションシステムが鳴る。モニターに映るゲンザブロウ。

ゲンザブロウ
「リエ、リエ!」

リエ
「お爺ちゃん!」

ゲンザブロウ
「ジャンクのロボットじゃ!そちらへ向っておるぞ!」

リエ
「(驚き)エッ!? こっちには何も…」

レーダーコンソールを操作するリエ。と、一瞬遅れて一つの反応が現われる!

リエ
「今こっちの探査エリアに入ったわ!…(表示を見て)…早い…」

ゲンザブロウ
「アース・ムーバーは後1〜2分でそちらに到着する。何とかそれまで奴の攻撃をかわすんじゃ!」

リエ
「だけど、こんな状態でどうやって!?」

考えるゲンザブロウ…
決断する。

ゲンザブロウ
「…イチかバチか、グラン・マキシマイザーで威嚇砲撃じゃ。ジャンクのロボットの事じゃ、並の攻撃ではビクともしまい。…それでもし、奴がたじろいでくれれば、何とか体勢を立て直す時間が稼げるじゃろう?」

考えるリエ…

リエ
「…分かった、やってみる!…(コンソールパネルを操作し)…グラン・マキシマイザー、コントロールシステムを後部操縦席にリンク!エネルギーチャージスタート!」

リエの操縦席のメインモニターに、グラン・マキシマイザーのコントロールパネルが表示される。

前部カメラの映像上にターゲットスコープが浮び上がり、セルフチェック・インフォメーションが次々にモニターの上を流れる…

ラピッド・スター機体下部。
機体下部が大きく開き、大型のビーム砲が姿を現わす。

コクピット。
必死に橋桁を支えているケンタ。

ふと、前方を見上げる。
青空の彼方で一つのきらめきが見える…

ケンタ
「…アース・ムーバー?…(目を凝らす…ハッとして)…姉ちゃん!」

その声にハッと前を見るリエ。

ケンタ
「ジャンクのロボットだッ!!」

空の彼方で一瞬、ジェットの炎が目映く輝き、凄まじいスピードでジャンクの新型ロボット、デイダロスが接近して来る!

エネルギーチャージの状況を確認するリエ。

減算を続けるチャージタイムカウンター…


〜 つづく 〜

~ 初出:1995.10.23 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1995, 2018