SUB:御町内特撮救助隊SFXボイジャー(216L)
RE:259
御茶ノ水…

街にけたたましいサイレンの音が木霊している…

ロボット機械メーカーのショールーム。

真新しい高層ビルの壁面。
巨大なガラス張りの壁面を突き破り、ショールームのロボットが次々に通りに姿を現わす。

壁面が崩れ落ち、大きな破片が飛び散る!
メカニズムの駆動音が周囲に響く。
駐車場の自動車を蹴散らし、前進するロボット…

町並み。
周囲の古びた雑居ビル越し、朽ちた清酒のネオンサインの鉄骨や、張り巡らされた電線を透かして、ロボットの機体が現われる。

青空の下、黄色やライトグリーンの警戒色に塗られた真新しいロボットの機体が、くすんだ町並みに浮び上がる。

建設作業用の巨大なアームを持つロボット。
クロームの主排気管が一瞬、陽の光にまぶしく輝く。

通り。
JR線の線路に沿った駅前の細い通り。ロボットの一機が前進してくる。
街路樹をなぎ倒し、乗り捨てられた乗用車を踏み潰す!
そのまま通り沿いの古ぼけた中華料理店に突き進む。

料理店の瓦屋根。
ロボットの巨大な作業用アームが屋根に振り降ろされる!

瓦屋根の上に取り付けられた、古いネオンが砕け散る!スパークが散る!
屋根の瓦が一斉に飛び散り、無数の破片が噴き上がる。
爆煙の様な土煙を噴き上げ、倒壊する建物!

前の道に倒れ込む様に崩れる料理店…
きしむ様な音が響く。

尚も前進するロボット。
そのまま隣のビルにアームを打ち降ろす!

古い雑居ビル。
ビルの2階にある喫茶店の大きなガラス窓に、ロボットのアームが炸裂し、周囲に破片が飛び散る。そのままなぎ払う様にアームを動かす!

ビルの壁面が大きく崩れる!
ビルの床が抜け落ち、室内の椅子やテーブルが雪崩落ちる!
まるでもんどりを打つ様に、神田川に向って崩れ落ちるビル!

御茶ノ水駅。
崩れ落ちる瓦礫が、ホームの屋根にのしかかる!
次々に支柱が折れ、陥没して行くホームの屋根。
あちこちで架線のスパークが瞬いている…


運河…


傾きはじめた陽の光が、運河を取り巻く古びた建物に深い陰影を刻んでいる…
運河沿いにある小さな造船所では、錆びたクレーンがガラガラと音を立てながらゆっくりと動いている…

橋の上をランドセルを背負ったミツルがやってくる。
その後ろからゆっくりとホバリングしてくるサーディー。
嬉しそうなミツル…

ミツル
「(立ち止まり、サーディーを振り向く。さもおかしそうに)…タケシ君達、サーディー見て驚いてたね。ボク、嬉しくなっちゃった。」

ミツルを見るサーディー…

サーディー
「…元気になったみたいですね。安心しました。」

サーディーを見上げるミツル…
微笑む。

ミツル
「…ありがとうサーディー、ホントに嬉しかったんだよ、ボク。だって、ロボットポリスが、ボクのためにホントに来てくれたんだもん。」

その言葉に、カメラヘッドを動かし、ミツルを見るサーディー。
と、サーディーを見上げていたミツル、何か思い付いた様子。

ミツル
「あ、そうだ。…ねぇサーディー、コレできる?」

サーディー
「ン?…何ですか?」

ミツル
「ウン。…ねぇ、アームガン出して。」

サーディーの両腕。
腕の装甲カバーが開き、格納されていたアームガンがせり上がる。

サーディー
「(怪訝そうに)…こうですか?」

ミツル
「(うなずき)ウン。…(正面を向き)…ネ、アームガンしまう時にさ、こうやって腕を重ねてさ…」

ポーズをとるミツル。前に突き出した腕を軽くクロスさせる。

ミツル
「…で、こうやってゆっくり広げるんだ。」

クロスさせた腕をゆっくりと広げるミツル…

ミツル
「…それに合わせてアームガンしまうの。手の動きと合わせるんだよ。」

ミツルの動きを真似るサーディー。
クロスした両腕をゆっくりと広げて行く。

その腕の動きに合わせ、せり上がっていたアームガンが格納され、装甲カバーが閉じる。

その様子に目を輝かせるミツル。

ミツル
「うまいうまい、サーディー!バッチリ!」

サーディー
「(怪訝そうに)…これは?何か意味があるんですか?」

ミツル
「(嬉しそうに)ロボットポリスがさ、悪者のロボットやっつけた時にネ、いっつも最後にやるんだ。だからさ、サーディーもそんな時にはやるんだよ。」

サーディー
「はぁ…」

ミツル
「やってよ、サーディー。絶対、カッコいいんだからネッ!」

サーディー
「(微笑む様に)…分かりました。やりましょう。」

ミツル
「約束だよ、絶対やってね、サーディー!」

嬉しそうなミツル…
そのミツルを嬉しそうに見るサーディー…

運河。
やや傾いた日差しが、運河の水面にきらめいている…
遠く、ヘリコプターの様な飛行音が微かに響いて来る…

橋の上、佇んでいるサーディーとミツル…
空をゆっくりと雲が流れてゆく…

サーディーのメインカメラ映像。
微笑むミツルの姿が映っている。
と、コールシグナルが鳴り、モニターに『RING』のディスプレイが点滅する。
回線を接続するサーディー。

コミュニケーション・ウィンドーに映るオオツカ警部。

オオツカ
「サーディー、今どこだ?現在地は?」

サーディー
「(ためらい)…晴島三丁目です。」

オオツカ
「(怪訝そうに)晴島?今日のお前のパトロールコースには、晴島地区は入っていなかった筈だが…」

サーディー
「す、済みません、警部。実は…」

オオツカ
「(遮り)言い訳は後だ。御茶ノ水の月島重工本社ビルでロボットの暴走が発生、ショールームに展示されていた建設工事用作業ロボット3機が、建物を破壊して駿河台二丁目、三丁目方面に進行中。すぐに現場に急行だ!」

サーディー
「了解!!…(切る)」

心配そうにサーディーを見上げるミツル。

ミツル
「…事件なの、サーディー?」

サーディー
「ええ、私は行かねばなりません。…元気になったミツル君を見て、私も安心しました。」

ミツル
「サーディー。…サーディーもがんばってね!」

サーディー
「(うなずき)ありがとう、ミツル君。…(ミツルの周囲を見て)…少し下がって下さい。」

一歩下がるミツル。機体を低くして走行形態をとるサーディー。
脚部のスタビライザー、ラダーが一斉に飛び出し、脚部のホバー・システムが作動する。
巻き上がる砂塵。

ミツル
「がんばれ、サーディー!」

その言葉にうなずくサーディー。砂塵を巻き上げ、走り出すサーディー。
そのサーディーを追う様に、ミツルが一歩前に踏み出し、サーディーを見送る…

御茶ノ水。
ニコライ堂のグリーンのドーム屋根を霞めて、ロボットの一機が進んで行く。
ロボットが前進する度に、ドームの窓ガラスがブルブルと震える…

と、上空で一瞬何かの反射がきらめく。
急降下してくる機体…ラピッド・スターだ!

コクピット。
コクピットにリエの姿はなく、前部操縦席のケンタが真剣な表情で操縦捍を握っている…キャノピーガラスに失速注意の警告メッセージが点滅している。
電子音のアラームが鳴り続けている…

ケンタ
「(アラームにイラつき)うるさいなぁ、分かってるよォ!…(操縦捍を握り締め)コラッ言うこと聞けってバ!」

コミュニケーション・ディスプレイにショウイチの姿。

ショウイチ
「ケンタ、もっと機体を安定させるんだ。」

ケンタ
「(ハッとして)…父ちゃん!…姉ちゃんはッ!?(不安気に)やっぱりオレだけじゃ…」

ショウイチ
「あと少しだ。今こっちに向ってる!それより、今は相手に集中しろ。気を抜いたらやられるぞッ!」

ケンタ
「分かってるってバ!」

思いきり操縦捍を引き、機体を引き起こすケンタ。
ロボットの脇をすり抜けざまにビームバルカンを発射する!

ロボットの機体に炸裂するバルカン!
そのまま高度を上げるラピッド・スター…

小川町交差点。
アース・ムーバーの巨大な機体が、ゆっくりと交差点の真上に降下してくる…

機体下部。
ブザー音が鳴り、あちこちでケーブル・コネクターが外れる。
ドッキング・ロックが一斉に外れ、搭載されていたランド・チャレンジャーが交差点の真ん中に着地する。

地響きを立てて着地するランド・チャレンジャー。
瞬間、キャタピラが空転する!

土埃を上げ、キャタピラがアスファルトの路面を噛む!猛然と前進する。
機体上部の2連装砲が交差点の信号機に触れ、そのまま信号機を弾き飛ばす!
進行してくるロボット目がけ、前進するランド・チャレンジャー…


〜 つづく 〜

~ 初出:1996.05.19 Nifty Serve 特撮フォーラム ~

Copyright: ohshima 1996, 2009